反乱鎮圧 その一
「ウィンよ、監察使とはどういうことじゃ。お主、一体何者なのじゃ」
「言ってませんでしたっけ? 監察使ですよ」
「聞いとらんぞ。それよりいいのか。宮内伯相手にあんな啖呵を切って」
「全然よくないですよ。どうしよう……。もう帝都には帰れないかも」
「それは好都合」
「え?」
「いや何でもない」
アルリフィーアは、右手で口を押さえて横を向いてしまった。耳が赤くなっている。
「いいのか大将。カーリルン公領は管轄外だろ」
「いや……えーと。ちょっと待って。……スソンリエト伯の監察を命じられて調査したところ、カーリルン公領への不審な干渉があったので……カーリルン公領の調査をしつつスソンリエト伯からの干渉を排除して秩序の安定を……図っていた……とか?」
「ま、まぁそれを一気にまくし立てればいけるかもな」
ベルウェンが失笑寸前だった。
「ウィン様、少し無理がありませんか?」
「アデン、うるさい」
「それよりウィン様、反乱の時期が絶妙ではありませんか?」
それだ。
アデンに指摘されて、もやもやしていたものを言語化できた。
何もかもが時期を同じくしていることが気に掛かる。
反乱を予期していたのか? 反乱自体、何者かが扇動して、都合の良い、あるいはアルリフィーアたちにとって都合の悪い頃合いを狙って起こしたものではないのか。
ウィンは立ち止まるとアルリフィーアの目をのぞき込んだ。
「監察使が入っている、ということで多少の時間稼ぎにはなりましたが、いずれ帝国は問題にしてきます。これまで以上に急ぐ必要があります」
「ど、どうすればよいのじゃ。ワシにできることはないか?」
「公爵には、反乱の現場に乗り込んで直接説得していただきます。できますか?」
「やる! やるともさ」
アルリフィーアは鼻の穴を広げて胸を張った。
「ではそのように。ニレロティス卿に護衛の手配を指示してきてください」
「おうよ!」
やるべき仕事ができたアルリフィーアは張り切って、廊下をツーッと滑っていった。
アルリフィーアが見えなくなると、ウィンはやる気のない目で天井を仰ぎ、ため息をついた。
「さて、外様の私たちは汚れ役だ。ベルウェン、頼めるかい?」
ベルウェンは左眉をちょいと上げた。
「俺ぁ傭兵だからな。やれと言われればやるがな」
「ウィン様、公爵は激怒しますよ。それでもやるのですか?」
「やるしかないだろう。時間がない」




