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#007-3 ヒミツの殺人

 

 ずっと、気にしていた事がある。


 ―――火蜜ひみつさんに対して、ずっと感じていた違和感の正体。


 たぶん、このヒトは逆なのだ。

 普通の人なら知り合いから、信頼というプロセスを経て友達になり。経験と情報を、ゆっくりと積み重ね。最後は、誰にも話してない秘密を明かしていくような友達の関係となっていく。動物園に押し込められた猿だって、同じような手順を踏むからこそ他の動物園から送られてきた新人も和に入れるのだ。


 だが、火蜜さんは違う。


 この世の中にある誰も知らない秘密を、まず打ち明けることが友達の始まり。何より、共有する秘密が無くては友達になれないのだ。そんなの普通なら有り得ない価値観である。しかし、そう歪に考えているんじゃないか、と僕は思った。間違いなく、そうじゃなかったら殺人の秘密があることを羨ましいとは言わないだろう。


「……そろそろ、帰りますよ」


 ふいに僕は席を立ち上がった。


「あら、そうなの。もっと居ても良かったのに」


「それは今度にしますよ。あまり遅くなると親も心配しますし、今日の所は僕も納得できましたし……」


 少なくても、森の中でヒトのユビがあったのは本当だった。それが確認できたのなら、もう僕の用事はなかった。別に消えてしまったヒトのユビを探そうとも思わない。また、必要もない。そりゃ、事実を証明できなければ、まだ僕の悪い噂がクラスで続くかもしれないが、それだって暫くすれば消えてくれるだろう。


 もちろん、火蜜さんの言った戯言を信じる気もない。


 だって、死体を誰かに披露する連続殺人犯なんて滑稽だ、そう僕は思った。確かに最初は殺人犯に顔を見られたなんて話しにビビったけど、冷静に考えればあり得るはずがない。他人に死体を見せることに利点なんてないし、仮に予告してから本当に死体を公開しているのなら誰かが通報しているに決まってる。どう聞いたところで馬鹿げた話しとしか僕は思えなかった。薄暗い森の中で見つけたヒトの指だって、いま考えれば単純に僕の見間違いだったのかもしれない。


 そういう意味では、今日の収穫は2つとなる。

 

 1つは事実の確認。

 そして、もう1つは火蜜さんと少し距離を置こう、そう感じたことであった。少なくてもネットの簡単な書き込みを見ただけで、殺人犯が側にいるなんて事を本気で言う人間を僕は信用する事ができなかった。仮に、これが関係のない第三者の台詞だったら、正気すら疑っていたかもしれない。


 僕は頭を下げた。


「それじゃあ、もう今日は失礼するよ」


「ええ。気をつけてね。何なら、送ってあげましょうか?」


「ははは。子供じゃないんだから平気だよ」


「あら、凄い自信ね。私だったら、包丁を持っていたとしても一人はいやよ。くすくす」


「……は、はぁ」


 僕は曖昧に答えた。普通に帰ろうとしているだけのに、それを褒めるなんて意味が分からなかった。


 ―――それを、痛感したのは10分後。


 帰宅する途中、最後に火蜜さんが笑っていた意味を物理的に理解させられる。そんなのが、この世にあるんだとは知りたくはなかったけど、心の底から思い知らされた。


 帰り道、暗い夜、誰もいない寂しい所で―――

 僕は殺されたんだ。



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