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和解

「おはようございます、スイ様!」


 朝。

 どんよりとしながら目覚めて、ぼんやりとリンちゃんに身支度をしてもらっていると。

 バンッと扉が開け放たれて、フィスロがやってきた。


「お菓子をお持ちしました!」

「……」


 はつらつと笑っているフィスロ。

 こっちは気に病んでそんなに寝られていないというのに、なんでそんな元気なのよ。

 そんなイライラが、体の奥底から這い上がってきた。


「着替え途中だ、この変態!」


 とりあえず、傍にあったクッションを投げつけておいた。

 聖女の魔力で、威力を何倍にもして。






「とりあえず、お菓子でも食べてください」

「なんなのよ」


 にこにこスマイルが、なんだか腹立たしい。

 少しイライラしながらも、フィスロが持ってきたお菓子を見る。

 粉砂糖が降りかかったチーズケーキだ。おいしそう。

 アールグレイをお供に、ぱくんと頬張る。


「おいしいよ」

「よかった。それ、スイ様への罪滅ぼしです」

「……私の方が色々とやらかしてるけど」


 フィスロに怒鳴っちゃったし。

 私の方こそ、謝らないといけないのに。


「いえ。僕の方が、隠し事が多いので」


 フィスロは、紅茶を優雅に飲みながらそう言った。


「補佐官として言えないことが、たくさんありましてね」

「いつか、教えてくれる?」


 そう問えば、フィスロは目を伏せた。

 哀しそうに見えるその瞳は、アーノルドみたいな緑色だった。


「僕の口からは何とも。第二王子殿下に会われたんですよね、何か仰っていましたか?」

「王太子──お兄さんを助けて欲しいって言ってた」

「そうですか」


 その曇った顔は、王太子がらみで何かありそうだった。

 王太子は近くにいるんだよね。

 ヒースさんは、結局どうなんだろう?

 緑色の髪だし、『運命』の絵画の色に合っているけど。


「この国の秘密、調べることならできますよ」

「え?」


 不意に、フィスロが言った。

 暗い顔ではなく、不敵な笑みで。

 あぁ、いつものフィスロだ。


「神殿の書庫です。あそこは、古い文献がたくさん置いてありますからね」


 そうじゃん!





「ほっほっほ。久方ぶりじゃの」

「こんにちは」


 神殿に行くと、神殿長が出迎えてくれた。

 久しぶりにおじいちゃんの家に行ったときみたい。

 神殿長は、嬉しそうに笑ってくれていた。


「待っていたぞい。ちょうど、パンケーキが焼き上がったところじゃ」

「パンケーキ!?」


 平和である。




 神殿特製パンケーキをごちそうになった後は、待望の書庫へ。

 ここはきちんと分類がされている。

 でも、読書環境は整っていなかった。


「机もそうだけど、全てが埃っぽいね」

「あまり使われていないですからね」

「ここを連携システムで利用するなら、居心地の良い環境にした方がいいかも」


 久しぶりの図書室改革だ。

 わくわくして、胸が高鳴る。


「……調べものをしに来たんじゃないんですか?」

「本を読むには、やっぱり最高の読書環境が欲しいじゃん!?」


 いざ、改革へ!

 腕まくりをし、何から取り掛かるか考える。

 そんな中、ふと見たフィスロは淡く微笑んでいた。


「──と、この……れたら、……に」


 途切れ途切れの言葉が、彼の口から溢れた。

 聞こえなかった、それを聞き返す勇気はなかった。

 だから、私はいそいそと本棚へ近づいていったのだった。




「この先もずっと、このままの関係でいられたら、いいのに」


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