表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

29/70

束の間の休息

「こんにちは~」


 今日は休日。

 魔法学園もお休みだから、司書教諭の仕事も一息。

 だから、私はあの本屋さんへ来ていた。


「いらっしゃい、スイちゃん」

「ザムさん、来ちゃいました」


 本を図書室に入れて欲しいと頼んだ、本屋さん。

 そこにはよく訪れていて、店主さんのことを名前で呼ぶくらいの仲になった。

 ザムさんには、聖女ではなく名前で呼んでもらっている。

 それが、なんだか嬉しかった。


「新刊が入ったぞ。買うかい?」

「買う買う!」


 この国で特に人気の作家さん。

 その新刊が発売されると飛ぶように売れる。

 図書室に入れたいけど、なかなか手に入らないから困ってたんだよね。

 そのときにザムさんと仲良くなったから、特別に1冊だけ取り置きしてくれているんだ。


「スイちゃんは本当に本が好きだねぇ」

「こっちの世界に来る前から大好きなんです。悔しいのは、大好きなシリーズの新刊が読めないこと!」


 こっちの世界にも本はある。

 でも、日本の本はない。

 だから、続きが気になっていた本はもう読めないのだ。

 そう考えると、とてつもなく寂しい。


「スイちゃんには悲しいかもしれんが、わしらにとってみれば聖女様は大切なんじゃ」


 ザムさんは、私の気持ちを分かってくれたようだった。

 ぽん、と頭を撫でてくれる。

 その手のあたたかさが、大好きな祖父を想起させたのだった。





「聖女様、ザムじいのところ来てたんだ!」

「これ、食べていきな」

「どうだい! 青薔薇モチーフの髪飾りだよ!」


 本屋さんを出ると、街の人々が私を見つけて微笑んでくれた。

 そして、あたたかい感情をくれる。


 慕ってくれる子どもたち。

 甘いお菓子をくれるおばさん。

 精巧な髪飾りを嬉しそうに見せてくれるおじさん。


 みんなが、煌めく笑顔を浮かべていた。

 これはきっと、平和の証。

 司書教諭だなんだと図書室に引きこもっているけど、外に出れば私は聖女。

 街の皆は、私を聖女として受け入れてくれている。

 それが嬉しかった。


「ありがとう」


 仕事の合間の時間。

 その日は、たくさんのあたたかさを貰ったのだった。




「お土産は?」

「……フィスロには何の情緒もないのね」


 帰って一発目が、その言葉なのが腹立たしい。

 まぁ、それが一番居心地が良かったりするんだけどね。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ