第三十二話 窯の制作者探し
町の中心地に食堂があった。店の外にも料理のいい香りが漂っていて、行列が出来ているような繁盛店のようだ。ロラン達は行列の最後尾へと並んだ。
「腹減ったなぁ…。」
ゲイルはお腹をさすりながら、料理に期待していた。
ロランは料理も気になるが、一番は窯の作り方だ。ガレスが使う厨房の窯がどのように作られているのか気になっていた。
「次の方、どうぞ!」
ロラン達は席へ案内され、静かに座った。周りを見渡すと、凄く大きな肉を食べている人が多く、ここのおすすめなのだと瞬時に理解した。
「何に、なさいますか?一応、おすすめですとトンテーキになっておりますね。ジューシーで美味しいですよ。」
「それじゃ、俺はそれを!」
「あ、俺たちも!」
3人でトンテーキを注文した。
窯の上には網が敷かれていて、その上で調理しているようだ。ジュージューと音が聞こえそうなぐらい油が滴り、窯の炎が燃えさかっていた。長年使われてきたのであろう窯の周辺はススで真っ黒になっていた。
「ガレス、あの窯を作った人がわかれば俺たちの土地でもしっかりとした厨房が出来るかもしれない。ガレスが使うんだから、どんな窯がいいか要望出してほしい。」
「あぁ、そうだなぁ…。窯といっても色々あるから、迷うところだがこの店の窯は立派だと思うぞ。火に限りなく強い耐火石を使ってそうだしな。結構、長持ちすると聞くけど、高いんだってよ。」
「そうか…。でも…、ガレスが使いやすいなら耐火石の窯にしよう。ただ、その時は完成を待ってもらわないといけなくなるけど…。」
「俺のことは良いって、どんな窯だろうが料理が出来れば何でもいい…。食べてくれるお前らがいるだけで、俺は幸せなんだからよ。厨房は欲しいとは言ったが、費用が掛かることはあまりしてほしくないんだ。」
ガレスの目はうつむき加減で、ガレスが遠慮しているようにロランの目には映った。ロランはこの時、なぜか寂しさが込み上げてきた。仲間として、旅をして、一緒に土地を作ってきたのに、遠慮されていることに寂しさがあった。
「ガレス!どうして遠慮なんかするんだよ!本当は立派な窯が欲しいんじゃないのかよ!料理人として、窯って大事なんだろ?」
「そ、それはそうなんだけどよ…。耐火石ってめちゃくちゃ高いんだぜ!?買えるのかよ…。」
「良いものを使ってほしいんだ。もし、お金が必要ならギルドの依頼を受けて、資金集めしたっていい!遠慮なんかしないで本音を聞かせてよ。ガレスはどうしたいんだ?」
「俺は、本当は立派な窯が欲しい。長く使い続けるような、そして、そういう窯は温度調節もやりやすいんだ。」
ロランはガレスの本音が聞けてホッとしていた。
「少しの間、ギルドで依頼を受けながら、窯を作る石工を探してみようぜ。」
ゲイルはトンテーキを食べながら、言った。ロランとガレスは首を縦に振って、返事をする。
食事も一段落して、満席だった店内も少しだけ落ち着きを取り戻していた。お客さんの話声で店内は騒がしかったが、厨房ではすべての料理の提供が終わったのか、後片付けをしていた。その時、ロランはおもむろに立った。
「どうした?ロラン!?」
突然の動きにゲイルとガレスは驚いていた。
「あぁ、店のマスターに窯を作った人を聞いてこようと思って…。二人は待っていて聞いてくるから。」
「そう言う事か。驚かすなよ。俺たちは行かなくていいのか?」
「うん、大丈夫!ゆっくりしていて。」
ロランは厨房へ歩き出した。そこには必死に片付けをしているマスターがいた。少しだけ、声を掛けづらい雰囲気だったが、意を決して声を掛けた。
「あの~…、すみません…話しかけてもいいですか…?」
「なんだ!?チビすけ!?俺になんか用か!?飯はどうだった?」
矢継ぎ早に話しかけられて、ロランは少し慌ててしまった。少し強面の顔をしているマスターはロランの顔をじっと見ていた。
「とても美味しかったです。あの…少し聞きたいことがあるんだけど…。」
「何が聞きたいんだ?味付けは教えられねぇけど、他のことだったらわかる範囲で教えてやる!」
「今、厨房を作ろうとしているのですが、窯を作る人を探していて、ここのお店の窯を作った人を紹介してほしいのですが…。」
「あぁん?お前、もしかして、この近くに店構えるんじゃないよな?もし、そうだとしたら、教える訳ねぇだろ。」
「いや、この町では商売するわけではありません。仲間のために開拓地に厨房を作ろうとしていているだけです。」
「知るか!とっとと帰んな!」
ロランは答えを聞く間もなく、追っ払われてしまった。渋々と席に戻ると、ゲイルとガレスが申し訳なさそうに喋りかけてきた。
「嫌な思いさせてしまって、悪かったな。しばらく、この町で滞在して聞き込みしてみようぜ!」
ロランはそのまま、店をあとにしようと入口の方へ歩いていった。そこにお店のお姉さんが近寄ってきて、ロランにメモを渡した。
「ちょっと待って!マスターがこれを…。本当に素直じゃないんだから…。まったく…。」
ロランはそのメモを読んだ。そこには“町の武器屋で聞け”と書いてあった。そのメモを見終えた後、ロランは深々とマスターにお辞儀をした。その姿を見たゲイルとガレスもロランの後に次いでお辞儀をした。
「一度、武器屋に行ってみよう!」
「あぁ、そうだな。ついでにこないだのお礼もしたいと思っていたんだ。」
三人は武器屋へと歩いていった。ロランはメモを胸にしまい、立派な窯を作る約束を果たすべく、前へ進み始めた。




