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居眠り卿とナルファスト継承戦争  作者: 中里勇史
帝国監察使

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リッテンホム城攻略 その2

 リッテンホム城の1階には水汲み場がある。普通の城なら井戸だが、リッテンホム城は目の前に清流があるので川の水を引き込んで汲んでいる。実は、この水汲み場はいざというときの脱出口になっており、城から川に直接出られる。川を引き込んでいるのだから、特別な仕組みを作る必要もない。川に出られるということは、川から城に入ることも理論上は可能だ。


 「しかし接近できるのは下流側のみ。川の流れに逆らって下流から城に入るのは困難というか不可能だ」とフォロブロンはこの案を否定した。

 「まだ話には続きがあるんだよ」とウィンは続ける。

 季節によって強弱はあるが、川から城外に出るのは当然危険だ。この脱出口を使うのは緊急事態だから危険がどうのと言っている場合ではないが、生存確率を高める工夫はしている。水汲み場から城外まで、鎖が水面付近に張られているのだ。この鎖を伝って下流に向かうと、川岸に安全に上がれるところまで行けるようになっている。鎖が張られているのは水面付近とはいえ流れのある水中なので、ちょっと川をのぞいた程度では鎖の存在には気付かない。

 「という話をデズロント卿の家臣から聞き出した」


 ウィンがレーネットに依頼したのは、デズロントが帝都から逐電した際に置き去りにし、成り行き上レーネット配下に組み込まれたデズロントの家臣を借り受けることだった。彼らはレーネット陣営の混乱ぶりを見てレーネットがナルファスト公の殺害犯ではないことを確信しており、あの状況下でデズロントが逐電したことに疑惑を感じている。リッテンホム城の情報も喜んで提供してくれた。

 「世の中ってのは結構都合良くできてるもんだね」とウィンはうそぶいた。

 「なるほどな、水面近くだから呼吸もできる。流れに逆らって鎖を伝うのは骨だが、まあ侵入は可能だろう」とベルウェンは見積もった。とはいえ雪解け水だからな、俺はやりたくねえ、と思った。

 「この鎖を使って城に入った者はいないそうだ。デズロント卿の配下なら城門から入れるんだから、こんな馬鹿げた方法を使うわけないよね」と言ってウィンはわははと笑った。その馬鹿げたことをやれと言っているのだが。


 「城内に侵入してどうする? 寝込みを襲って切り結べば人死が出るぞ」

 「水汲み場のすぐ脇が城門というか城門の脇に水汲み場があると言うべきか。とにかく侵入したら簡単に開門できる。城門の内側には不寝番が1人いるらしいから、それはうまく処理してくれ。開門したら、外に伏せておいた兵を一気に踏み込ませる。それで守備兵も戦意をなくすだろう。ついでに、ロンセーク伯(レーネット)から借りてきたデズロント卿の旧臣を見せて、抵抗したら人質を皆殺しにすると脅迫しよう」

 卑劣な手段をさらっと言ってのけた。

 「それでも抵抗されたら?」

 「ここまでしても抵抗するというなら仕方がない。結果の責任は取るから、現場判断であらゆる行為を許可する」。そのとき、ウィンはひどく悲しそうな顔をした。

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