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第五十一話 やっと正式に婚約

「あの、俺、先生の子供を欲しいなーって思うんですけど、良いんですか?」

「さあ。考えたことないですね」

 あれ? 子供が欲しいみたいな事は言ってなかったかな?

 先生みたいな優秀な女性が子供を残さないのはもったいないというか……。

 まあ、俺みたいなのが父親だと、どうなるかはわからないけど、京子先生の子供なら可愛い子になるのは間違いないだろ。


「む……また、変な事、考えてますね」

「え!? 考えてないですよ。ただ、京子先生の子供なら、可愛い子になるのになーって、思って」

 素直にそう答えたが、これって変な事かな?

 別に普通の考えだと思うけど、自分で子供産まない人が産婦人科の医者ってのは……いや、男の産婦人科医もいるから関係ないか。 


「私の子供なら、優秀になるに違いないから産まないともったいないか、考えていましたね?」 

「い、いえ……」

「そういう理由では産みたくないんです。何故、医者の子供なら、優秀になると安易に考えられるのでしょうか? もし、そう期待して勉強が苦手な子になったら、英輔さんはその子にどう接するのです? ちゃんと愛せるんですか?」

「それは……!」

 意外な事を言ってきたので驚いたが、言われてみたらその通りだ。

 女医の子供なら、頭が良い子になるに違いないから、産まないのはもったいないなんて考えは京子先生に失礼だし、何より生まれてくる子供も、生前からそんな期待されたら、プレッシャーが相当な物になるだろう。


 ちょっと軽率な考えだったと反省したが、京子先生もしっかりと考えているんだなと、見直してしまった。

「すみません、ちょっとだけ思っていました。先生の子供なら、頭がいい子になるんだろうなって……でも、そんな決めつけは良くないですね」

「本当ですよ、もう。私、そういう子を実際に見て来てるんです。だから、私の子だからとか、同じようになるとか思わないでください」

「でしたね。でも、俺は京子先生の子供居たらいいなって思っていますよ。先生は俺の子、嫌なんですか?」

「それは……あ、もう……抱き付きながら言わないでください」


 先生の事を後ろからハグしながら、そう言うと、京子先生もちょっと恥ずかしそうにしながらも俺に顔を預けてくる。

 こういう事をされるのが好きなのかな……俺に甘える先生の姿が可愛すぎて、思わず頭を撫でてしまいたくなる。

 普段、女医としてバリバリ働いている京子先生だから、ギャップというのかな?

 彼女が診察している様子は一度も見たことないけど、悪い噂はネットの口コミでも聞かないし、多分、患者からも慕われているんだろうな。


「そんな事より、仕事の話ですよ。英輔は、今のままで良いと思っているの?」

「い、良いとは思っていません! わかりました、いずれ辞めますので……子供出来るまでは、我慢してくれませんか?」

「何で子供が居る事が前提なの? そんなに私の子を医者にでもしたいわけ?」

「そういう訳では……」

 別に医者にしたいとかそんな事は一切思っていないんだけど、単純に、京子先生との子供がどんな子になるのか興味あるだけだ。

 そりゃ、俺達の育て方次第なんだろうけど、先生の子ならなあ……まあ、一番の問題は俺の育児の仕方かもしれないが、それはどうにか勉強してやるさ。


「結婚してくれないんですか?」

「ああん、私が散々言っても嫌がっていたくせに、今更なんですか? ましてや、時間の合わない夜勤の仕事なんかに就いてえ……」

「う……それは悪かったです。すみません、よく考えるべきでしたね」

 仕事を見つけたい一心で焦っちゃったのか、京子先生の不満をよく考えていなかった。


「どうしたら、結婚してくれるんです?」

「うう……結婚したら、仕事考えてくれるって約束してくれる?」

「もちろんです。もう、俺は京子先生以外は嫌ですからね」

 後ろから抱き付きながら、京子先生にそう告げると、先生も顔を真っ赤にしながら、そう呟く。

 そうだよな。

 京子先生を支えようとするなら、俺の方が彼女の希望に合わせないとな。


「英輔さんは自分の事ばかりですね。私の言う事、なかなか聞いてくれませんし」

「それは京子先生もそうなのでは……」

 むしろ、京子先生のほうがワガママを言ってる気がするのは気のせいだろうか……仕事するくらい許してくれても良いのに、アレコレ言ってくるのは……

 いや、止めておくか。

 そんな京子先生も全部好きなんだと、思いたい。


「まあ、俺は急かすつもりはないんですよ。京子先生が納得行く形になるまで、希望に出来る限り、合わせるよう努力しますから」 

「なんか曖昧な答え方で気に入らないです……本当、逃げ道作るの好きよね、あなた」

 逃げ道って、100%京子先生の希望に沿える自信がないから、こんな言い方になってしまったんだが、まあ優柔不断と思われても仕方ない言い方ではあったか。


「すみません、京子先生のご希望に全て答えられるかは、自信なくて。でもこんな曖昧な態度じゃいけませんね」

「なら、行動で示してくださいな。私との結婚を本気で考えているのなら」

「は、はい。えっと……そうだ、婚約指輪! 改めて俺が……」

「私が買ったのは嫌だって言うの!?  せっかく、英輔の為に買ったのに!」

「ち、違います! 出来れば俺自身の力でって……いうのは自己満足でしたね。すみません」

 京子先生に少しでも見合う男にならないとって、意識が独善的で、京子先生には気に入らない様だったので、反省。


 俺の方が京子先生より、色々な意味でスペックで劣るんで、どうしてもなあ……。

「もう離れてください。なんだか結婚詐欺師みたいな感じがしますわ」

「いや、はは……そんな奴がいたら、俺が絶対にとっちめますので」

「英輔さんが、そう見えるって意味なんですけど……まあ、良いですわ。子供については、後で考えましょう」

「ですね。あの、ふつつか者ですが、宜しくお願いします」

「はい、宜しくお願いします」

 なんて挨拶を交わしながら、京子先生と将来を誓い合う。

 色々な事を棚上げしまくっている気がするが、全部解決を急ぐ必要もないと感じた。

 まあ、仕事に関しては早めに結論出さないといけないけど、子供とかはまだゆっくり考えよう。


 それから間もなくして、俺はホテルの仕事を辞める事にした――

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