第一話、母の日の日記
24/5/13(日)晴れ
今日は母の日。昼に目が覚めた。30分程してから布団を出てシャワーを浴びた。ついでに歯磨きも。今日は休日なのでシャワーの後の気合いは不要。
家を出たのは夕方。最近運動不足なので、健康のため実家まで歩くことに。途中、五十歳くらいの男に道を尋ねられる。男は笑いながら話しかけてきた。国道へ出たいらしい。私は愛想よく親切丁寧に教えてやったが、用が済んだにも関わらず男は私の前から去ろうとせず、どうでもいい話をし始めた。
天気がどうだの、最近の若い女はどうだの、挙げ句の果てに政治の話まで持ち出してきた。 最初は黙って聞いていたが、5分10分と経つうちにだんだんとイライラ。15分を過ぎた頃には完全に気分は最悪。急いでいることを告げると男は一応謝りながらも国道までの道順をまた尋ねてきた。
その時の私の表情はきっと鬼の形相だったのだろう。男は少し身体をのけぞらせると辺りを見回し頭を下げて国道方面へそそくさと歩き出した。私もようやく解放されて身体を実家へ向け、再び歩き出した。しかし、二三歩進んだ後ろから、またあの男の声が耳に触れた。
ぎょっとして振り返ると今度は子供連れの若い女に話しかけていた。しかもにやつきながら。若い女は不安げに戸惑いながら男に道を教えていた。子供は怯えていた。男は私にしたことをその子連れにもしているのだった。私はこの男がどうにも許せなくなった。腕時計に目がいった。
家族揃っての夕食には遅刻。お母さんごめん。カーネーションの代わりに何か送ります。