彼女がタバコの代わりに"おっぱい"を吸わせてくれる話
突然だが、俺はヘビースモーカーだ。
詳細は省くが、タバコを吸えるようになった二十歳の頃からほとんど毎日、一箱分前後のタバコを吸ってきた。
現在二十四歳。
新卒で入社した会社で働き始めて二年ほど経過したが、タバコの本数は変わっていなかった。
多分、俺の肺はかなり黒ずんでいることだろう。
将来は癌になってそのままぽっくり逝くのかねぇ。
そんなことを考えながら今日も今日とて住んでいるアパートのベランダにてタバコを吸う。
カラカラ、と音を立てて背後の網戸が開かれた。
「涼くん、ちょっといいかな?」
「ん、どうした?」
部屋の中からどこか気まずそうな顔をした恋人が出てきた。
俺は一旦タバコを吸うのをやめ、彼女の方に振り返る。
「えっと、その、ね……?」
「……?」
彼女はモゴモゴと口を動かすが、こちらに伝えたいことがなかなか言葉へと変わらない。
よほど言うのが躊躇われることなんだろうか。
…………もしかして別れ話とか。
だとしたら俺は今すぐこのベランダから身を投げ出してしまうかもしれない。
二階だから軽い骨折くらいしかしないだろうけど。
なんて、俺がくだらないことを考えているうちに決心が固まったのか、彼女が俺の顔をまっすぐ見て、でもどこか申し訳なさそうに口を開いた。
「その、私、喘息になっちゃったみたいで……」
「喘息?」
喘息とは、アレだろうか。
咳がやたらと出るようになって呼吸がしづらくなったり、呼吸の時に変な音が出るようになったりするアレ。
「なんで急に?今まで喘息になるようなものってあったっけ?」
「……えっと、多分、涼くんのタバコが原因っぽくて……」
「……」
「ほら、私たちって大学生の頃から付き合ってるでしょ?よくお互いの家に泊まってたりしてたし。同棲始めてからはずっと一緒なわけだから……多分、それが原因だろうって、お医者さんが……」
俺はタバコをやめた。
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「涼くん、大丈夫?」
「……」
「涼くん?」
「…………ん、ヘぁ?俺はたいへん健康ですぅ……?」
「大丈夫じゃないね……」
タバコをやめて一週間。
しんどい。
時々、今みたいに反応が遅れることがあるし、常時頭に靄がかかったように思考がうまく定まらない。
ヤニカスって、ヤニカスやってる時よりもやめはじめた時の方がやばいってことを身をもって実感した。
彼女はそんな俺を隣で心配そうに見つめてくる。
あぁ、彼女の存在があるだけで俺はがんばれる。
タバコなんて……タバコなんて…………吸いてぇ。
あぁ、だめだ。
例え彼女のためだとしても今の俺は無性にタバコが吸いたい。
どうにかしないと俺はまた彼女に迷惑を……。
「ねぇ、涼くん」
「ヘぁ……?」
「ごめんね。私のせいでタバコ、やめさせちゃって……。辛い、よね?」
「……まぁ、それなりには」
「だよね……だから、ね。涼くんにタバコをやめさせちゃったお詫び、というか。タバコの代わりになるかはわからないんだけど――
――――おっぱい、吸う?」
何を言い出しちゃってるんだろう、この娘は。
――おっぱい、吸う?
タバコの代わりに、おっぱいを?
……常識に考えてあり得ないだろう。
俺をどこの変態貴族だと思っているんだ。
「涼くん、私のおっぱい好きでしょ?」
そう言って彼女が服をたくし上げる。
ぶるんっ、と大きく揺れながら、つい先日Gカップになったと言っていた巨乳が下着に包まれた状態で現れた。
俺の視線は自然とそこに吸い寄せられた。
俺は知っている。
彼女の胸は、服の外に出ている肌と同じく色白で美しいと言うことを。
俺は知っている。
彼女の胸は、程よいハリと弾力を持ち合わせ揉み心地最高であると言うことを。
俺は知っている。
彼女の胸は、幸せの重量を俺へと伝えてくれると言うことを。
俺は知っている。
彼女の胸は、正確にはその先端は、恥ずかしがり屋であり、普段は内側へとその姿を隠していると言うことを。
靄のかかったような思考の中、俺の顔は自然と彼女の胸へと近づいていく。
彼女は、そんな俺を見てフロントホックを外した。
窮屈な下着から解放された大きな胸が、弾む。
今日は、普段は恥ずかしがり屋である先端がすでに顔を出していた。
俺は、ほとんど無意識のままにそこへと顔を押し付けた。
「あんっ♡」
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「ご馳走様」
「はい、お粗末さまでした」
タバコをやめて十日。
つい三日ほど前に比べてタバコを吸いたいという欲求は多少落ち着いた、気がする。
そう、気がするだけだ。
依然としてタバコは吸いたいと思うし、体がニコチンを求めている。
現に夕食を食べ終えた現在、つい先ほどよりもタバコを吸いたいと言う欲求が強くなっていた。
タバコをやめる前、食後は必ず二本のタバコを吸っていた。
もはやタバコを吸うことはルーティーンとなっていたのだ。
だからタバコを吸えないとなるとなんとなく落ち着かない。
無意識のうちに足をゆすってしまうくらいには。
「落ち着かない?」
「ん?まぁな。食後はいつも吸ってたからな」
「そっか…………おっぱい、吸う?」
「……」
三日前、はっきりとしない思考のまま彼女のおっぱいを吸って以来、俺がタバコを求めると彼女がこうして「おっぱい、吸う?」と聞いてくるようになった。
彼女のおっぱいを吸ってふと我に帰った時に、成人男性として何か大切なものをなくしたような気がした。
だから、翌日の彼女の問いかけに俺は断りの言葉を返した。
だが、「そっか……うん、普通に考えて、そうだよね……」という寂しそうな言葉と表情に俺は陥落した。
はい。家にいる時はことあるごとに彼女のおっぱいを吸っています。
現に今も――
「……吸う」
「はぁい、どうぞぉ♡」
嬉しそうに微笑む彼女に断りの言葉を返すなんて、俺にはできない。
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「ふふっ。涼くん、赤ちゃんみたいで可愛い♡」
「……そっすか」
視界のほとんどを彼女のおっぱいに埋められる中、彼女からそんな言葉をかけられた。
同時に優しい手つきで頭を撫でられる。
あぁ、だめになりそう。
こんなこと続けていたらダメ人間になりそうだ。
でも、もうなんか、恥とか外聞とかそう言う部分に関する感性が麻痺してきた。
やめた方がいい、とかいう思考自体がなかなか湧いてこない。
……おっぱいに溺れてるなぁ。
「このままずぅっと、タバコの代わりに私のおっぱいを吸っててもいいんだよ?」
「いや、流石にそれは……」
「嫌?」
「……嫌では、ないけど……」
「ふふっ。なら、いいよね。あ、でもそれだと、いつか本当の赤ちゃんと取り合いになっちゃうね♡」
「……」
流石に危機を覚えた。
主に人間、と言うか一人の大人としての尊厳に。
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「あれ、お前タバコやめたの?最近吸うとこ見ないけど」
タバコをやめて一ヶ月が経った。
つまりは会社の喫煙所に行かなくなって一ヶ月が経ったと言うことでもあり、同期からそんな問いかけをされた。
「ん、そうだよ。やめた」
「へぇ、お前確かヘビースモーカーだっただろ?よくやめられたな」
「苦労したよ。やめて最初の頃はすげぇ辛かったからな」
「やっぱりタバコやめるのって辛いのかぁ。俺もさぁ、最近彼女からタバコやめろって言われてるんだけど、なかなか難しくてなぁ。なんかコツとかあったら教えてくれよ」
「コツ、ねぇ……」
俺の中で、いつの間にかタバコの立ち位置に居座っていた存在を思い浮かべる。
流石に、他人に言うわけにもいかない。
「まぁ、タバコの代わりになるもんを見つける、ってのが一番だと思うぞ」
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「ただいま」
「おかえり。もうご飯できてるけど、先に――
――――おっぱい、吸う?」
<主人公> 涼 年齢二十四歳
常にダウナーな雰囲気を纏っていてやる気はないが、与えられた仕事はきっちりとこなす人間。
彼女に弱い。
<ヒロイン> 名称未定 年齢二十三歳
主人公の後輩で大学時代から交際をしている。
ゆるふわな雰囲気を纏ういわゆるお姉さん系。
主人公のことが大好きで、主人公のためなら割となんでもやる。
最近胸のサイズがGになったが、今もじわじわと成長中。個人的にJくらいまで育ってほしい。
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