表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

2/69

魔法学園

「これはこれは、聖女様。よくいらしてくださいました」


 魔法学園に着くと、学園長が出迎えてくれた。

 若い女性で、敏腕教師らしい。

 茶髪のボブで、金色の瞳。猫みたいでかわいい。


「スイ様のような魔力をお持ちの方でしたら、試験なしで今すぐご入学いただけますよ」


 へぇ、魔力そんなにあるんだ。

 異世界召喚とかって、主人公がチート系だよね。

 私もその類に入るのかな。


 学園長に連れられて、学園内を見て回る。

 どこも白い大理石を基調としていて、窓枠などは全て木の茶色。

 なんだかすごくおしゃれで、全体がカフェみたいだった。


「どうです? 学園生活を一緒に送りませんか?」

「いや、もう学生は大丈夫です」


 起きて勉強、寝るまで勉強。

 もう勉強はしたくない。どうせだったら、優雅にゆっくり過ごしたい。


「そうだ」


 そうだそうだ、行きたいところがあったんだ。

 ここに来た目的をすっかり忘れるところだった。


「図書室ってあります?」




 学校図書室。

 本がたくさんあって、綺麗に並べられていて、もう最高の場所。

 私にとってのオアシスは、講義棟の角にあった。


「ここです」


 開いてくれた扉を通って、中に入る。

 天井まで届きそうな大きな本棚が、ずらりと並んでいる。壁一面も本棚で、ところどころに通路があるのが、本当に憧れの図書館みたいで心が躍る。


「うわ、最高! 何ここ、やばい!」


 夢にまで見た、天井までの本棚。

 自分の部屋に作ろうとして、お母さんに止められたっけ。


「スイ様は本がお好きなんですか?」

「はい、私の恋人です」

「……はぁ」


 こら、フィスロ。ため息吐かないの!

 

 授業時間中なのか、図書室には学生がいない。

 じゃあ、見たい放題なのでは!?


 最高だ。

 私は、とりあえず一番手前の本棚に近づいた。

 この本棚は、どんな本を置いてるんだろう。


『ルーア王国建国物語』

『最強聖女の優雅なる恋』

『近代魔術の変革』


「……なに、これ」


 歴史物語に、大衆文学。それに学問書。

 ジャンルも分類分けもされず、ただ色々な本が詰め込まれていた。


「それにしても、たくさん本がありますねぇ。さすが、魔法学園です」

「そうでしょう? 自慢の図書室なんです」


 これが?

 自慢の図書室?


「……やる」

「ん?」

「私、ここで働いてやる!」



 *



 日本の図書館・図書室には、分類がある。

 種類によって分けて排架場所を決めることで、目的の本を探しやすくなるのだ。

 それなのに、魔法学園の図書室にはそんな分類などなかった。


「お給料は出ませんよ?」

「本さえあれば大丈夫です」

「聖女としてのお役目は?」

「まぁ、そのときになったら呼んでください」


 この図書室を変えるためなら、私はなんでもします!


 学園長室。

 応接セットのソファに座った私を見て、フィスロはくすくすと笑った。


「こんな聖女様は初めてですね」

「学生になられた方もいましたけど、教師陣に入る方はいらっしゃらなかったですね」


 学園長も、なんだかおもしろそうに私を見ていた。

 いやいや、学生より楽しそうなものを見つけたのでね。

 何も整えられていない図書室を、自分の手で変革できるなんて最高じゃない!

 

 聖女は本来、王宮預かりらしい。

 だから、別の場所で働いたりするためには、国王の許可などがいるそうだ。


「数日お待ちいただきますが、大丈夫ですか?」

「じゃあ、待っている間は王宮図書館に連れて行ってください」


 時間は大切にしないとね!


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ