召喚
司書教諭の免許を取った。
春から高校の国語教師として働きながら、図書室に入り浸る予定なのだ。
「ようこそ、聖女様! あなたを待ち侘びておりました!」
「なんでこうなった!?」
人生計画が狂った瞬間だった。
ルーア王国では、異世界から聖女を召喚して、国を守ってもらうらしい。
そのしきたりに則って召喚されたのが、私──本浦翠──だった。
「本が大好きで、本に関わる仕事に就きたくて。司書教諭になるために勉強して、国語教師の免許も取って順風満帆だったのに。なんで、その仕事に就く前にこうなるのよ」
「はいはい、状況説明ありがとうございます」
「簡単に終わらせないでよ」
ここは、王宮の聖女殿。
聖女のために作られた建物で、歴代の聖女はここで暮らすらしい。
ちなみに、もといた世界には戻れないという。
つまり。
「あぁぁ、司書教諭がぁ」
「その、シショキョウユとやらは知りませんが。とりあえず、聖女の仕事について説明してもいいですか」
この説明をしてくれている人は、聖女の補佐官らしい。
名前はフィスロ。
私の扱いは雑なのに、超イケメンなのが恨めしい。
「どうでもよくない。それで、聖女の仕事って?」
聖女。
本や漫画で見る、あの聖女のことだよね。
唯一使える光属性の魔法の持ち主だったり、治癒魔法に長けていたり。
可愛い女の子たちが、イケメン王子たちに守られながら頑張る物語も多い。
私は、そんな聖女が必要とされる国に召喚された日本人だ。
せっかく夢の仕事に就けそうだったのに、なんだか悔しい。
まぁ、大好きな本の世界のような体験ができるならいいかな。
「主に、浄化と祈りですね」
「なるほど。どれくらいの頻度で?」
「そのときによりますが。今は……そうですね」
フィスロは、にっこりと笑った。
「平和なので、特に何も大丈夫です」
「は?」
「時と場合によりますので。必要なときがいつか来ますよ」
「つまり?」
「今、仕事はありません」
はぁぁぁ!?
*
そう。人生は順風満帆だったのだ。
念願の司書教諭の免許を取った。図書館司書もよかったんだけど、教育は施せないと聞いて辞めた。
読書教育こそ、楽しいものはない!
だから国語教師の免許も取って、本を愛す人生を送ろうと思っていたのだ。
それなのに。
「なんのための聖女よ」
「平和っていいですよね」
「私の心は平和じゃない」
煌びやかな室内。
聖女が祈るための祭壇付き。
そんなオプションはいらない。
本が欲しい。本棚が欲しい。
「ねぇ。なにもすることがないなら、私は何をすればいい?」
「そうですねぇ。過去には学園に入った聖女様もいましたし、幸せな家庭生活を築いた方もいましたね」
「学園ねぇ」
「入ります?」
「入らない」
もう学生はやらなくていいや。
ようやく大学を卒業したんだから。
「魔法学園もありますよ?」
……なにそれ。
それを早く言ってよ。
「魔法大好き。行こう!」
「スイ様、行動がお早いですね」
フィスロが笑った。
ちょっとときめいちゃったのは、秘密だ。