解放
フィスロが、王太子だった。
けっこう衝撃なことだったけど、それ以上に私の心臓はバクバクだ。
だって、キスされたんだよ!?
そ、そりゃ前髪? 額? だったけど!
それでもキ、キスされたのは、事実な訳で……!
「スイ様、おはようございます! 今日のおやつはなんですか!?」
そんなこんなに、パニックなものだったから。
いつも通りに部屋にやって来て、今日のおやつを聞き始めたフィスロに殺意が湧いてしまったのは、仕方ないよね。
そうだよね。
「なんでそんな普通なのよ!?」
聖女の魔力で、勢いを増量したクッションをお見舞いしたのだった。
◇
「ようやくだな」
礼拝堂から、王太子の自室へと帰る。
そこには、幼なじみで側近のヒースが待っていた。
「あぁ。ようやくだ」
王太子としての衣装は、なんだか苦しい。
そのため、さっさと上着を脱いだ。
「兄さん! おめでとうございます!」
アーノルドも待っていてくれて、バッと飛びついてきた。
その弟の頭を撫でながら、先ほどの光景を思い返す。
王太子として正体を明かし、スイと話したこと。
そして、額にキスを──。
「んで、キスしたんだろ? 聖女様はどうだった?」
「キ、キス!? 兄さん、どういうことです!?」
「うわぁ! 思い出させないでくれ!」
自分でも分からない。
こちらを見上げるスイが愛おしく思えて、勢いでやってしまったのだ。
誰かに顔が重なったような、そんな懐かしさと共に。
「リンさんに報告しないと!」
「リンは怒るぞ?」
「やめろ!」
そうは言いつつ、どこか心地よい。
ようやく、縛り付けられていたものから解放されたのだから。




