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最終話 私は何処にでもいるわ
「……さあ、行こう、マリエール」
レオンハルトがエミリの手を優しく握り、エスコートする。
エミリは、マリエールの指輪を嵌めた手で、夫の手を、そして子供たちの温もりを強く握りしめた。
ふたたび国民の前に出るべく顔を上げた彼女の瞳には、もはや悲しみではない。
過去を越えた女王としての、凛烈たる輝きが宿っていた。
部屋の外では、八人の将軍たちが、そして聖女騎士団の面々が、それぞれの持ち場へと歩み出そうとしていた。
今、彼らの頭の中にはマリエールの幾つもの言葉が反芻されていた。
彼らの背中には、重く、そして温かな何かが宿っている。
それは、かつて本物のマリエールが「私の誇り」と呼んだ、最高に格好いい英雄たちの後ろ姿そのものであった。
空を見上げれば、朝焼けの雲がたなびき、まるで見送るように鮮やかな虹が架かっている。
それは、この国を、そして私たちが生きる未来を祝福する、彼女からの最後の贈り物。
マリエール・ド・アルシエル。
一人の少女が、自らの命を燃やし、輝かせた――眩いばかりの、愛の物語。




