目録の書(仮)
「それで、『目録の書(仮)』は、どうやって使うんです?」
「ちょっと。(仮)が余計よ。失礼ね」
持てる力を持ってして作り上げた、蔵書検索システム。
パソコンがない代わりに、本の形として完成させた。
「探している本が見つからないとき、ここに書き込むの」
『目録の書(仮)』をめくって1ページ目。そこがポイントである。
青色の字で書かれた検索バー。そこに、本のタイトルや作家名など、探している本のキーワードを書き込む。
書き込むときに使うのは、専用の羽根ペン。インクはないけど、魔法紙でできた本には書けるというもの。イメージは、タッチペンだ。
検索バーに書き込めば、対応する本の候補が次のページから浮かび上がる。想像するなら、ブラウザが本になっている感じ。
そこから探している本のページを見つければ、そのページには本棚の位置やあらすじなどが書かれている。
そんなシステムで、本を探しやすくなるのだ。
「……すごい」
フィスロが、心底驚いたような顔をしていた。
それを見て、ふふんと胸を張る。
どうだ、本ヲタクの力を見たか!
「よし。じゃあ、あと3つ作るね」
「えぇ!? なぜ3つも!?」
当たり前でしょ?
私用とフィスロ用、学生たちが利用できるのが2つ。
最低でもこれくらいないと、図書室は成り立たない。
それに、これはパソコンの代わりでもあるんだから、何が人気で何が借りられているのかとかを知ることができる。
だから、きちんと作っておかないと。
「大丈夫、大丈夫。聖女はチートでしょ?」
「そういう問題じゃありません!」
*
結論から言おう。
私は寝込んでいる。
「うぅ、頭痛い~……」
「魔力の使いすぎですよ」
聖女殿の自室。
ソファに転がる私を、フィスロが呆れたような目で見てきた。
「ほどほどにしないと、こうなるんです」
「あるあるだよねぇ。魔力の限界を知らなくて、こうやって倒れるシチュ」
「すみません、よく分からないです」
「そのセリフ、AIじゃないんだから」
どこか懐かしいと思ってしまった言葉だった。
結局、あのあと『目録の書(仮)』を3つ作った。
おかげで魔力を使いすぎて、このような状況に至る。
「あとは、名称ですね」
フィスロが、私の「AIじゃないんだから」というツッコミを無視して、真剣な表情になって言った。
勝手にスルーしてんじゃないよっ。
「これは、国宝並みのものです。国王陛下に申せば、勲章が得られます。そのために、名称を考えないと」
「うーん……。勲章はいらないや」
「え、なぜです?」
勲章を取るために作ったわけじゃない。
ただ単に、図書室を使いやすくしたかったから。
勲章をもらって図書室は有名になるよりは、気軽に使ってもらって図書室ライフを楽しんでもらいたい。
「スイ様らしいですね」
フィスロは、ゆったりと微笑んだ。
「それでは、『翠玉目録』なんていかがでしょう?」
「翠玉って、私の名前……」
忘れかけていた。
私の名前は、『本浦翠』だ。スイ、っていうのが浸透しすぎて、漢字を思い出せなくなるところだった。
「本に埋め込まれた宝石は、青く見えますが光によっては緑にも見えます。だから、『翠玉』です。いかがですか?」
「……うん。良いと思う」
きっと、フィスロは配慮してくれたのだろう。
名前を忘れないように。
唯一、日本との繋がりを維持しているものだから。
「フィスロは、良い奴ね」
「知ってます。というか、とっても素晴らしい人に向かって、『奴』は失礼ですよ」
「フィスロにはお似合いだよ」
「失礼な」
ありがとう、フィスロ。
作った甲斐があったよ。




