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読書センター

「重要なのは、読書環境の整備だよね」


 学園長にカリキュラムを変更して貰った、次の日。

 今日も今日とて誰もいない図書室を前に、私はぽつりと呟く。


 以前より整備された図書室には、学生がちらほら来るようになった。

 特に、新たに開館した日の周辺は、学生が多かった。

 それなのに、今はまた逆戻りの状態。

 勉強をしている学生さえ見ることがない。


「どうやって学生を来させるんです? 授業に乱入して勧誘するんですか?」

「そんなヤバいことはしないよ。学園長から許可は貰ったけど、さっそく使うにはまだ早いから」


 やるからには、徹底した準備が必要!

 図書室に来させても、その環境が充分に整っていなければ意味がない。


「ねぇ、フィスロ。街で人気の本、リスト化してくれた?」

「もちろんです」


 フィスロに問いかければ、すっと書類が出てくる。

 ふふふ、これを使うんだ。

 上手く行けば、利用者が増えるかもしれない!


「ふっふっふ」

「……森の奥にいそうな魔女の笑い声、やめてください」

「失礼な。森の奥にいたって、悪い魔女とは限らないでしょ」

「確かに」


 作戦決行である。





 ザワザワとした騒めき。

 講義棟の隅にある廊下では、ここまでの騒めきはめずらしい。

 私は、作業していた手を止めて、図書室の扉を開けた。


「あ、聖女先生!」

「久しぶり~!」

「セイラちゃんにリアちゃん。いらっしゃい」


 セイラとリア。

 図書室の前には、彼女たちを始めとする何人かの学生がいた。

 学生たちが見ているのは、図書室の掲示板だ。


『読みたい本選挙開催! 読みたい本に投票すれば、図書室に本が入るかも!?』


 そんな見出しが書かれたポスター。

 それはもちろん……。


「これって、聖女先生が考えたんですか?」

「うん。今、国中で人気の本をリストアップしてみたの。どの本も、図書室には入ってない本たちだよ」

「あ、私。これ読んでみたかったんです」


 そんな声が聞こえた。

 見れば、亜麻色の髪の女子学生がリストにある本を指さしていた。


「でも、実家の図書室にはなくて。そこは学問書ばかりなので、いつか文学を読みたいって思っていたんです」

「その想い、大事にした方がいい。読みたいって思った本こそ、自分のためになったりするのよ」


 微笑んで応えれば、彼女はこくりと頷いた。

 そして、掲示板の傍に置いてある机へ移動する。

 そこには、紙とペン、投票箱が置いてある。

 読みたい本のタイトルを書いて、投票箱に入れたら投票は完了。

 あとは、結果待ちだ。


「よろしくお願いします」


 亜麻色の女子学生は、嬉しそうに投票をした。

 その様子を見ていたリアが、「私も~」とペンを持つ。


「アクセサリーを魔法に使う物語って、なんかおもしろそう!」

「偶には、文学もいいですね」


 セイラも、ウキウキとして投票をする。

 他の学生も、ちらほら投票をしてくれていた。


 作戦、大成功。

 この国の読書は、ほとんどが学問書であるとフィスロが調べてくれた。

 なら、話は簡単。

 普段触れることのない文学作品で、かつ国民に大人気シリーズをリストに入れる。

 この学園は貴族も多いから、きっと庶民文学も気になる人もいるだろう。

 それを見越して、たくさんの文学作品を候補として挙げたのだ。

 

 うっふっふ。

 こんなに賑わってる図書室は初めてだ。





「図書室にはね、3つの機能があるの」

「ほう」

「まずは、読書センターね。学校教育の中で行われる様々な『読書指導』や『読書活動』を充実させていくための拠点となるのが、学校図書館よ」


 図書室は、読書を支える場所。

 そんな場所を整備するのも、仕事の一種だ。


「空間の工夫とかも必要だけどね。まずは、読書の充実化を図ろうかな」


 この学園では、きっとそれが第一優先だ。

 学問書ばかり揃った図書室は、勉強の延長線みたいに思ってしまう学生もいるだろう。

 そうではなくて、読みたい本を読むことができる場所にしたい。

 大変な勉学から離れて、好きな本を読むこと。それが、心の安らぎになるはず。


 まぁ、学習でも図書室を使って欲しいけどね。

 それはまた、後日の話。


「そのために、僕は街中の本屋さんを駆け巡った訳ですか……」


 ちなみに、私は意気揚々と語っているが。

 目の前のフィスロは、はぁはぁぜぃぜぃとしていた。

 膝を付いて、ずーんと項垂れている。

 フィスロには、仕事をお願いしていた。


 まず、入れて欲しい本リストを作るために、街中の本屋さんに聞き込みをして貰った。

 次に、作ったポスターを学園中の掲示板に貼って貰ったのだ。

 

 つまり、疲労困憊。

 珍しくフィスロが息も絶え絶えなのである。


「ごめんって、フィスロ。フィスロにしか頼めなかったの」


 フィスロの前にしゃがみ込んで言えば、彼はすっと顔を上げた。

 美麗な顔にかかる前髪と、それを張りつかせる汗。

 うーん、大人な魅力でかっこいい。


「お菓子、ください」

「へ?」

「今日のおやつです。そしたら、すぐに元気になります」


 なんだかフィスロは可愛らしい。

 超イケメンなのに、どこか子どもっぽいところが特に。


 仕方ない。たくさん手伝ってくれたから、ご褒美あげないとね。

 今日はチョコバナナケーキだから。


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