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ぎくしゃく

「なるほど。和解はしたんですね」


 神殿の書庫で調べものをしてから、聖女殿へ帰る。

 フィスロは執務室に向かい、私も自室へ戻った。

 そして、リンちゃんに着替えを手伝ってもらいながら、今日のことを報告する。


「うん。まぁ、一応?」

「もと通りに戻ってくださって、私は嬉しゅうございます」


 リンちゃんは、くすっと微笑んだ。


「あの期間は、スイ様もフィスロ様も、どこか寂しそうでしたから」

「寂しそう?」

「えぇ。きっと、お互いがなくてはならない存在になっているのではないですか?」


 なくてはならない存在……ね。

 思い返してみれば、私はずっとフィスロと一緒にいる。

 召喚されてから聖女になって、司書教諭をやらせてもらって。

 たくさんのことがあったけど、隣にいたのはフィスロだ。


 フィスロはかっこいい。

 顔が整っているし、背が高い。

 輝く銀髪も、煌めくエメラルドグリーンの瞳も。

 偶に見せる子どもっぽいところが、私は──。


「好き、ですか?」

「ななななな、何言ってるの!?」


 リンちゃん!?

 何、変なこと言ってるのよ!


「私は、お二人が幸せなら満足です」


 リンちゃんは、綺麗な笑みを浮かべた。


「だから、自分を大切にしてくださいね」


 まるで、聖母のような優しくてあたたかい言葉だった。





「スイ様。おいしいお菓子のお店、行きませんか?」


 街の視察。

 話しかけてくれる人々に、一人ずつ反応していく。

 これもまた、聖女の仕事みたい。


 そんな中、フィスロが声をかけてきた。

 通りの向こうを指さして、にこやかに私を見てくる。


「この前見つけたお店でして。ぜひ、スイ様と一緒に行きたいなぁと」

「いいね。行こう!」


 この国のお菓子はおいしいからね!

 私は、意気込んでフィスロに向き直った。

 そのとき。


 こつん。


 振り返った反動で、指先がフィスロの手に当たってしまった。

 普段だったら、何気ない日常の一コマ。

 そのはずだったのに、リンちゃんと話したあのときの言葉を思い出してしまったのだ。


『好き、ですか?』


「うわぁっ、ごめん!」

「こ、こちらこそ!」


 慌てて手を引っ込める。

 フィスロも、退いて焦っていた。


 何だろう、何かが違う。

 それはきっと、フィスロも一緒。

 呆けた顔で、私の方を見ている。

 たぶん、私も同じような顔でフィスロを見ているんだろうな。


「い、行こうかフィスロ」


 なんとか振り絞って出した言葉は、なんとも言えないものだった。


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