始 かごのとりと終わらない宿題弐
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気が付いたら寝ていたらしい。目を開いて最初に飛び込んできたのは自室の天井と机に山積みにされた宿題の山だった。その山はさながらヒマラヤ山脈のように俺の前に立ちふさがり、とんでもない威圧感を発していた。これからこの山を制覇しなければいけないと言う事に体が震える。……という茶番は置いておくとして。とりあえず宿題のエベレストを解体しつつ、必要なものを引っ張りだす作業の途中で俺は恐ろしい事に気付いた。手に持っていた数学の教科書が握力を失った手から滑り落ち、重力に従って床と衝突する――――(ドラマ的演出)。
「英語の宿題の答えが……ない……だと…………」
膝から先に力が入らなくなり、思わず床に膝をついてしまった。それはさながら強大な敵の前に屈した戦士のようで――――(ドラマ的演出二)。
「……取りに行くか」
あっさりと立ちあがり、ぼりぼりと後頭部をかきつつ俺はそう呟いた。この太陽が容赦なく照りつける中外に出るのは正直気が引けるが、取りに行かなければ、答えをうつ……答え合わせができなくなってしまう。それだけは避けたい。宿題を出さないとどーんと成績から引かれるのだ。あまり成績のよろしくない俺としてはなるべくそういうリスクは回避したいのだ。これ以上引かれると大変なことになりそうだし。
「何という俺いい子」
自画自賛しつつ立ち上がり、のたのたと制服に着替え通学カバンをもって玄関を出る。その瞬間照りつける太陽の日差しに俺は一瞬にして融けそうになった。氷のようにデレーっと融けて地面にだらしなく広がりそうだったのをすんでのところで食い止めた。やばい、暑さで脳みそが融け始めている。俺はそんなことを思いつつ、いつも通りの通学路を歩く。
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学校に着く。別に省略してるわけじゃなくてただ単に特に学校行くまでの道に特筆すべきことがなかった以下略。夏休みの学校はどこもかしこも施錠されていて、あいている所を見つけるまで暑い外をうろうろする羽目になった。ようやく開いているドアを見つけ、そこから学校内へと入る。いつもなら多くの生徒達でガヤガヤうるさい学内も人が少ないせいかシーンと静かであり、窓の外から練習している運動部の声がわずかに漏れ聞こえてくるばかりだった。節電の煽りで照明が消え少し暗いリノリウムの廊下を歩く。階段を上がり、お目当ての一年C組の教室を目指す。
特に部活に使われている気配も感じない教室。俺は当然人はいないと思っていた。当たり前だ。部活に使われているわけでもないのに人がいるわけがない。部活に来ていたクラスメイトが俺と同じように忘れものを取りに来たというのなら分かるが。俺は、なんとなくそっと――なんかそうしなきゃいけない気がして――教室のスライド式のドアを押して開ける。
おそらく無人の教室。何故かあいている窓。吹き込む夏の生ぬるい風。その端に見えたのは一般的銀色とも違うもっと色素の抜けた感じの……白。夏の空に鎮座する巨大な入道雲のような、白。
「……はい?」
無人だと思ってた教室には先客がいた。