後始末 その5
「聞け、デズロント卿。お前には聞きたいことが山ほどある。あの日、一体何があった。父を殺したのはお前なのか」
ウィンの酷薄な雰囲気によるものか、レーネットは冷静さを取り戻していた。今すべきことは怒りをぶつけることではなく、真実を知ることだった。だがデズロントの様子は明らかにおかしい。まともに話ができるのか。
「サインフェック副伯を死なせたと言って戻ってきて以来、徐々に精神に異常を来して暴れるようになり、地下牢に閉じ込めるしか……」と、ルティアセスはデズロントを眺めた。かつては見下していた相手であったが、自分も侮蔑される存在に成り下がってしまった。この場で自分と対等なのはデズロントだけであった。
「デズロント卿、答えろ。お前には話をする義務がある」
「あ、ああ……ロンセーク伯……。ナルファスト公は殺しておりません。見たのです。倒れているナルファスト公を取り囲むフォルゴッソ主従を。殺したのはフォルゴッソです」
「フォルゴッソが……」
デズロントの告白というか独白は止まらなかった。堤が決壊したかのように言葉が止めどなく溢れ続けた。
「私は宮内伯の調略を受け、スハロート派に寝返っていたのです。しかし宮内伯からロンセーク伯を暗殺しろと命じられ、迷っていたのです。殺せなかった。だがフォルゴッソがナルファスト公を殺した。混乱しました。そして他のことは大したことではないような気持ちになっていたのです」
「フォルゴッソに殺されると思い、私はサインフェック副伯の下に走りました。サインフェック副伯は何度もロンセーク伯に書状を送ろうとしましたが、全て私が握りつぶしました」
「交渉すらできなかったのはお前の仕業か……」
「業を煮やしたサインフェック副伯は、直接ロンセーク伯のところに乗り込むとおっしゃり、それを押しとどめようとして手をつかんだところ、サインフェック副伯は……サインフェック副伯は均衡を崩して倒れられ、頭を強打してそれっきり……。殺すつもりはなかったのに、殺す気など……、それなのにそれなのに、ああ」
レーネットは絶句し、立ち尽くすのみだった。何もかもに裏切られ、邪魔をされ、弟たちと引き離されてしまった。怒りよりも絶望が強く、立っているのがやっとであった。
「私を暗殺しようとしたのも貴様か。それともフォルゴッソの差し金か」
「暗殺? 暗殺……暗殺? そうだ、そもそもサインフェック副伯がロンセーク伯に会いに行こうとしたのも、サインフェック副伯が暗殺されかかったからだ。あれはロンセーク伯が差し向けた者では?」




