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分類開始

 『日本十進分類法』は、日本図書館協会が定めているもの。

 本の主題ごとに排架場所を割り振っていくことで、目的の本が探しやすくなる。

 その制度を、この学園の図書室にも取り入れることにした。


「ニホンジュッシンブンルイホウ?」

「そういうものがあるのよ」


 本棚1つずつ、分類していこうと思う。

 日本十進分類法のことをフィスロに伝えると、「つまり?」と彼は首を傾げた。


「ジャンルごとに分けるって感じですか?」

「そうそう。これに従って分けて行って欲しいんだ」


 日本十進分類法は、第一区分表と第二区分表がある。

 第一区分表は、一番大きな単位での本の分け方。


0.総記

1.哲学

2.歴史

3.社会科学

4.自然科学

5.技術

6.産業

7.芸術

8.言語

9.文学


 と、こんな感じに分けられるんだ。


「第二区分表とは、どんな感じなんですか?」

「知りたい?」


 第二区分表は、すごい数だよ?

 第一区分表をもっと細かく分類したものだからね。

 1つの項目につき10個ずつ分けられているんだから。


「……頭が痛くなりそうなので、大丈夫です」


 私の顔を見て何かを悟ったらしいフィスロは、あっさり白旗を上げた。

 語ってあげてもいいんだけどね。

 いち早く図書室を開けたいから、そんな時間はないかも。


「じゃあ、図書室が綺麗に整備し終わったら話してあげるね」

「え、大丈夫です」

「なんでよ」


 せっかく人が教えてあげようとしてるのに。

 フィスロを軽く睨むと、銀髪の補佐官はにっこりと輝く笑顔を見せた。


「スイ様が図書室にこだわりまくって、永遠に整備が終わらないことを祈ります」

「変なこと祈らないでくれる!?」


 そんなこと祈るんだったら、あんたの性格が治るように祈ってやるんだから!





 学校司書と司書教諭は、似ているようで違う。

 司書教諭は図書館を活用した授業を実践したり、他の教員へ助言したりする役目。

 対して学校司書は、図書館を運営するための専門的職務に従事したり、教育活動の支援をしたりする。

簡単に言っちゃえば、司書教諭は直接的な授業を行うことができて、学校司書は間接的な支援を行うということ。

ちなみに、司書教諭は別の専門科目の教員をしながらやっている人が多い。


「え、じゃあスイ様は学校の先生を目指していたんですか?」

「そうよ。それなのに、誰かさんが異世界に召喚したもんだから、その夢はなくなっちゃったわけ」

「それは……失礼いたしました」

「うわ、珍しい」


 フィスロが謝ったよ。

 あのフィスロが。


「僕をなんだと思ってるんですか」

「失礼な人」

「お互い様ですよ」


 そんなこんなを言いながら、本をジャンル分けしていく。

 それにしても、本が多い。

 私一人で管理できるのか分からないくらい。


「あ、そうだ。いいこと考えた」


 人手が足りない。

 なら、増やせばいいんじゃない?


「スイ様の『いいこと』って、だいたい悪知恵ですよね」

「短期間しかまだ一緒にいないのに、熟知したように言わないでくれる?」


 人手を増やすこと。

 そうすれば、少しは負担が減るかもしれない。


 そこまで考えて、ハッとした。

 待って、私は自分の理想の図書室を作りたいんだ。

 それなのに、他人を入れてしまったら、理想が叶わなくなる。

 できれば、私の理想を熟知していて、且つ親しみのある人の方がいいよね。


「熟知……。あ、熟知してる人いた」


 そうじゃん。

 ついさっき、『熟知』っていう言葉聞いたよね。


「ねぇ、フィスロ」

「……ものすごく嫌な予感がするんですけど、なんです?」


 フィスロが私を見て、顔を引きつらせた。

 私は、フィスロが作業していた机まで移動する。

 そして、フィスロの方へ身を乗り出した。


「司書の先生になってよ。私が司書教諭するから」

「……なんで、僕が」

「だって、一番信頼してる人だもん」


 この世界に来て、最初は私の夢が奪われたことにショックを感じていた。

 でも、フィスロと一緒にいることで、その不安や恐怖というものは薄れていった。

 いつも失礼な発言ばかりだけど、それはまるで私を気遣ってくれているような気がして。

 まだ慣れていない世界に来た私への、心遣いのように感じたから。


「スイ様って、ときどき破壊力すごいですよね」


 フィスロは、ぷいっと横を向いた。

 その耳は、薄らと赤くなっている。

 それを見て、私の顔が一気に熱くなった。


 あ、あれ!? 私、なんかすごく恥ずかしいこと言った!?


 司書になって欲しいっていう気持ちが大きすぎて、なんか変なこと言っちゃった。

 やばい、顔がすごく熱いよ。


「さ、さぁやりましょ!」


 まだまだ、作業は終わってないんだからね!

 さっさとやるよ!


 恥ずかしさを紛らわすように、大きな声を出して言う。

 すると、フィスロも手を慌ただしく動かし始めた。


「え、えぇ! 早く終わらせましょう!」


 顔が見れない。

 私は、流れるようにフィスロから離れる。

 足がカチコチで動き辛かった。


「……スイ様が、そう仰ってくれるのなら」


 ふと、そんな声が聞こえた。

 そろりと振り返れば、フィスロが私を見ていた。

 でも、それはたった一瞬。

目が合った途端、持っていた本で顔を隠してしまった。


「司書、やります」

「……ありがとう」


 あれ、なんでだろう。

 フィスロと目を合わせるのって、こんなに難しかったっけ。


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