後始末 その1
「やあベルウェン、遅かったじゃないか」
新たに出現した1000騎の騎兵を率いていたのは、別行動を取っていたベルウェンだった。
「騎兵ってのは簡単には集まらねぇんだよ。苦労したんだぞ」
聞けば、ワルフォガルでも騎兵が集まらず、ナルファスト公国外の街まで募兵の範囲を広げて何とかかき集めてきたらしい。意外に身なりに気を使うベルウェンの髭が伸び放題であることにフォロブロンは気付いた。ベルウェンは本当にぎりぎりまで粘った末に駆け付けてきたのだ。
そこに、レーネットが合流した。
「セレイス卿、援軍を手配してくれたのか。しかし、これだけの騎兵を集める資金をどうやって?」
「監察使は役得が多くてね、それを使って傭兵を集めたというわけです」
「騎兵は高けえからな、1000騎しか雇えなかったがな」
事もなげに言うウィンとベルウェンに、レーネットは絶句した。
「騎兵1000騎分の役得!? それはそれでいささか……」
「1000騎分って尋常な額じゃないですよ。うああ」
レーネットとムトグラフがあからさまに後ずさりするのを見て、ウィンは肩を落とした。
「えっ? 全額注ぎこんだのに、ひどいな」
「しかし、そんな大金どこにあったんです? 帝都まで取りに行く時間はなかったでしょう」とムトグラフは首をひねった。カネというものはかさばるし、とにかく重い。ウィンの個人的な荷物はほとんどなかったと記憶していた。
「ふふふ、手形というものがあるのだよ」
「手形?」
「商人にカネを預けると、同じ商人の別の店でもカネを受け取れるのだ。メリト商会は帝都にもワルフォガルにもあるからね」
ウィンがそんなものを利用していることにフォロブロンは感心した。もらった賄賂など部屋の隅に放り出して放置しているのかと思っていた。
「そうしてたんだけど、邪魔でね。メリト商会に預けてすっきりというわけさ。いやはや重かった。アデンは手伝ってくれないからね」
「ああ、アデンは役に立たんでしょうねえ……」




