情報センター
読書センター、学習センターと来たら。
最後は『情報センター』である。
「情報センター、ですか」
放課後の時間。
やっぱり誰も訪れない図書室で、私とフィスロは本棚の整理をしていた。
「情報センターっていうのは、資料や情報を収集する場として図書室を利用することよ。簡単に言っちゃえば、『図書室に行けば調べたいことが調べられる』ってことだね」
物事について、「これなんだろう」と疑問に思ったり、調べたいと思ったとき。
図書室に行けば、調べるための資料がたくさんある。
その中から、自分の必要とする情報を得ていく。
それが、情報センターとしての学校図書室だ。
日本だと、これ以外に『情報リテラシー』や『ICT機器の扱い方』などが入ってくる。
すぐに検索できる環境ができているからこそ、誤った情報を鵜吞みにしてしまうことがある。
それらを防ぐために培われるのが、『情報リテラシー』だ。
「でも、調べるために図書室に来るって……それこそ実家の図書室や国立図書館になりません?」
「そうなんだよねぇ。スマホとかタブレットがない代わりに、いつでも本で調べられる環境が整ってるんだよ」
「なんですか、その、『すまほ』とやらは」
「文明の利器よ」
うーん。どうしようかなぁ。
私は、窓をちらりと見る。
窓の向こう側は、中庭だ。
今日も今日とて、植物魔法のサークルが活動をしている。
うんうん、青春だね。
研究を重ねて、分からないところは論文とかを読んで追究するんだ。
でも、先行研究論文は探すのが大変なんだよね。
図書室に来たところで、調べたい内容がなかったら……。
ん? そうか!
「フィスロ。教員室行ってくる」
「ちょ、ちょっと! 思い立ったらすぐに行動しないでくださいよ!」
*
「エルド先生。こんにちは」
「おや、聖女先生。どうも」
教員室で話しかけたのは、植物魔法サークルの顧問・エルド先生だ。
優しい深緑の髪で、みんなをあたたかく見守っているおじいちゃん先生。
エルド先生の薬草学の授業は、どれも人気だと聞いている。
「何か、御用かね?」
「サークルの研究は捗っています?」
「そうだなぁ。学生たちはよく調べてはいるが、論文などを見つけるのが苦手らしいんだ」
サークルに所属している学生は、自分の研究を提出することで単位を貰える。
そのため、自分の研究に勤しむ学生も多い。
でも、やっぱり資料を探すのが難しいらしい。
ふっふっふ。
そんなときの図書室だよ!
「もし、植物魔法サークルが使えそうな植物学の本を置くコーナーを作ったら、先生はどう思われますか?」
「そんなことが可能なのか!?」
私が提案すると、エルド先生はぐいっと身を乗り出してきた。
「学生たちのために、参考になる本をいくつか上げようと思っていたんだ。図書室にそんなコーナーを作ってくれるのなら、私もいじれば最高の資料棚ができあがる!」
調べたいけど、どの資料から調べたらいいか分からない。
分類分けされているとはいえ、植物学の本棚に行っても、結局どの本を読めばいいか分からない。
そんな現状を変えたいと思ったのだ。
日本とは全く異なる、情報を得るやり方。
ならば、そのやり方を勝手に作っちゃえばいい!
「助かるよ、聖女先生! おかげで、サークルが上手くいきそうだ」
「聖女先生。それは、私のサークルでも適応してくださいますか?」
「僕のところも」
ふと、エルド先生の肩から顔を覗かせた先生たち。
水魔法研究サークルの顧問と、魔法剣士サークルの顧問だ。
あらあら。
どこのサークルも、研究論文を学生に読ませるために苦労してるんだね。
「もちろん、先生方のためにも──」
そう言いかけたとき。
「私のサークルも!」
「みんな、ズルいぞ! 俺のとこも頼みたいんだ!」
先生方が、わらわらと集まってきた。
自分のサークルについて熱く語り始め、サークル専用本棚を作りたいと申し出てくる。
……ちょっと!
数が多すぎませんか!?
全部の棚を作ってたら、図書室が大変なことになりそうだね。
サークルのためだけの図書室になっちゃうよ。
なら、本のタイトルをリストアップするくらいにしようかな。
図書室に行けばすぐに調べることができる、そんな情報センターの役割を担ってくれるかもしれない。
「か、考えときます」
情報センターとしての図書室も充実できそうだ。
いい収穫だった。
思いのほか数が多かったけどね。
「聖女様親愛サークルとかあるらしいですよ」
「何それ。すごい愛国心」
「他人事ですね」
「だって、私は司書教諭だもん」
「聖女様です! 一応は!」
「一言余計なのよ、フィスロは!」




