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聖女祭の準備

 朝、太陽と共に目が覚める。

 リンちゃんに手伝ってもらいながら、聖女服を着る。

 食堂で朝食を摂れば、身支度完了。

 魔法学園に出勤する時間だ。


「よし、今日も図書室に行くぞ!」

「あ、そのことなんですが」


 部屋を出て意気込んだとき、扉の外に待機していたフィスロが言った。

 手にした書類から顔を上げて、煌めくイケメンスマイルを向けてくる。


 うぎゃっ。太陽より眩しいよ!


 こんな笑顔を向けてくるときは、大抵嫌な予感がするものだ。

 まさか、今日は図書室に行けないとか……?


「今日は、王宮に行っていただきます。陛下がお呼びなので」


 やっぱりか!


「あぁ、私の図書室な一日がぁ……」

「仕方ないですよ。聖女の方が本業なんですから」

「副業だよ! 司書教諭の方が本業なの!」

「逆ですよ」


 いやだぁぁ!




 王宮は、聖女殿がある敷地内にある。

 国の権威を誇る象徴的建物として、最高級に煌びやかで豪華なところ。

 外観も内装も、本当に豪奢な場所だ。


 通されたのは、謁見の間。

 国王陛下と対面するための大広間だ。

 

「聖女よ、急に呼び出して悪かったな」


 えぇ、そりゃあ悪うございます。

 心の内は不信感でいっぱいだけど、それを表に出すことはできない。

 私は、本心を隠すように満面の笑みを貼り付けた。

 隣で笑っている失礼な聖女補佐官がいたから、とりあえず足を思いっきり踏んでやった。


「いえ。何か御用でしょうか」


 御用がなければ、さっさと図書室に行きたいんですが!?

 

 でもまぁ、仕方ないところもある。

 私はもともと、異界の聖女として召喚された身。

 本来なら、国のためにその力を使っていたところ。

 平和だから力を使う場面がないってだけなのだ。


「実は、今朝決まったことなんだがな」


 国王は、すらりと身長の高いイケオジだ。

 年齢は……、フィスロくらいの息子がいるお父さんくらいかな。

 イケメンだから歳がまったく分からない。


「三日後、聖女祭を行うことになった」

「せ、聖女祭……?」

「今代の聖女をお披露目するための日だ。国民にも姿を見せ、聖女の存在を明らかにすることで人々の安寧に繋がる。頼んだぞ」


 頼んだぞ、って!

 私には司書教諭の仕事があるんですが!?


「フィスロ。よろしい頼む」

「はい」


 フィスロ!

 簡単に頷かないで!





「私は司書教諭なの……。聖女じゃないんだから……っ」

「諦めてください。聖女なんですから」

「フィスロ、辛辣すぎ」


 国王との謁見が終わった後。

 聖女祭の細やかなスケジュールやら打ち合わせやらで、時間がどんどん失われていった。

 残るは、当日に着る衣装のサイズ合わせである。

 聖女殿の部屋に来てくれるから待っていろと、缶詰状態なのだ。


「本が読みたぁい~」

「図書室が整備し終わったら、書斎でも作ります?」

「えっ、いいの!?」

「スイ様の建物ですし。改造とかは基本自由ですよ、羽目を外さなければ。羽目を外さなければです」

「二度も言わなくても分かったよ」


 なるほどね。

 なら、建物まるまる図書館にしてもいいのでは?


「だから、そう言うのがダメなんですっ」

「聞こえてたか」


 心の声が漏れていたらしい。

 ちぇ、せっかく良い機会だと思ったのに。


 そのとき、コンコンコン。

 部屋の扉がノックされた。


「スイ様。衣装の業者が参りました」


 リンちゃんが声をかけてくれた。

 フィスロとやり合っていた体勢をもとに戻し、ソファに座り直す。

 どうぞ、と言えば業者の人たちが中に入ってきた。


「聖女先生~!」

「お邪魔します!」

「んえ、なんで!?」


 大人たちが入ってきた、その後ろ。

 聞き慣れた声が響き渡った。


「リアちゃんとセイラちゃん!」


 なんで、二人がここに?


「ドレスはセイラの実家のリゼ家! 国一番のリゼ・ブランドを立ち上げたんだよ~!」

「アクセサリーはリアの実家のドール家です。老舗で最高品種のブランドですわ」


 つまり、セイラの家はドレスブランド、リアの家はアクセサリーブランドってことね。

 そこの業者さん方が来てくれたから、二人がいるのかぁ。


「聖女様、初めまして。リゼ家当主でございます。娘がお世話になっております」

「初めまして。ドール家当主です。こんな娘ですが、これからもよろしくお願いいたします」


 お父様方が丁寧に挨拶してくれる。

 こちらこそ、よろしくお願いします!


 リゼさんとドールさんが持ってきてくれたトランクは、服とアクセサリーでいっぱい!

 部屋の中が一気に異空間みたいになる。

 あちこちにドレスが列を成し、アクセサリーも所狭しと並ぶ。

 その煌びやかさに、私の方が負けそうになる。

 こんなキラキラしたものに囲まれたのって、成人式以来だと思ったくらい。


「それで? 聖女先生」


 ドレスやアクセサリーに釘付けになっていると、セイラがこそっと話しかけてきた。


「ドレスは白を基調としたシルクを使いますが、アクセサリーは色を選べますの。エメラルドにします?」

「エメラルド?」

「いいね、エメラルド~! そうしましょ!」


 なんで、エメラルド?

 そう問おうとして、ハッとした。

 私のドレスを見ながら発注作業をしているフィスロ。

 そのフィスロの瞳は、深くて神秘的な森の色──。


「そんな訳ないじゃない!」


 フィスロの瞳の色にするの!?

 それって、婚約者とかが色を揃えるときにやるやつじゃん!

 そういう知識はライトノベルで培ってるんだから!


「なぁんだ、残念」

「またの機会だね~」

「絶対にしないから!」


 ううう。

 私より年下のはずなのに。

 こんなにいじられるなんて思ってもみなかったよ。


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