第16話 ストーリー5攻略作戦
俺は大きく息を吐き出した。
隣には、新しい装備――巨大な蟹の甲羅盾を持ったホブゴブリン、もといゴブいちが立っている。
彼もまた、住み慣れた場所に戻ってきて少しホッとしたのか、低く「グルゥ」と喉を鳴らした。
帰還したのは、ダンジョン・コアのある最奥の部屋だ。
足元には、まだ先ほどの冒険者たちの死体が転がっている。
血の臭いが鼻につくが、不思議と吐き気はなかった。
慣れとは恐ろしいものだ。
あるいは、俺の精神が人間から乖離し始めているのだろうか。
いや、考えるのはよそう。
今は感傷に浸っている場合じゃない。
俺は端末を操作した。
画面には『帰還完了』の文字と共に、新しい通知が点滅していた。
あの不吉な赤いビックリマークだ。
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【ストーリー5:嵐の前の静けさ】
『深海の塔』での試練を乗り越え、力をつけた『ボンド』。
しかし、運命の歯車は止まらない。
冒険者ギルドは、消息不明のDランクパーティの調査、およびダンジョン危険度認定のため、数日後にCランクパーティ『鋼の薔薇』を派遣することを決定。
彼らは、ダンジョン攻略においてのプロフェッショナルである。
生半可な罠や、単なる力押しは通用しないだろう。
与えられた猶予期間を最大限に活用し、ダンジョンを防衛せよ。
ミッション:Cランクパーティの撃退
制限時間:2日23時間54分
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「3日……か」
俺は画面を睨みつけた。
24時間で強制戦闘だった前回に比べれば、準備期間があるだけマシと言える。
前世のサラリーマンの記憶の中でも、3日あれば資料作成からプレゼン準備までなんとかなったものだ。
命がかかっている今回は、それ以上の集中力を発揮できるはず。
「よし、やるぞゴブいち。まずは現状の確認からだ」
俺はまず、自分自身のステータスを確認することにした。
深海の塔クリア時にレベルが3に上がったはずだ。
早速メニュー画面から、ステータスを確認する。
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名前: ボンド
職業: ダンジョンマスター LV: 3
HP: 20/20(+5)
MP: 12/12(+4)
筋力: 5(+1)
魔力: 5(+2)
耐久: 5(+1)
俊敏: 5(+1)
運 : 12(+1)
【スキル】
魔物合成(LV:1)
鼓舞(LV:1) NEW
【実績】
深海の塔:第1層突破
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HPは20に上昇。
MPも増え、新スキル【鼓舞(LV1)】を習得している。
そして何より重要なのは、ダンジョンマスターLVが上がった恩恵。
ダンジョンの戦力の要となる『召喚リスト』の更新だ。
塔のクリア報酬である「水棲系」に加え、レベル3になったことで通常の魔物も解禁されているはずだ。
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【召喚可能リスト】
所持DP:370
既存:スライム、ゴブリン、コボルト、ジャイアントバット、スケルトン、ポイズンモス
【NEW(LV3開放)】
・リビングアーマー:E+(40 DP)
・アシッド・スライム:E+(40 DP)
・ミミック:E+(45 DP)
【NEW(水棲系)】
・サハギン:E+(40 DP)
・アイアン・クラブ:D(60 DP)
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「おお、結構種類も増えてきたな!」
俺は顎に手を当てて思考を巡らせる。
まず、深海の塔で増えた水棲系の魔物。
サハギンというのは、あの戦った半魚人であろう。
あの巨大蟹、アイアン・クラブに至ってはDランクで60DPだ。
ゴブリン6体分のコストだが、あの防御力を考えれば妥当なのか……。
そして、新しく追加された通常モンスター。
リビングアーマーは、動く鎧か。
物理防御が高く、疲れを知らない兵士となるだろう。
アシッド・スライムがE+で40DP。
酸を吐けるスライムか……。
通常のスライムより何倍も強いだろうな。
ミミックって、宝箱に化けるアレだよな?
罠として魅力的だが、ダンジョン自体が広くないし、現状では使い辛いかな。
所持DPは370。
このDPをどう使うかが、生死を分ける。
俺は中央のダンジョンコアの前にあぐらをかき、コンクリートのように冷たい床を指でコツコツと叩きながら、脳内で作戦会議を始めた。
……相手はCランクの冒険者パーティ。
Dランクパーティとの強さの違いが判らないが、戦力はかなり厳しめに見積もっておいた方がいいだろう。
Dランクが不良グループだとしたら、Cランクは半グレ……いや、武装した軍隊に近いと見るべきだ。
個々の戦闘力が高い上に、連携も洗練されているはず。
俺は脳内で、敵の構成をシミュレートする。
ゲームなどのテンプレ通りの戦力なら、前衛、物理火力、魔法使い(マジック)、そして回復役か。
このパーティとして完成されている構成を、どう崩すか……。
ゴブいちは強い。
ステータス上はD+ランクだが、今の装備を含めれば、ランク以上の強さを持っているだろう。
だが、このままでは流石に多勢に無勢である。
敵の前衛にゴブいちが釘付けにされている間に、魔法使いの高火力魔法で焼かれるか、敵の回復魔法による物量作戦でジリ貧になるのが目に見える。
俺はガリガリと頭を掻いた。
凡人がエリートに勝つには?
弱者が強者を食うには?
答えは一つ。
「真っ向勝負をしない」ことだ。
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