【プロットタイプ】テセウスの船
注意事項1
起承転結はありません。
短編詐欺に思われたら申し訳御座いません。
注意事項2
図々しいと思われるかも知れませんが、鏡花は一度入れ人格、作った人格を、早々捨てませんよ。
其れが恋であっても。
テセウスの船。ある物体の構成要素を全て置き換えても、その物体と同一であるかという、哲学的命題。其れから考えると、果たして鏡花の心情は同一と言えるだろうか?
ある日の事。互いに籍を入れて、生活が落ち着いてからの事。鏡花はなんの気無しにこんな問いを投げかけた。
「うーん……瑠衣たんになら言っても良いかなー。私一時期、女の子を好きだった事があって」
この場合、二つの事象が浮かぶ。一つは本気で、心から、その相手の事を好きだった場合。もう一つは鏡花が同性愛者の気持ちを知る為に好きだった場合。
其れによって描ける言葉が変わって来るので、俺は顔を上げて黙り込む。だがやはり、うじうじと考え続けるのは苦手なので、そのまま問いかける事にした。
「其れは本心から? それとも演技として?」
「最初は同性愛者の気持ちを知る為に始めたの。『なんかこの子良いな』、『好きだな』っていう友愛を必死に分析して、恋愛に移行していった。
『何時も優しくしてくれる』、『甘やかしてくれる』、其れは友愛ではなくて? 男性にされる様な胸の煌めきがあるの? 薄ぼんやり。
じゃあ其れを明確に。吊り橋効果を使って、『触れたい』、『離したくない』に発展させる。
……丁度、君にしたようにね」
高校時代のある出来事を思い起こしたのか、鏡花は何となく暗い顔になる。何。大した出来事ではない。ただの狂言だ。
「今でもその子から連絡受けると、胸がトキメクよ。でもキスしたいとか、肉体的関係になりたいとは思わない。其れが友愛なのか、恋愛なのか、私には分からない」
俺と鏡花は利害と打算に裏打ちされた結婚である。それ故に全くと言って良い程『恋』という関係がない。
勿論、『創作の為』に恋心を学ぶ必要があるのなら、高校の時の様な関係にもなるだろう。けれども其れを除けば、義務的な関係だ。
「……上手く説明出来る気がしないが、お前の中の駒の一人でも胸に輝きを覚えたのならば、其れは既に恋なんじゃないか」
友愛から恋愛に変化した時、それを友愛と定義する者はいないだろう。その明確な定義付けはないが、完全に移行したと言えるなら。
「浮気って怒らない? 私はずる賢い女の子だから、瑠衣たんを『男性』として好きだった人格も残してあるよ。今ちょっと出かけてるけど」
「……全然。そもそも利害と打算の恋のない結婚だろうが。……お前が俺の事を好きに使う様に、お前も好きに使え」
生涯掛けて、俺の恋人は創作だ。其れに取って代わるものなどありはしない。
瑠衣が行ったのは論点ずらしです。
誤魔化しながら、命題を破綻させる、一番やっちゃいけない手法。
でも其れをしたのは多分、分かってなかったから。
『恋』という感情を理解出来てなかったから、誤魔化したのかと思います。
という訳で、『テセウスの船』。
長旅で少しづつボロくなった船を、その場その場でちまちま直していった。
果たして、元の船と同じと言えるのか?
という哲学の問題。
私的には何を根幹に置くか。という事がテーマになりそうな。
船の外観に重きを置いていて、外観を同じに変えられたら『同じ船!!』となりそうだし。
性能が好きで、直される途中でアップグレード(古くなった舵を新調して回りやすくなったレベル)してしまったのなら『違う船!!』となりそうだし。
この問い掛け苦手なんですよ。
何故ものにしたよ。人にしてよ(⩌⍘⩌)
これを鏡花が行った演技に準えて子のタイトル。
最初は友愛です。『傍にいて安心する』『皆と一緒にどっか行きたい』ぐらいのもの。
でも其れだと同性愛者の気持ちがわからないので、少しづつ『恋』を足します。
『あ、これドキドキした』、『二人だけで遊びたい』そうやって恋愛感情に移行したんです。
でも性的接触は望まない。
さて、この状態で『恋愛』と言えるのか? それとも『友愛』と定義するのか。という話。
ある意味、鏡花っぽい命題です。
元の存在を沢山の駒で補ってしまったのが今の鏡花なので。
これに対して瑠衣が行った判断。
『友愛とか恋愛とか知らん(命題破綻)。
でもこの命題において、駒の一つが本体を担っているなら、それは本体と定義していいんじゃない?
自分の事好きで、女の子のこと忘れられないならそれでも良いよ』
という回答です。
悩み、もがき、それでも前に進む人間大好きな瑠衣らしい一言。
多分、『鏡花が鏡花である事』を認められたかったが故のこの質問。
どれだけ変わっても、根幹を担う部分が失われなければ、私と定義して。というような。