またいつか一緒に【第12話】
この話は聖魔光闇先生の企画したリレー小説の第12話です。
下記設定事項に従って記述しています。
★全40話
★一話2000文字以上
★登場人物数制限なし
★ファンタジー要素無し
★SF要素無し
★地の文は主人公視点
★重複執筆可
★ジャンルはその他
★執筆予約制廃止(予約を入れてくださる著者様を拒みはしませんが、
ある程度の執筆予約が入ってからの執筆開始はしません。
執筆予約を入れられた著者様に関しては、活動報告に掲示させていただきます)
★執筆著者様は、執筆前にご連絡ください
★執筆投稿後、必ず御一報ください
★あらすじは、前話までの要約を明記
★全ての物語を聖魔光闇がお気に入り登録します
★後書きに執筆著者様募集広告を添付
一話:聖魔光闇先生 http://ncode.syosetu.com/n1590t/
二話:日下部良介先生 http://ncode.syosetu.com/n2296t/
三話:ふぇにもーる先生 http://ncode.syosetu.com/n3991t/
四話:koyak http://ncode.syosetu.com/n4630t/
五話:創離先生 http://ncode.syosetu.com/n8318t/
六話:蟻塚つかっちゃん先生 http://ncode.syosetu.com/n9612t/
七話:聖魔光闇先生 http://ncode.syosetu.com/n1100u/
八話:伝次郎先生 http://ncode.syosetu.com/n2759u/
九話:koyak先生 http://ncode.syosetu.com/n4425u/
十話:このはな さくら http://ncode.syosetu.com/n4766u/
十一話:鳩麦 http://ncode.syosetu.com/n8057u/
十二話:ポテトバサー
宜しくお願い致します。
「それではいきます… 1・2・3!!」
掛け声とともに俺は二人によって車から降ろされた。
「先に行ってエレベーターを押さえておいてください。私が霧島様を手伝いますので」
黒崎の指示に黙ってうなずき、勝俊はマンションへと入っていった。黒崎は一度、俺をマンションの入り口のほうまで押し、それからバンのドアを閉めてキーについているリモコンで鍵をロックした。
「それでは参ります…」
俺の返事も待たずに黒崎は俺を運びはじめた。自分の左手が力強く車いすの肘掛を掴む。車いすの小さな揺れからのものではなく、遥への心配からくるものだった。マンションのガラスの入り口を過ぎると左右に通路が続いていた。黒崎は迷うことなくエレベーターがある右の通路へと曲がった。
「早く早く!!」
勝俊がエレベーターの扉を開けて待っている。俺と黒崎は急いで乗り込んだ。その際、黒崎はスムーズに出られるようにバックで乗り込んだ。俺は勝俊が乗り込んだのを確認し、身障者用の低い位置にある『閉』ボタンを押す。続けて遥の部屋がある『4』のボタンを押そうと俺の左手の指が近づく。その時だった、俺の指が触れる前にその『4』のボタンはオレンジ色に淡く光った。
「?」
俺は視線をそのボタンから勝俊に向けた。勝俊は俺の視線に気づいたのか、振り向きはしなかったが顔を少しだけこっちに向けた。
「遥に何もなけりゃいいんだけどな………」
「あ、あぁ……」
返事がおぼつかなくなってしまった。理由は勝俊と黒崎の行動にある。二人は初めてここに来たはずだ、なのに黒崎は迷うことなく通路を右に曲がり、勝俊は当然のように『4』のボタンを押した。四階に着くまでの十数秒間、誰も口を開くことはなかった。
ピンポーン……
最初に口を開いたのはエレベーターだった。
「………………」
このまま勝俊が俺に何の質問もなく、エレベーターを出て左に曲がったら… 俺の抱いた疑問は強くなる。
ウィーン…
扉が開き勝俊は『開』のボタンを押し続けていた。
「智哉、遥の部屋って…」
「……左に曲がって八番目だ」
「いや… 前に話した時に聞いたんだけど、階数しか思い出せなくてさ…」
無言のまま俺は軽く頷いた。なるべくその表情を出さないように。
「それでは」
黒崎が俺をまた運び出す。この二人は何かが変だ。マンションに着いてからのこともあるが、あれだけの爆発にも関わらず、今、俺の横を平然と勝俊は走っている。そしてあの時の黒崎の笑み、異常な情報網。そういえば来栖の家で勝俊は自分の携帯を使っていなかった… 何故だ?
「…………」
俺は何がきっかけかはわからなかったが、遥のことで頭がいっぱいになっていた。この二人への疑問より遥への思いが強かったんだろう。そんな俺の目に遥の部屋のドアが映りこんできた。ドアは少しだけ開いていた。
「おい、智哉」
「お、おう」
勝俊もそのことに気が付いたらしい。勝俊は俺と黒崎を追い越し、遥の玄関前で止まった。続いて俺と黒崎も止まる。無意識のうちにまた肘掛を強く掴んだ俺の中には、無事でいてくれということだけが巡っていた。
「遥!! 大丈夫か!!」
俺の問いかけに返事はない。胸がキリキリする。
「智哉、入るぞ?」
「あぁ、頼む。だが、一人で先に行かないようにしてくれ。黒崎さんと一緒に慎重に入ってくれ。遥のほかに誰かがいるかもしれない…」
「そうだな…… じゃ、黒崎さん頼みます」
「わかりました」
勝俊はゆっくりとドアを開け全開にした。黒崎は俺をドアのストッパーになるように動かす。薄暗く細い、遥の部屋の廊下が見えた。だが奥の部屋までは見えない。その部屋に入るための曇りガラスのドアが閉まっていたからだ。
「智哉、すぐそこの左側のドアは?」
「トイレと風呂場だ」
勝俊と黒崎は靴を脱ぎ部屋に上がる。勝俊がトイレと風呂場がある部屋のドアノブに手をかけた。
「開けますよ、黒崎さん…」
「はい」
黒崎は少し身構え、ドアが開かれるのを待った。勝俊は唾を飲み込み、軽く息を吐いてからドアを開けた。
ガチャッ!
ドアが開いた途端に黒崎が中に入り込んだ。勝俊は体半分を前に出し中を覗き込んだ。俺は左手でできる限り状態を浮かせ覗き込もうとしたが、今いる位置からは何も見えなかった。思わず俺は声を上げる。
「勝俊! 遥は!?」
「いや、ここにはいないみたいだ…」
「そ、そうか… やっぱり奥の部屋か?」
「そのようですね」
「……すみません黒崎さん。僕も部屋に上げてもらえますか? 自分の目で確認したいので」
「えぇ、わかりました」
先ほどから感情がこもっていない返事をする黒崎に、俺は少しだけイラつきを覚えた。そして感情のない人間と、復讐相手の助けがないと動けずにいる自分自身にもイラつきを覚える。その間に俺は玄関と廊下のたった数センチの崖を越えていた。俺と二人はゆっくりとドアに近づいた。
「じゃ、準備はいいな?」
「あぁ」
勝俊の手によって曇りガラスのドアが開けられる。少しずつ見えていく空間。床が見える。倒れた台と電話。あぁ…… あれは遥なのか? こっちに足を向けうつ伏せで倒れている。頭から流れ出した血が広がっていた。そしてその周りには、少し大きい石がいくつか転がり、食料が散らばっている…
「遥!!」
俺は車イスから転げ落ちる。勝俊が慌てて支えに来たが俺はそれを拒否した。怒りや悲しみではなく悔しさがこみ上げる。
「うわぁぁぁぁぁ!!」
何度も何度も左の拳を床にたたきつける。勝俊はめげずに俺を落ち着かせようと、左手を掴みながら抱えこんできた。
「落ち着け智哉!! 智哉!!」
「何でだ!! 遥が何で!!」
俺は虚しく暴れ続けたが突如、勝俊の俺を押さえつける力が弱まった。
「あぁ…?」
勝俊の弱々しい声が聞こえ、俺は遥のほうへ目をやった。黒崎が倒れていた遥を…
「し、椎名!?」
「おい智哉、それって…」
頭が混乱する。遥ではなく死んだはずの椎名がそこにはいたのだ。
「わからない… わからない…」
椎名はこれで俺の目の前で二度死んだ。そんなことがあり得るだろうか? それに遥はどこに行った? 無事なのか? これは遥の仕業なのか? 業者の… それとも死んだはずの石谷ってオッサンの? 一度死んだ人間が二度死んだんだ、5年前に死んだ奴が今生きていて… だがそれじゃ資料を見て気づいたことと繋がらなくなる… それに石と散らばった食料は…
「どういうことなんだよ!!」
勝俊は声を荒げた。そのとき、後ろで足音が聞こえてきた。足音は急いでいるようだった。その足音に気が付いた勝俊は振り返ったかと思うと、俺の復讐相手の名前を呟いた。
「来栖… お前何でここに…」
これはリレー小説です。
リレー小説とは、複数の筆者による合同執筆(合作)を言います。
御参加頂ける方は 聖魔光闇先生までメッセージにて、ご一報ください。
参加していただける方は、再度メッセージにて、正式に依頼させていただきます。
その後、投稿後にもう一度ご連絡いただきますよう、お願いいたします。