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調べ学習

「おー、図書室だ」

「授業で図書室を使うとは、初めてですわね」


 わらわらとやってきた学生たち。

 私は、緊張しつつも笑顔で迎える。


「スイ先生」


 学生たちの最後に入ってきた、ミール先生。

 ミール先生はにこやかな笑みを浮かべながら、私のところに近づいてきた。


「既にどんなことをするのかは、さらっとだけ伝えてあります。あとは、先生のお好きなように進めていただいて結構です」

「い、いいんですか?」

「もちろん。司書教諭なのでしょう?」


 そう! 今日は図書室を使う授業の日!

 ミール先生のクラスで、日本で言うところの『総合的な学習の時間』の授業を実践するのだ。


 にしても、ミール先生最高すぎる!

 私のことを司書教諭として認めてくれているし、授業も任せてくれる。

 教育実習の担当教官みたいに思えてきたよ。


「じゃあ、皆さん。席に座りましょうか」


 席はどこでもいい、そう言う前に学生たちは座っていた。

 教室での座り方と同じ場所で、姿勢良く。


「え、図書室で授業したことあるの?」

「ないですけど、なんとなく座りました」


 ……すごいねぇ。

 ミール先生の学級経営が気になるよ。





「調べ学習、開始です!」


 気になる職業を調べること。

 様々な職業が書かれている本を探すことで、調べやすくなる。

 また、調べた内容は紙に書き留めること。

 どの本から抜粋してきたのかを書いておくと良い。


 ざっと説明をしただけで、学生たちはさっと動き出した。

 あらゆる本棚を見て周り、欲しい情報が書かれた本を探していく。


「あれ、図書室が使いやすくなってる」

「ジャンル分けされてるだけで、こんなにも探しやすくなるんだな」


 そんな声が聞こえてきて、私はにっこり。

 えへへ、嬉しいよね。

 頑張って整備した甲斐があるなぁ。


 本を持ってきて調べている学生たちの間を、机間巡視する。

 一人で黙々とやっても良し、数人で調べ合うのも良し。

 ここは図書室だから、少し自由な授業形態の方が楽しく活動できるよね。

 そんなことを考えながら、ちらちらと学生の手元を見ていく。


 ほうほうほう。

 商人に、魔術師。教師もいれば、剣士もいる。

 きっと、貴族の学生たちは家を継がなければならない現状もあるのだろう。

 なりたくてもなれない、そんな職業があるのかもしれない。


「あ、アーノルドさん」


 ふと、第二王子を見つけた。

 彼は、黙々と作業を続けている。

 良い学生だなぁ。微笑ましく思いながら手元を覗く。

 そこには。


「冒険者……」

「あ、聖女先生」


 私に気付いたアーノルドが、こちらを見上げて微笑んできた。


「アーノルドさんは、冒険者に興味があるんですか?」

「はい。絶対なれないけど、昔から憧れだったんです。僕は、兄さんの補佐になることが決定してますから」


 そっか。

 アーノルドは第二王子。ならば、第一王子がいることは、当たり前なことで。

 王太子は、いずれこの国の王冠を頭に乗せる。

 その補佐として、第二王子は在らなくてはならなのだろう。


 鳥籠みたいだ。

 飛びたくても飛べない、籠の中の鳥。

 自由に空を飛びたいよね……。


「そういうときは、本を読んだらどうかな」


 寂しそうなアーノルドの瞳に耐えかねて。

 私は、ちょうど近くにあった本棚から一冊抜き取った。


「これ、冒険者が主人公の物語よ。宿命を背負いつつも、自分の夢を追いかけ続けるの。今のアーノルドさんにぴったりだと思う」

「僕に……」


 アーノルドは、そっとその本を受け取った。

 そして、嬉しそうに微笑む。


「借りたいです」

「ぜひ」


 笑顔が戻ったようでよかった。

 アーノルドのような学生たちには、少し大変な学習だったかもね。指導案に書き足しとかないと。

 ふと見れば、フィスロが離れたところで笑みを浮かべていた。





「え、殿下ずるい。僕も、聖女先生に本を選んで貰いたいです」

「私も!」

「んえ?」


 アーノルドの笑顔を眺めていると、急に近くで声がした。

 見れば、私の回りを学生たちが取り囲んでいる。

 えぇ!? 何、この状況!


「おすすめの本は!?」

「私にぴったりの本って、何ですの?」


 な、なんで急に!?


「だって、もう課題終わっちゃったんですもん」

「まだ時間あるし、せっかくなら殿下みたいに本を選んで欲しいなって!」


 確かに、学生たちのほとんどが課題を終えている。

 しまった、この学生たちは大変な優秀生だということを忘れていた。

 この課題は、授業1コマ分もいらなかったんだ。


「……じゃあ、授業変更で! 本について語ります!」

「わーい!」

「スイ先生、私にもおすすめの本を教えてくださいな」

「ミール先生! 横入り禁止です!」


 わいわい、がやがや。

 図書室が賑やかになっていく。


 静かな図書室もいいけど、授業内の図書室はこれくらい賑やかな方がいいよね。

 まぁ、授業じゃなくなってるけど。


「調べ学習は終わりですか?」

「本について語る方が楽しいじゃない!」

「……そうですか」


 フィスロが呆れたような顔をしてたけど、関係ない!

 私は学生たちを引きつれて、本をどんどん紹介していくのだった。


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