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莉玖ちゃんは3丁目見廻り隊  作者: オコゼのシィバくん
intermission 01
4/9

ブッダポーション/甘味狂い

第4話となります。

お読みいただければ嬉しい限りです。

冒険にお馴染みの便利アイテムの回です。

4月になりました。春休みも終盤で、そろそろ始業日なのでございますが、その前に大切な行事がございます。


そう。灌仏会(はなまつり)です。4月8日はお釈迦様の誕生日。12月25日とならぶ聖人の誕生祭でございます。私はこの灌仏会が大好きです。いつの頃からなのかは存じ上げませんが、花御堂のみならず、お寺全体が花で飾られるようになり、テーマパークのようになっているのです。隣町にはお寺さんがたくさんある寺町があり、そこでは道通り全体が花で飾られ(散華といって道に花を撒くことになぞらえたそうです)、まるで自分がお祝いされているのではないかという気分になれる程でした。

小さい頃は(今も小さいですが)、着物を着て通りを練り歩いたりもしておりましたし、とても楽しい行事という印象なのです。


しかして、その本質は、花御堂の”甘茶掛け”です。小学校1年生の時に学校で習ったから皆さんご存知だと思われますが、この”甘茶”は、お寺で働かれていらっしゃるお坊さんたちが、この日のために育てたアマチャのお香茶です。そこに”祈り手”の才を持ったお坊さんが祈りを捧げることで、清めの効果を持った”ブッダポーション”へと変化するのだそうです。お釈迦様の誕生を祝った龍の故事からなぞらえた宗教呪物の1つなのだそうです(ですので、同じ”龍”の呼称を持つ河童の成長体は蛇蝎(だかつ)の如くお坊さん達から嫌われているのだそうです)。

この”ブッダポーション”。まじないとしての効果して”邪払い”や”治癒力向上”があるため、怪異に対して投げても良し、自分の体調にあわせて飲んでも良しの”神便鬼毒酒(じんべんきどくしゅ)”なのです(本当の神便鬼毒酒の方は知りません、未成年です故)。


それを飲むことができるのです。無料(ただ)で。とっても甘い紅茶のような御味。小さかった私はこの美味なる飲み物を「奇跡の!産物よ!おお、そわか!そわか!」と吠えながら飲んでいたらしいのです。今思えば、シュガーハイ状態だったのだと思います。家族、お坊さん含め、私に何か憑いたのではないかと、心配されました。それから私は1杯しか飲ませてもらえなくなったのでございました。


さて。私の黒歴史は横に置いておいてですね。

今年もやってきたのです。灌仏会が。1年に1度だけの機会なので、何としてもいただかねばなりません。多めにいただけるのでしたらば、それに越したことはございません。


欲望に打ち勝ち、正体を曝さないように明日に臨むため、私はベッドの上で精神統一をしています。


なにやら鏡の中からヤギおじさんが呆れた顔で、かつ白い目を向けておりますが、知ったことではございません。自分の誕生日の如く、お釈迦様の誕生をお祝いさせていただきますわ。


▲▽▲▽▲


待ちに待った4月8日は快晴でございました。

両親と共に訪れたお寺は、それはそれは華やかで、多くの方が来られて賑わいをみせておりました。カメラで写真を撮られている方も多く見受けられました。

そんな中、自制心で己の欲望を抑え、甘茶掛けを行いました。人様の写真の中で永遠に恥ずかしい自分が残り続けることを考えれば、いくらでも自制心が効くというものです。

と言いますでしょうか、初めて飲んだ時以降、正確には1杯しかもらえないことが決まって以降は、そのような恥ずかしいことはしておりません。マーラに負けぬ強い心を、私は持つことが出来たのです。

もう間もなく甘茶掛け、極上の甘味をいただくことが叶うわけです。


「私は勝ちましたわ」

私の呟きを両親が拾います。

「あなたは、本当に甘味が関わると気持ち悪くなるわね」「親として心配になるよ」

おかしなことを申します。これには反論せざるを得ません。

「はて。節制しておりますし、特段後ろ指をさされることはしておりません。甘味に誠実に生きておりますわ。天の授け物をただただ受け取る、この人間らしさを誇りこそすれ恥ではありません。罪悪感を感じ、行動を隠すことこそが恥なのです。如何でしょう?」

「その早口だよ」「ヤギおじさんは何て言ってた?」

「さぁ?3年前は何かおっしゃってましたが、2年前からは何もおっしゃられませんわ。流石、友です。為すべきことを為せ、と見守って下さっているのですわ」

「物が言えなくなっているのよ」

「感無量、ということ、ですわね」

「違うよ、莉玖」


いただきました”ブッダポーション”はやはり天上の味でした。

そして、初めて聞いたのですが、この”ブッダポーション”は、寺院に保存されており、必要時に邪払いのまじないとして放出されるそうなのです。飲み物としては保存が効かないので使用が出来ないとのこと。保存されていると聞いた時の天に上がる気持ちから、急降下させられた私の心の痛みは、どこにぶつけたら良いのでしょう。


仕方が無いので、山門のところにいた小さな白い象さんに愚痴りました。去年もいらっしゃいましたが、このお寺にお住みの聖獣さんなのでしょうか?


「去年も酷かったけど、今年は磨きが掛かっている気持ちの悪さだね。来年が楽しみだ」と酷いことを言われました。

ヤギおじさんと象さん。動物さんたちの私への当たりが強いです。何故なのでしょう。ちゃんと取り繕えているはずなのです。10歳の精神力としては充分なはずです。

甘露の味を想いながら、今日は不貞寝を決め込みます。みんなバーカ。


▲▽▲▽▲


莉玖 10歳


ギフト:野伏の感覚 LV 1

*敵意の方向や距離がだいたいわかる


装備品:悪魔の猟銃 LV 1

*単発装填式ボルトアクション式のライフル

**狙ったものに当てやすいが、1日に6発しか撃てない

この作品の甘茶は、1年間健康面での微弱バフがかかるリジェネポーションとして扱われております。ブッダポーションと言うと、ニンジャが出てきて殺す作品みたいな言い回しですが、これはリスペクトです。いいね?


次のお話から莉玖ちゃんの冒険が始まります。

良かったらお読みください。

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