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#007-1 ヒミツの殺人

 連続殺人犯。


 今の日本において、これほど滑稽な言葉も少ないだろう。確かに現在、複数の人間を殺して逃げているシリアルキラーが、アメリカ本土には過去の統計から逆算すると30人以上は存在していると言われている。また、日本でも映画や漫画や小説などの虚構世界でなら、よく見聞きする話しだろう。


 だが、現実は違う。


 実際の事件だと考えるのなら違和感しかない。それは統計的に考えても間違ってなく、この日本ではある程度の連続性と人数を伴う殺人事件は戦後から数えていくと100件に届かない。いや、多方面に考慮せず言うのなら、その件数は想像している数よりも遙かに少なくなるだろう。


 一度に行う大量殺人はあっても、一定期間を空ける連続殺人は殆ど存在しない。近年に発生した記憶はあれど、その前はいつだったのか。その前となると、記憶すらあやふやになっていないだろうか。ニュースやネットで見て、久しぶりに凶悪な事件を思い出すぐらいじゃないのだろか。

 殺人なんて、身近にある事件じゃない。しかも、連続殺人犯の作られた死体よりも、突発的な交通事故の死体の方が遙かに多く、そして残忍。更に個人的感覚で言うのなら、同級生の女子から連続殺人犯が自分の達の街にいると聞いたのなら、より現実感のない言葉にしか思えないだろう。


 それが、僕の正直な第一印象だった。


「……この街に連続殺人鬼がいるなんて、本気で言ってるんですか、火蜜ひみつさん」


「ふふ。もちろんよ」


 僕が訝しげに尋ねても、そう火蜜さんは笑っていた。彼女はクラスメートの優等生、そして僕らは二人っきりの時は足を舐めさせてくるという歪な関係ではあった。だが、いま目の前で、つらつらと話している人間は誰なんだ、そう僕は混乱するしかなかった。


 ゴクリ―――


 僕は唾を飲み込んでから、口を開いていた。


「で、でも、その、いくら何でも信じられませんよ。この町に連続殺人犯が居るなんて……」


「そうね。人口の多い国ならいざ知らず、この日本で殺人鬼と巡り合わせる確率なんて低いわね。いえ、万分の一にも届かないでしょう」


「な、なら……」


「待ちなさい。でも、世の中には不思議な巡り合わせがあるわ。どうやっても、そこにたどり着いてしまう。逃れたくても逃れられず、なにをしても必ず同じ結末に落ち着いてしまう。運命、とまで言うとチープになる。でも、社会的、環境的、生物的な要因が崩れない限り、自分の力ではどうする事もできない道もあるのよ」


「……あの」


「その根拠よ」


 言葉に詰まっている僕を無視して、火蜜さんは僕たちの足下に置いてあったラップトップパソコンを起動させていた。そして、なにやら見たこともない妖しげなフリーソフトを立ち上げたのである。


「これは……」




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