裏目的付き
「え、王宮に行くんですか?」
学園の図書室。
聖女としての仕事を増やすことを伝えると、図書委員の3人は目を丸くした。
「あの、本しか目に入っていない先生が?」
「聖女は副業だと言っていた先生なのに~」
「どんな心変わりがあったんです?」
「あのねぇ……」
なんか、皆してフィスロに似てきてない!?
私をなんだと思っているのよ!
……とまぁ、そう言われるのも無理はない。
聖女じゃなくて司書教諭に熱を注いできたことには、否定はしないし。
「平和すぎることに疑問があるんだよね」
「平和すぎること?」
日本は、平和だと謳われていた国だった。
でも、犯罪はあるし格差社会だってあった。そこからトラブルに発展することだって。
そう言う意味では、完全なる平和というものには該当しない。
対して、この国は本当に平和だ。
犯罪はほとんどない。争いごともなければ、格差はあれどそこにトラブルは生まれていない。それぞれが格差を理解し、歩み寄るという最大の理想が再現されているのだ。
つまり、気持ち悪いくらい平和なのだ。
「人はね、どこかしらでトラブルを起こすの。なのに、この国ではそれがない。その理由は、隠されている王太子殿下の存在が関わっていると思うのよ」
「だから、聖女の仕事を増やして、王宮に探りに行くという訳ですね」
レンくんが頷いた。
その隣では、セイラが淡く微笑んでいた。
「聖女先生がそこまでお考えとは、フィスロ様も幸せですわね」
「ね~! フィスロ様、喜ぶと思います~!」
リアもにこにこだ。
え、どうかしたの?
「まぁ、いずれ分かりますわ」
ということは、私だけ知らない何かがあるってことだよね!?
何それ!
「とりあえず、私たちは応援してます~! 先生とフィスロ様の恋路」
んなっ!
久しぶりに言われた! 忘れてくれているんだと思ってたのに!
「それは余計! 私は王宮図書館を楽しむんだから! ……あ」
「本音が出ましたね」
レンくんが、お腹を抱えて笑った。
*
「聖女としての仕事、か」
その日の夕方。
フィスロが、国王との謁見を整えてくれた。
私は、国王の執務室のソファに座っている。
このソファ、座り心地抜群だ。
ふわふわしすぎてて、気を抜いたら寝ちゃいそうである。
「急に目覚めたな」
あっはっはと笑う国王。
超イケオジなのに、豪快な笑い方だ。
ギャップがすごい。
「そうだなぁ。では、まず神殿に行ってみると良い」
「神殿?」
「聖女を異界から召喚したり、聖女を崇拝したりしている場所だ。そこに赴いたのち、この私が聖女について教えよう」
「ありがとうございます!」
神殿は、聖女についての総本部みたいなところなのだろう。
それなのに、聖女のことについて教えるのは国王だと言っている。
つまり、国王にしか知り得ない『何か』がある。
「今日はもう遅い。神殿には話を通しておくから、明日にでも行ってみなさい」
「はい」
「では、これで。ほら、早く行かないと図書館が閉まってしまうぞ」
えっ!?
「そのために来たのではなかったのか?」
「そ、そうですけど、それは裏の目的っていうか……。ってか、誰からそんなこと……!」
まさか!
「ちょっと、フィスロ!」
「国王陛下の御前では、嘘は吐けないと思いまして」
「だからってバカ正直に言うんじゃないよっ!」
図書館に行きたいのは正解だよ。行きたくて仕方ないもの。
でも、それを正直に言わなくてもいいじゃん! 恥ずかしいよ!
「聖女活動(裏目的付き)ですね。というより、どっちが本来の目的か分かりませんね」
「フィスロは本当に失礼! そ、そりゃ図書館に行くことが目的ではあるけど!」
「認めましたね?」
「うるさい!」
こうして、私の聖女活動(裏目的付き)が始まったのだった。




