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莉玖ちゃんは3丁目見廻り隊  作者: オコゼのシィバくん
出撃準備
2/9

魔弾の試し撃ち/河童①

2話目となります。

お時間がありましたら、御笑読下さい。

いわゆる、主人公がギルドに加入したり、装備をお披露目したりする回です。

父に連れられ、猟友軍の支部を訪れました。

この猟友軍という組織は、秋田県の白神山地近くを本拠地とした”狩人”の才を持った方々の組織だったのだそうです。高位の狩人さんが、各地の怪物の討伐、捕獲を目的に組織を構成したのが猟友軍の始まりだそうで、現在は全国各地に支部があると、戴いたパンフレットに書いてありました(元々は、”狩人”の才を氏神様が女性に与えなかったことから、女性の猟友軍登録者はいなかったそうです)。

時代の流れなのか、徐々に女性の狩人さんも出てきて、また時折、ボウガンや銃の使用資格の取得のために”狩人”の才以外の方でも構成員登録をされるそうで、私もその類だと教えていただきました。


「こりゃあだいぶ若い子が来たねぇ」と猟友軍の受付のおじいさんから言われました。会釈をします。

「いただいた”才”もですが、結んだ”縁”が銃にまつわるものでして」と父が返します。

申請書を確認するおじいさんの口から「”野伏”で銃持ち。ふぅむ。良いセコさんにも、良いブッパさんになりそうじゃなぁ、ははは」と笑い声とともに返されたのでした。


「ほんなら、まずは撃てるかの確認じゃな」と言われ、初めて銃を撃ちました。こんなすぐに銃を撃つことになるとは思っていなかったので実感がございませんでしたが、撃ってみると自身の中にたくさんの感覚が押し寄せてきて、これが現実なのだと実感させられます。

引き金を引いた後の衝撃。音も反動も凄まじく、まるで近くに落ちた雷のようでございました。撃った後、腕も肩もジンジンしておりまして、イヤーマフをつけていたにも関わらず、キィーンと遠鳴りが続き、しばらく目がチカチカしていたのでした。

そんな反動でふらふらだった私が、正気を取り戻した後、狙った的を見たのですが、的には擦りもせず、てんで見当違いな場所に当たっておりました。くたびれもうけの7文字が頭に浮かびました。


監督をされていたおじいさんは「お嬢ちゃんにはちぃと難しいかのぅ、こりゃ」と頭をかかれていらっしゃる始末。中断の空気が流れました。


しかし、私にはヤギおじさんからいただいた銃がございます。普通の銃は私には大き過ぎましたが、ヤギおじさんの銃は、私には丁度良いサイズです。そちらを見せた後、「よぉし、ほんならお嬢ちゃんの持ちもんでやってごらんな」と、再チャレンジさせていただけることになりました。

しかしながら問題がございます。

「先に申しておきますと、ヤギおじさんからいただいた銃の弾は7()()()()()()()()()()。そして7発目のこの弾は使()()()()()()()()と仰せつかっています」

そうなのです。ヤギおじさんからもらった銃は、単発装填。1発ずつ込めなくてはいけないものなのですが、何故か”1日で6発までしか撃ってはいけない”条件があるのです。理由はわかりませんが、悪魔の銃なので、何か呪いとか制限とかあるのでしょう(寿命を犠牲に相手のお名前が分かる、みたいなどう見ても割に合わない呪いもあるようですし、色々あるのでしょう)。

因みに撃ったらどうなるか、は聞いておりません。怖いので。


「そうかぁ。ほんならしょうがないのぅ。まずは1発撃ってみなさい」

ささっと準備を始めます。

ゴーグルをつけ、イヤーマフを当てました。しっかりと肩をひき、脇をしめて狙いを定めます。

そして息を止めて


パァーンッ


音こそ凄ましいものでしたが、反動はそれほどではなく、痺れやちかちかも本物の銃よりずっと軽いものでした。

そしてなによりも

「ほう。お嬢ちゃん、大したものだ。真ん中少し下に当たっとる」

私の放った弾はしっかりと的をとらえていましたのでした。


休みながら行った3時間の射撃の教習。1日で使える全6発を使い切って練習を行いました。その全てが的をとらえ、最後の1発はド真ん中を撃ち抜くことができたのでした。

「こらぁ、銃か弾にまじないがついておるな。おじちゃんが欲しいくらいじゃ」

「あげません。これは私のヤギおじさんからの贈り物ですから」

「ははは、とらんよ、とらん。大事にしなさい」

そんなやり取りの後、おじいさんから本を渡されました。

「ええかい。この本をしっかり読み込みなさい。分からない漢字や文章はお父さんやお母さん、後は”縁の友達”に聞いて理解しなさい。書いてあることが理解出来たら、お父さんに言って、もう一度ここに来なさい。知能試験を行うからね」


▲▽▲▽▲


その後、私と父はおじいさんと一緒に街の中へ移動しました。

そこは学校から立ち寄り禁止になっている公園の跡地で、大きな池があるところでした。


「ここはな、”河童池”って言われとる。お嬢ちゃんは河童、見たことあっかい?」

「何度かクリークのところで見かけて、大人の人を呼んだことがあります」


”河童”。日常的に私たちが遭遇しうる怪物です。

私がいただいた”野伏の才”の性質に気づいたのは、この河童のおかげとも言えます。ある日、たまたま河童が近くにいるとゾワゾワァと鳥肌がたったのに気づきました。そして、河童が近づくにつれ、動悸を出現したのでした。ひょっとすると怪物の距離で反応が変わるのではないか、と思ったのが始まりです。

そして、河童以外の怪異でも同様でしたが、遠ざかっていくと消えていき、なんとなくどっちにいるのかもわかるようになったのは、何度も河童を見つけて確かめたからなのでした。


「そう。それで良い。河童はな、川とか池とか沼にいる水の怪異でな。そこの立て看板の絵みたいにな、長い腕で水の中に他の生き物を引きずり込んで、臓物(はらわた)を食っちまうんだ。酔っ払いや力の弱い子どもやおじちゃんみたいな年寄り、抵抗できねぇ人なんかが、年に何人か食われとる。近寄っちゃいけねぇし、なめてかかっちゃいけねぇ。雨の時なんかは道にも上がるしな」

そんな怖いことを言われました。河童って道に出てくることがあるのですね。初めて知りました。


そして、おじさんが指で示します。

「この公園はな、山からの湧き水が流れて出来た池がウリじゃったんじゃが、泥やら枝やら落ち葉やら、そういったものが溜まってな。()()()()()()()()()()()()()()。特にここは溜まりやすい場所でなぁ、河童が生まれやすくて、それで立ち入り禁止になっちまったんだ。ほら、あそこ」


その指先の方角、私が敵意を感じる方向には1匹の河童がいたのでした。


「今から、おじちゃんがアレを撃つからよーく見ておくんだよ」

そういっておじいさんは背負っていた袋から猟銃を抜いたのでした。


▲▽▲▽▲


莉玖 10歳


ギフト:野伏の感覚 LV 1

*敵意の方向や距離がだいたいわかる

装備品:悪魔の猟銃 LV 1

*単発装填式ボルトアクション式のライフル

**狙ったものに当てやすいが、1日に6発しか撃てない

敵性存在、怪異”河童”の登場です。日本の昔話に出てくる堕ちた水神の一種ですが、独自の文化を持っていたり、大陸を渡ってきていたりなど、言い伝えが多種多様で大変興味深い存在だと思っています。

次の話で更に掘り下げますので、お読みいただければ嬉しい限りです。

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