#011-2 ヒミツの誓い
「……あ、でも、僕が狙われるとしたら、あの時、一緒にいた火蜜さんだって危ないんじゃないんですか?」
僕は呆然と呟いた。
まだ、この街に、連続殺人犯の存在を完全に認めたワケじゃない。どこかで死体の閲覧を予告してから、本当に見せ付けているなんて話し簡単には鵜呑みにできるハズもない。僕は、どこか夢心地というか、まだ現実とは感じられていなかった。それが普通だろう。
―――ただ、最も危険な可能性が真実なら。
僕は自分の事よりも、目の前にいる火蜜さんの方が心配だった。凶悪な犯人からすれば、男よりも女の方が狙いやすいだろう。何よりも招かれた火蜜さんの部屋は広いが、家族が同居している気配はなかったのだ。家族構成はしらないけど、女性の一人暮らしは実家に住んでいる僕よりも危険なハズなのだ。
「……まあ、私の事は安心なさい。このマンションのセキュリティーは一流よ」
そう独り暮らしの女性、火蜜さんは言っていた。
「で、でも、さっき僕が戻ってきた時だって鍵を掛けてなかったみたいだし」
「ふふふ。鍵は掛けていたわ。ただ、最初に入ったときに貴方の影を登録しておいたから、扉が勝手に開いただけよ」
「登録?」
「……最新のセキュリティの一つよ。ステレオビジョンによる3次元物体認識法で、貴方の体そのものが鍵になるという認証システムなの。顔は整形できても骨や体格まで変えるのは難しいでしょ。だから、海外では一部の公共施設に使われているし、これを突破できる人間は少ないわ。それに、窓や排気口も、ほぼ塞がれている。このマンションは並の人間じゃ入ることもできないぐらい最新設備の塊なのよ」
「……でも、ここが厳重だとしても、学校の帰り道とか襲われたりするかもしれないじゃないですか」
「私は人通りの多い道しか選ばないし、歩くスピードも速いし、不規則に帰宅ルートを変更するわ。命を狙うには面倒なターゲットと言えるでしょうね。だから、たぶん狙いやすい少年から選んだんだと思うわよ。殺す、相手をね」
火蜜さんはクスリと笑った。
普通に。
何気なく。
当たり前に。
歪な生活を送っていると言い切ったのだ。
これほど殺すという言葉がしっくりくる人もいない、そう僕は感じていた。正直、他の人間が同じ事をしていたら、きっと常識を疑っていただろう。でも、この人は別だ。他人にどう思われるとか興味が無く、個人が行えることを徹底的に実践している。追跡者を巻くために日常を殺すのが、普通に思えるような妖しい魅力を秘めていた。
不思議なヒトだな、そう僕は思った。




