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目録の書(仮)

「それで、『目録の書(仮)』は、どうやって使うんです?」

「ちょっと。(仮)が余計よ。失礼ね」


 持てる力を持ってして作り上げた、蔵書検索システム。

 パソコンがない代わりに、本の形として完成させた。


「探している本が見つからないとき、ここに書き込むの」


 『目録の書(仮)』をめくって1ページ目。そこがポイントである。

 

 青色の字で書かれた検索バー。そこに、本のタイトルや作家名など、探している本のキーワードを書き込む。

 書き込むときに使うのは、専用の羽根ペン。インクはないけど、魔法紙でできた本には書けるというもの。イメージは、タッチペンだ。


 検索バーに書き込めば、対応する本の候補が次のページから浮かび上がる。想像するなら、ブラウザが本になっている感じ。

 そこから探している本のページを見つければ、そのページには本棚の位置やあらすじなどが書かれている。

 そんなシステムで、本を探しやすくなるのだ。


「……すごい」


 フィスロが、心底驚いたような顔をしていた。

 それを見て、ふふんと胸を張る。

 どうだ、本ヲタクの力を見たか!


「よし。じゃあ、あと3つ作るね」

「えぇ!? なぜ3つも!?」


 当たり前でしょ?

 私用とフィスロ用、学生たちが利用できるのが2つ。

 最低でもこれくらいないと、図書室は成り立たない。

 それに、これはパソコンの代わりでもあるんだから、何が人気で何が借りられているのかとかを知ることができる。

 だから、きちんと作っておかないと。


「大丈夫、大丈夫。聖女はチートでしょ?」

「そういう問題じゃありません!」





 結論から言おう。

 私は寝込んでいる。


「うぅ、頭痛い~……」

「魔力の使いすぎですよ」


 聖女殿の自室。

 ソファに転がる私を、フィスロが呆れたような目で見てきた。


「ほどほどにしないと、こうなるんです」

「あるあるだよねぇ。魔力の限界を知らなくて、こうやって倒れるシチュ」

「すみません、よく分からないです」

「そのセリフ、AIじゃないんだから」


 どこか懐かしいと思ってしまった言葉だった。


 結局、あのあと『目録の書(仮)』を3つ作った。

 おかげで魔力を使いすぎて、このような状況に至る。


「あとは、名称ですね」


 フィスロが、私の「AIじゃないんだから」というツッコミを無視して、真剣な表情になって言った。

 勝手にスルーしてんじゃないよっ。


「これは、国宝並みのものです。国王陛下に申せば、勲章が得られます。そのために、名称を考えないと」

「うーん……。勲章はいらないや」

「え、なぜです?」


 勲章を取るために作ったわけじゃない。

 ただ単に、図書室を使いやすくしたかったから。

 勲章をもらって図書室は有名になるよりは、気軽に使ってもらって図書室ライフを楽しんでもらいたい。


「スイ様らしいですね」


 フィスロは、ゆったりと微笑んだ。


「それでは、『翠玉目録』なんていかがでしょう?」

「翠玉って、私の名前……」


 忘れかけていた。

 私の名前は、『本浦翠』だ。スイ、っていうのが浸透しすぎて、漢字を思い出せなくなるところだった。


「本に埋め込まれた宝石は、青く見えますが光によっては緑にも見えます。だから、『翠玉』です。いかがですか?」

「……うん。良いと思う」


 きっと、フィスロは配慮してくれたのだろう。

 名前を忘れないように。

 唯一、日本との繋がりを維持しているものだから。


「フィスロは、良い奴ね」

「知ってます。というか、とっても素晴らしい人に向かって、『奴』は失礼ですよ」

「フィスロにはお似合いだよ」

「失礼な」


 ありがとう、フィスロ。

 作った甲斐があったよ。


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