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お茶会

 王宮は、いつ来ても煌びやかな場所だ。

 豪奢なシャンデリアに、ふかふかのカーペット。

 王家の権力がドーンッと現れた建物のように感じる。


 そして、今回の目玉である王宮図書館は、東の棟にある。

 国会図書館とは違い、王国建国に関する資料が主に収められている。他にも、古代魔術の禁書とか。


「うわ、やっぱりすごいね」


 図書館に着くなり、私は目一杯息を吸い込む。

 本の香りは、ずっと体中で感じていたいのだ!


「これはこれは、聖女様」


 禁書が無くなった事件(犯人は猫)でお世話になった司書さんが、奥からすっと現れた。

 グレアさんという名前で、歳は神殿長より少し若いくらい。

 大ベテランの司書さんという訳だ。


「聖女様が来られると聞いて、ものすごく楽しみにしたんですのよ。スイ様専用のお席もご用意しましたので、ぜひたくさん書物をお読みになってくださいな」

「わぁ! ありがとうございます!」


 すごい!

 さすが、グレアさん!

 専用の席を用意してくれているなんて、感動だよ!


「じゃあ、さっそく……」


 ふらふらと近くの本棚に近づいていく。

 しかし。


「まずは謁見ですよ」


 首根っこをガッと掴まれた。


「フィスロ! 裏切る気!?」

「裏切るも何も、結託はしてませんよ」

「この、生意気補佐官め!」


 こうして私は、大好きな本の前から遠ざけられていったのだった。





 今まで、国王との謁見と言えば、謁見の間で行われた。

 でも、連れていかれたのは別の場所。

 王宮の奥、警備が強いところ。


「よく来たな、スイ殿よ」


 国王の執務室だった。


「な、なんでここなのよ」


 隣に立っているフィスロに、ひそひそと話しかける。

 どう考えてもおかしいでしょ、これ。

 国王の執務室に入るなんて、身内でもないのに。

 フィスロはどこまで権限を持っているのよ?


「場所は僕が決めて良いと言われたので、『王宮のお菓子が食べたいです』って言ったんです」

「なんで!?」


 確かに、国王が座っている応接セットのテーブルには、煌びやかなお菓子で溢れている。

 それに、どんどん後からあとからお菓子は追加されていく。

 ……多すぎない?


「ほら、座れよ」


 国王が、ひらひらと手を示す。

 最高権力者に言われてしまうと、断ることはできない。

 私は、色々とツッコみたいところを我慢して、ソファに座った。


 その隣に腰かけたフィスロ。

 国王がお茶とお菓子に手を付けたところで、さっそくスコーンに手を伸ばしている。

 いや、どんだけ食べたかったのよ?


「王宮のお菓子はおいしいですからね。何年食べても飽きませんよ、これは」


 フィスロに、はいっとスコーンを渡される。

 仕方ない。

 私はスコーンを半分に割ると、口の中へ放り込んだ。


「……おいしい」


 悔しいくらいにおいしかった。


「はっは。いいじゃろ」


 王様はご機嫌そうだ。

 紅茶のカップを持ちながら、楽しそうにこちらを見ている。


「本好き聖女と、甘党補佐官か。良い組み合わせじゃないか」

「良い組み合わせなんですか?」


 絶対、良い組み合わせじゃなさそうだけどな。


 ……って、そうだ。

 ここに来た目的を忘れてたよ。

 私は、マカロンを押し込んでから口を開く。


「で、執務室に呼ばれた理由ってなんです?」


 とりあえず、一番聞きたいことを言ってみた。

 すると、国王はカップをことりと置く。

そして、ふっと真面目な顔になった。

あ、なにか教えてくれるのかな。

 私の背筋が、自然とまっすぐになる。


「それはな」

「それは?」

「……お茶会をするためだ」


 お、お茶会?


「王宮のお菓子はおいしくてな。ぜひ一度、スイ殿に食べさせたかったのだ」


 それだけ?

 

「それだけですよ」


 フィスロが、口いっぱいにお菓子を入れて復唱してきた。

 えぇい! 緊張して損した!

 んで、なんでそんな呑気に食べてるのよ!?

 可愛いリスみたいにさ!


 こうして、国王の謁見──改め、ただのお茶会は過ぎていくのであった。


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