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居眠り卿とナルファスト継承戦争  作者: 中里勇史
ナルファスト継承戦争

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アルティリット会戦 その1

 ほぼ同じ頃、レーネット軍の斥候がアルテヴァーク軍の接近をレーネットに報告していた。

 「来たか」

 アルテヴァーク軍は東西方向に広く展開して南側から殺到しつつあるという。

 先に会戦の場所を定めて馬防柵を立てたり堀を穿ったりしておきたかったが、敵の積極策はその時間を与えてくれなかった。

 「予想よりも出てくるのが早かったな。やはり戦とは思うようにいかぬものだ」

 行軍隊形のままでは前衛が半包囲される恐れがある。歩兵を横隊に再編しつつ、騎兵を左翼、つまり東側に展開した。主力の歩兵部隊はレーネットが直卒し、騎兵はバルデールに任せた。


 アルテヴァーク騎兵の初撃を受け止められるかどうかが最初の問題だった。アルテヴァーク騎兵の突撃は激しく、その打撃力は恐るべきものだ。しかし粘りに欠けるため、序盤の猛攻をしのぎ切れれば反撃の機会が巡ってくる。

 歩兵の前列に長槍を構えさせ、後列には弓矢を用意させた。騎兵に対する初歩的な戦法だ。

 レーネットは歩兵部隊の後方中央に立ち、あらん限りの声を張り上げて兵たちに語りかけた。

 「ナルファストの地を汚す不逞な鼠賊に罰を与える時が来た! 我らが武勇を見せつけて、『ナルファストに勇者あり』とアルテヴァークに思い知らせるのだ、勇者たちよ!」

 レーネット軍全体が雄叫びを上げ、武具を打ち鳴らしてレーネットに応えた。士気は高い。

 「いける」とレーネットは思った。騎兵突撃に対する最大の武器は士気だった。迫り来る巨大な馬体を目の当たりにして怖じ気づかない心だけが騎兵突撃に耐えられる。恐怖に負けた瞬間、陣形が破られて全軍が崩壊する。


 アルテヴァーク軍が見えてきた。常歩(なみあし)程度の速度でゆっくりと圧力をかけるように迫ってくる。両軍の距離が500メルほどになると、アルテヴァーク軍は駈歩(かけあし)に増速して一気に距離を詰めてきた。レーネットは腰の鞘から大剣を抜き、静かに剣を真上に掲げた。

 距離が250メルほどに詰まる。アルテヴァーク軍は襲歩しゅうほに変えて突撃を開始した。迫る地響きが恐怖心を煽る。レーネットは動かない。240メル、220メル……200メル。

 「放て」

 レーネットは大剣を正面に振り下ろした。それを合図に射撃を命じる太鼓が打ち鳴らされ、矢が一斉に放たれた。続けて2射目が放たれる。3射目は、間に合わない。

 襲歩の騎兵は10数える程度の時間で200メルを走り抜ける。この時間では2射が限度だ。アルテヴァーク騎兵の恐ろしさは、弓矢の有効射程に入った後の速度だった。弓矢では敵の戦力を削り切れない。

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