第十九話 穏やかな朝と不穏な森
「キュィキュィキュィキュィ~♪」
翌朝、朝からガンテは元気いっぱい。一人遊びして、なかなか起きてこないロランを起こそうと、ベッドで寝ているロランの上で跳ねるは掘るは大はしゃぎ。たまらず、ロランは起き上がることにした。
「ふぁ~…ガンテ…おはよう…むにゃむにゃ…。」
瞼をこすりながら、目覚めたロランは顔を洗うために裏庭の洗面台へと向かった。そこには、すでに起きていたゲイルの姿があった。ゲイルは早起きして、裏庭でストレッチをしていた。ストレッチをしながら、会話を始めるゲイル。
「おはよう、ロラン!よく眠れたか?」
朝から元気いっぱいのゲイル。何故か、ふとガンテと重なって見えた。
(朝から元気だなぁ・・・。)
「おはよう…。」
まだ寝ぼけているロランは軽いあいさつで返した。鳥のさえずりや海の波音が聞こえる裏庭の風景。空を見ると、薄水色の空が広がっている。色とりどりの洗濯物は風で揺れ、潮風を運んできていた。
ゲイルはストレッチを終え、ロランのいる洗面台へとやってきた。
「ロラン、今日は何をするんだ?」
「今日は採掘の依頼がやりたい!いい?」
「あぁ、いいぜ。昨日は俺の希望で討伐に行ったからな。」
「やった。ありがとうゲイル。」
ゲイルは顔を洗いながら、ロランの話を聞いていた。ロランは嬉しそうにゲイルとの会話を楽しんでいた。採掘ではガンテのスキルが役に立つ。そして、ロランの採掘スキルで鉱石採取をする。ロランとガンテにとって、鉱石採掘は得意分野である。
「朝ごはん食べたら、ギルドに行こうぜ!」
「今日は何食べる?」
空腹の二人は香りも楽しんでいる。いい香りがあちこちでしている。鼻をひくひくさせながら歩いていた。いろんな匂いがロラン達を誘惑する。しかし、ロランは以前行ったお店が気になっていた。どうやら、朝も営業しているみたいだ。ゲイルを連れて、裏口から入った。
「おはようございます。マスターいますか?」
「おぅ、入れ入れ!…あれ?この子は?」
「俺の仲間のゲイルだよ。」
「ゲイルだ。よろしく!」
ゲイルとマスターは握手を交わした。狭い裏口のテーブルには二脚の椅子が用意された。厨房のすぐ横に座り、注文を決めていった。朝はパンメニューがある。メニューを広げながら、ゲイルと一緒に決めていった。
「俺、カッサンにするぜ。ボリュームがありそうだ。朝とか昼とか関係なくお腹いっぱい食べたいんだ。」
ゲイルはメニューの中で一番ボリュームがあるカッサンを選んでいた。オークの肉を揚げて、フライにしたものをパンに挟んだものだった。そして、一番高い料理でもあった。ゲイルはお金を使うことに抵抗がない。食べたいものは食べるスタンス。そして、お金があればあるほど使ってしまう性格でもあった。そんな姿をロランは見ながら、静かに安いパンを選んでいた。
「ロラン!そんなんでお腹いっぱいになるのか?ちゃんと食わんと大きくなれないぜ?」
「いいよ、俺はこれで!」
テーブル席に運ばれてくるパンを見ながら、安いパンでも朝食にはちょうど良いサイズ感でロランは満足していた。しかし、ゲイルの選んだカッサンもいい香りで一度は食べてみたいとロランは思っていた。すると、ゲイルが急にロランの皿に手を伸ばした。
「ロラン、半分やるよ!しっかり食べて大きくなれよ!ロランのパン半分と交換な。」
「え!?いいの?本当に!?」
ロランは嬉しそうに、カッサンを受け取った。そんな姿をゲイルは見て微笑んでいた。
「俺に弟が居たら、ロランみたいになっていたんだろうな。」
「ゲイルは兄弟いないの?」
「あぁ、俺には兄弟はいないよ。親もいなくなっちまった。もう、俺には家族はいない…。ロランは?」
「俺はグランバルドに親がいて、母さんのお腹には赤ちゃんがいるんだ。それなのに…俺は…。」
ロランは家族の話をして、少し悲しみや寂しさを思い出していた。追放とはいえ、家族と離れ離れになってしまったことを悔やんでいた。その雰囲気を感じてか、ゲイルもうまく言葉を返す事が出来なかった。沈黙が続き、ゲイルは必死に言葉を探した。
「…そっか。なぁ、今度、親に手紙を書いたらどうだ?喜ぶんじゃないか?」
突然の話にロランはきょとんとして、ゲイルを見つめた。と、言うのも手紙があることを忘れていたからだ。家族と遠く離れていることが今までなかった。それだけに手紙の存在さえも忘れてしまっていた。
「そうだね!ありがとう!手紙、書いてみるよ!」
美味しい料理に感動しながら朝食も終え、店のマスターに別れを告げ、店を出る。今日もギルドで依頼をこなす予定だ。
「今日は採掘やろうよ!俺は採掘の方が得意なんだ。」
ロランは得意の採掘をゲイルと一緒にやりたいと思っていた。ガンテの鉱石感知のスキルとロランの採掘スキルがあれば、鉱石採取依頼はいとも簡単に進められることを意味していた。
ゲイルも採掘に了承し、商人ギルドへと向かった。掲示板でいくつもの依頼を確認し、今のランクにふさわしい依頼を見つけ、さらには魔獣も出るというゲイルにとっても楽しそうな依頼があった。『坑道の灯火』として、二回目の依頼はこれに決めた。
場所は少し、遠い。往復二日かかる道のりだった。でもロラン達は二人ならどんな長い旅でも楽しんでいけるような気がしていた。
準備を整え、リーフェルの街を出発。二人と一匹の旅が再び始まった。平坦な道を進み、森の中で分岐する。そこが、今夜の野営地だった。意気揚々と足取りも軽く進んでいく中、森の中で轟音とともに魔獣の鳴き声が響き渡っていた。しかし、姿は見えない。ロラン達はその場で立ち止まり、周りの様子を見る。しかし、何も起こらない。音がしなくなるまで、様子を伺い、先に進むことにした。
「なんだったんだ、あの音…。特に異常は無さそうだけど…。」
「森を早く抜けよう。野営は森の抜けたところでしよう!」
二人は慌てて、急ぎ足で前へ進んでいった。




