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蔵書検索システム

 フィスロは、物知りだった。

 選書のやり方などを知ってからは、次々と本を入れてくる。

 一応、私の目を通してからだけれど。


「本が多くなりましたね~」

「楽しい図書室になってきましたわ」


 今日も来てくれた、リアとセイラ。

 二人は、図書室をぐるっと見て周っていた。

 そんな二人と話そうとしたタイミングで、別の学生から話しかけられる。


「哲学書って、どこにあります?」

「あぁ、それはこっちです」


 案内し終えると、また別の学生が。


「聖女先生。この文学書なんですけど」

「ちょっと待ってね」


 記憶を探る。

 確か、その文学書はあの棚にあったはず……。


 と、そんなこんなで午前中が終わった。

 昼の鐘が鳴れば、昼食である。

 リンちゃんが持たせてくれた昼食は、フィスロと一緒に食べる。

 図書室の奥の部屋でフィスロが用意してくれているのを見ながら、私は思わず大声を上げた。


「うっわ! 大切なこと忘れてた!」

「な、なんです急に」


 急に大声を出したものだから、フィスロが驚いて飛び上がる。

 お茶を零すところでしたよ、そんな声を無視して、私は頭を抱えた。


「蔵書検索システムを考えてなかった!」

「なんですか、それ」


 並べられた、ほうれん草のキッシュ。

 それを取り分けながら、フィスロは首を傾げた。


「どの本がどの棚にあるか調べることができるシステムよ。大きな図書館だと、当たり前のように設置されているの」


 学校図書室では、設置されているところが少ない。

 規模が小さめだから、司書の先生や図書委員が対応するようになっているのだ。


 でも、魔法学園の図書室は別。

 私が日本にいた頃によく通っていた市立図書館と同じだけの規模が、魔法学園の図書室だ。

 これだけ大きければ、本がどの棚にあるのかなどを完璧には覚えられない。

 だから、蔵書検索システムが必要なのだ。


 しかし。


「情報機器がないっていうのが辛いなぁ」

「なんです? ジョウホウキキって」


 フィスロは、キッシュを頬張りながら問いかけてきた。

 優雅な手つきの割に、食べ方は可愛らしい。

 きっと、世の女の子たちを虜にしてきたんだろうな。


「情報にアクセスするための機器よ」

「はぁ」

「まぁ要するに、本のタイトルを打ち込めば、どの本棚にあるのかが分かるってことね」

「う、打ち込む……」


 ぽかんとするフィスロ。

 そうだよね、情報機器がないならキーボードで文字を打つってこともないだろうし。

 人間って、本当にすごいものを作り出したんだなぁ。


「……作るか」

「作れるんですか!?」

「コンピューターは作れないけどね。それらしいものは作れる気がする」


 なんたって、ファンタジー小説ヲタクなんですから!


「では、作る前に食べてください」

「んぐっ」

「スイ様は、本のことになると食事と取らなくなるので」


 当たりだけど、扱いが雑すぎ!





 蔵書検索システム。

 この広い図書室を管理するのだから、それなりのシステムが必要だ。


 まずは、パソコンの代わりになりそうなもの。

 ディスプレイは本でいいや、キーボードは文字を書き込む式で。

 

「真っ白いページの本を作るんですね。それなら、魔法紙を用意します。魔力が流れる、特別な紙ですよ」


 フィスロが胸を張って言ってくれたので、それをお願いする。

 ついでに製本の方も頼んでおいた。

 本人は涙目だったけど。


 次は、文字を書き込むもの。

 普通のペンより、羽根ペンの方がロマンがあるよね。

 万年筆みたいなインクはいらない。図書室にあった羽根ペンを、魔力を流せば文字を書けるように改造する。

 聖女の魔力はとっても便利。なんでも作れちゃうチートである。


「スイ様ぁ。これでいいですかぁ」


 製本を頑張ってくれていたフィスロが、フラフラと現れた。

 手には、重厚な紺色の表紙でできた本。分厚くて、ファンタジー小説に出てきそうなやつ。うん、完璧だね!


 じゃあ、最後の仕上げだ。


「この本に、すべての本を把握させよう」

「え、どうやって?」

「まぁ、任せなさい」


 魔力紙なら、特定の魔法をかけることができるはず。

 私は、本を持って図書室の中央に立つ。

 まるで『浄化』をやったあのときみたいに。


 本を床に置き、それに手をかざす。

 そして、自分の魔力を図書室全体に広げていった。

 空色の光が溢れだし、図書室の本たちを全て包み込んでいく。


『記憶』


 そう唱えれば、本たちが一斉に輝き始める。

 本棚ごとにタイトルの文字たちが浮かび上がり、魔力紙でできた本の中に吸い込まれていく。

 やがて。


「……これで、終わり」


 最後の本棚まで記憶させると、私は魔力を押さえた。

 その瞬間、体から力が一気に抜ける。


「うわ」

「スイ様!」


 それを支えてくれたのは、フィスロだった。


「魔力、使いすぎですよ」

「えへへ。でも、これで蔵書検索システム完成だよ」


 フィスロが製本してくれた、紺色の本。

 それは、空色の宝石を埋め込んだ立派な本となっていた。


「これ、スイ様の魔力が作った魔法石ですね」

「魔法石……」

「国宝並ですよ、これ」

「マジか」


 意図せず、なんだかすごいものを作っちゃったみたい。

 でも、これで本を探しやすくなったね。

 パソコンはないけど、これで探すことができる。


「名付けて、『目録の書』だよ!」

「少しダサくないですか?」

「うるさい!」


 蔵書検索システム、名前はともあれ完成だ!


「目録の書(仮)」については、次回詳しく書きます。今回、字数が多くなってしまったので笑

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