レーネット-ウィン同盟 その1
デルドリオン郊外に、レーネット軍8000と監察使軍3000、総勢1万1000の大軍が集結した。決戦に備え、兵には食事と休息を取らせてある。
両軍首脳の意見は一致している。会戦によって敵の野戦能力を粉砕し、短期間にアルテヴァークを国外に駆逐すること。アルテヴァークも同じく会戦を挑んでくるだろう。籠城戦に持ち込んでも、攻城戦が不得手なアルテヴァークは乗ってこない。機動力を生かして他の地を蹂躙するだけだ。アルテヴァークとの戦いに勝利するためには、野戦で決着をつける以外にない。
全兵力でアルテヴァークに近づけば、敵は必ず出て来る。誘い出すための工作は不要だろう。
後はどの地で戦うか。土地勘がないアルテヴァークに対して地の利を生かしたいところだが、アルテヴァークだけではなくスハロート陣営もいる。緒戦で見せたアルテヴァークの機動から考えて、ナルファストの詳細な地図がアルテヴァークに提供されているとみるべきだろう。
戦場の設定と同時に、大まかな布陣も考えておく必要がある。戦場や相手の出方によって変わるので、現時点で細部を詰めても仕方がない。だが、誰が誰と戦うのかは決めておくべきだった。
「私がサインフェック副伯を受け持ちましょう。ロンセーク伯には、アルテヴァーク騎兵を担当していただきたい。あの騎兵突撃は、我が軍には荷が重過ぎますので」と言って、ウィンはレーネットにアルテヴァーク軍を押し付けた。
「もう少し格好が付く言いようがあるだろう」とフォロブロンがたしなめたが、ウィンには響かない。それどころか「だって、あの騎兵に勝てる気がしないし」などと口走るありさまで、フォロブロンは頭を抱えた。
そんなウィン主従を見てレーネットは大笑した。自陣営にはない明るさを羨ましいとさえ思う。




