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それは私の理想の家族だった ~エルフから産まれたヒト~

作者: 永進
掲載日:2026/04/22

『家族』とは。

呆然と、座り込む。


『あなたさえ産まれなければっ』

『お前がエルフだったら俺たちは死ななかった』


「ねえ」

喉から言葉を出す。


誰も返してくれないのに。

『この2人』は死んでしまったというのに。


もう、誰も叩いてくれない。

誰もしかってくれない。

後を追うつもりはない。


けど、どうしたらいいのか、私には分からない。


呆然と、座り込む。

両目を開け、もう2度と動かない『それら』の前で。


私の理想の家族は、愛し合う家族だった。

無条件で愛し合う、喧嘩をしても自然と仲直りする。


それも、もう2度と叶わない。

だって、1人きりになってしまったから。




「いやー、領主様もツイてますなあ!

エルフとエルフの間から産まれた人間! 種付けをすればもしかしたらエルフが産まれるかもしれませんよ!

歳もまだ13歳らしいし、本当にツイてます!」

ゲヘヘ、と汚ならしく笑う商人。

「こらこら。

僕はそんなつもりじゃないよ。

救いたかったから救った、それだけ」

「そうですねえ! エルフが領主様の息子方から産まれれば、この土地も救われるにちがいない! 素晴らしい!」


はあ、と息を吐く男性。

メガネをかけ、細すぎず、太すぎず。

賢そう、優しそう、表情や雰囲気から、私は考える。

40代か、30代か、それくらいかもしれない。


商人は、知らないし、もう興味ない。

太ってて、言葉も声も笑い方も、何もかもが汚ならしい。


あの『(おり)』の中も、商人みたいに汚ならしかった。食事も、トイレも。


今、私は『お城』に向かっている。

もう、どうなってもいい。

何をさせられることになっても、気にしない。

『2人』は死んだし、『理想の家族』もあり得ないのだし。


種付け、の役なのかもしれない。


「所で貴女」

私、のことだろうか。きちっと反応しろ、と汚ない商人が小突いてくる。

「こら、そんな乱暴にするんじゃない。

いや…、名前がわからなくてね。この商人も、番号しか言わないし。

あるんだろう? 名前」

「なまえ」

「喋れないんじゃないですか!? エルフとエルフから産まれた失敗作ですよ!?」


「…まあ、アイツに考えてもらうのもアリかもしれないな」

よくわからない。




「初めまして。

今日からユウ様専属のメイドをさせていただきます」

「うん」


私は頭を下げる。


ユウ様は、本から目を離さず適当に応える。


第七王子、末っ子らしい。

領主の息子も王子と言うのか、私にはわからないけど。


メガネをかけ、賢そう、暖かそう、けどどこか冷たそう。領主様に似ているけど、どこか違う。


15歳、らしい。


『アイツは大人しい奴でね。本をずっと読んでばっかで。祭りにも行かないし、友達も、いるかどうか。

できたらお世話をしてあげてほしい。他のメイドだったら文句をアイツは言うけど、貴女は、そこは、ほら、特別だし。

エルフとエルフから産まれたヒト。貴女にしかできないこともあると、僕は思うよ』


領主様の言葉を思い出す。

冷たい所もあるのかもしれない。


私にしかできないこと、それは、よくわからない。


沈黙が少しあった後、


「あれ?」

不思議な声をユウ様は出す。


そして、初めて私に顔を向ける。


「名前」

「なまえ」

「そう。

名前ないの?」


言おうとするけど、思い出す。

『アイツに考えてもらうのもアリかもしれないな』

さっきの、領主様の言葉。


その『アイツ』は『この方』のことなんだろう。


「参ったな。

エルフとエルフの間から産まれたヒトって、そんな扱いヒドイのか」

「いや、そんなことは…」


いつも叩かれたり怒鳴られたりしてたけど、認めたくなくて、つい。


理想の家族じゃなかったけど、家族ではあったから。


再び、沈黙。


「…じゃあ、ユリ、でどうだろう。

うん、あんまり名付けはしたくないんだけど、ユリはいいと思う」

「ゆり」


「ユウと、ユリ。

なんか興味がわかないかな?」

ユウ様は恥ずかしそうにしながらも微笑み、


「ようこそ、家族へ。

よろしくね」

「かぞく」

「ユリも家族。

家族は愛し合う暖かいものだから、楽しんで働いてくれたら、主人のぼくとしても、皆も、嬉しいかな」


私は、泣きそうになってしまう。


家族は、愛し合う、暖かいもの。


お母さんとお父さんは、愛してくれなかったけど。

『この家族』は愛し合うのが当たり前で。


それは、私が産まれたときからずっと欲しかったもので。


2人には悪いけど、ようやく手に入って、なんか泣きたくなってしまった。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました!

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