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賑やかさと静寂

 図書室が、賑やかになってきた。


 まずは、『入れて欲しい本投票』の結果発表。

 たくさん票が入った本を当選として、図書室に入れることを掲示した。

 加えて、第2回開催も。


 次に、『まだ見ぬ君へ、本の贈り物です』のイベント。

 今週のテーマは、『将来に困っている人へ』だ。

 そんな誰かに贈りたい本を、専用の紙に書いて提出。

 それを図書室の壁にたくさん掲示した。


「この本、読めるようになるんだ!」

「将来のこと悩んでるから、ちょっと読んでみようかな」


 魔法使いの育成所だとしても、必ずしも魔法使いにならなくても良いのがこの学園。

 魔法という力を得ることで、違う職業に就いても便利になる。

 だから、将来について悩んでいる学生が、図書室に集まったのだった。


「すごいですねぇ」


 司書のカウンターで様子を見ていたフィスロが、ふっと微笑んだ。


「僕が学生の頃は、こんなに賑わってはいませんでしたよ」

「図書室に来たいって思う気持ちを引き出しただけだよ」


 図書室に行きたくないから利用しない、ではない。

 図書室に行く理由がないから、利用しないのだ。


 ならば、その気持ちを変えればいい。

 自然に「行きたい」と思うところ、訪れる理由がなくても「行きたい」と感じるところ。

 そんなところにしたいのだ。





 サークル用の本のリストも、完成に近づいてきた。

 放課後の時間、顧問の先生方が図書室に来ては、資料を探していく。

 そして、該当する本をリストとして残していくのだ。


「うんうん。順調だね」

「この調子だと、次の単位認定レポート期間に間に合いそうですね」


 この学園には、試験期間とは別に、『単位認定レポート期間』というものがある。

 サークルに所属している学生が、研究成果で単位を取得するために書くレポートを作成する期間だ。

 その期間中に、この図書室で調べものを行ってくれたら嬉しいな。



 今日の仕事が終わり、フィスロと聖女殿へ帰る。

 王宮の門をくぐり、聖女殿へ続く回廊を歩く。

 もう陽は落ちていて、星がきらきらと輝いていた。


「星が綺麗だね」

「えぇ、とても。……スイ様」


 ふと、フィスロが足を止めた。

 私は、ん? と立ち止まる。


「フィスロ?」

「スイ様。僕の後ろに」


 フィスロは、するりと腰の剣を抜いた。

 私はフィスロの背後に回らされる。

 守られるように。


 コツ、コツ、コツ。

 回廊の向こう側から、足音が聞こえてきた。

 足音はだんだんと大きくなっていく。

 私は怖くなって、フィスロのマントをぎゅっと握りしめた。


「誰だ」


 フィスロの口から、普段からは考えられないくらい低い声が発せられた。

 すると、足音はぴたりと止まった。

 不気味なくらい、回廊が静寂で包まれる。

 フィスロが警戒を続ける中、足音の持ち主は、カツーンと足を1回鳴らした。


「……なんだ」


 その音を聞いた瞬間、フィスロは警戒を解いた。

 剣を鞘に納めて、ふぅと息を吐く。


 訳が分からないのは、私だ。

 いきなり足音がして、止まったかと思ったら、別の足音がした。

 それを聞いて、フィスロは安心した。

 そこにあった因果関係を教えて貰いたいよ!


「だ、誰なのフィスロ!?」

「普段の足音とは変えてやって来た、迷惑な奴です」

「その『奴』の名前を聞いてるんだけど!?」

「くくっ」


 暗闇の中で、足音の持ち主が笑った。

 そして、さっきとは全く違う足音で近づいてくる。


「初めまして、聖女様」


 月明りに照らされた、男性の姿。

 綺麗な茶髪に、青い瞳。

 端麗な顔に、笑みを浮かべて。


「王太子殿下の側近、ヒースです」


 王太子殿下!?

 なぜだ!


「フィスロ、知り合いなの?」

「昔からの悪友ですよ。こうして変な登場をしては、僕を驚かせてくる奴なんです」

「酷いですね。僕はただ、君を試しているだけなのに」

「それが迷惑なんですよ」


 なるほど、仲良しの友達ってことね。

 職場に仲が良い人がいると安心だよね。


 ……で?

 王太子殿下の側近が、何の用なの?


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