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第四話 女医さんの家に、何十年も入院する羽目に?

「暇だ……」

 宇田島さん、いや宇田島先生の家に療養が開始され、数時間が経過したが、あまりにもやる事がなく暇で、早くもだるくなってきた。

 テレビも今の時間は特に面白い番組はやってないし、ネットをしても、暇潰しには足りず、ベッドでゴロゴロする以外ない状況だった。


 何せ、この広い部屋に一人で居るわけだからな……せめて、話し相手がいれば……。

「ん? 電話……先生からか。はい」

『紀藤さん。私です。体調はどうですか?」

「いえ、特に変わった所は」

『なら、良かったです。気分が悪くなったら、遠慮せずにいつても言ってくださいね』


 先生が俺の様子を聞きに来たので、素直にそう答えるが、俺の事を心配してくれたのか。

「あの、ちょっと良いですか? 外出はしちゃ駄目なんですか?」

『何か用事でも?』

「いえ……ちょっと気になったので……」

 入院中は基本的に外出は駄目だと思ったが、今の俺は特に気分が悪いわけでもないので、外出しても特に問題はないんだけどな。


『すみません。急な用事があれば別ですか、それ以外は一人での外出はご遠慮いただけるとありがたいです。外出先で何かあると、私も駆けつける事が難しくなるので」

「そうですか……すみません、ちょっと気になっただけなので」

 やっぱりダメか。

 急な用事ってのが、どんなのを指すのか想像付かないが、やっぱりダメかあ。


 てか、この入院生活とやらはいつまで続くんだ?

 まさか一生って事は……ないよな、流石に。

『では、そろそろ着きますので、詳細はその時に』

「はい? そろそろって……」

 何のことだと思っていると、


 ピンポーン。

「ただいま。すみません、ちょっと様子を見に来ました」

「先生! 来てたんですか?」

「はい。ちょうど、昼休みですし、紀藤さんの経過観察をしないといけないと思いまして。ああ、元気そうで何よりですわ」

 呼び鈴が鳴ると、宇田島先生が帰宅してきた。


「あ、昼休み中なんですか」

「ええ。午後は三時からなので。それに、車では十分くらいで着く場所にありますから、いざとなればすぐに駆け付けられますので、安心してください」

 いきなり帰ってきたので、ビックリしたが、そうか午後は三時からなのか。


「ふふ、お昼はもう済ませたんですね」

「はい。あの、夕飯は……」

「何かリクエストがありますか? 私がお作りしても良いんですけど、帰宅はいつも八時過ぎになってしまうので、遅くなってしまいますが、それでも宜しければ」

「いえ、流石に……」

 そこまでさせてしまうのは悪いので、先生に作らせる訳にはいかないが、いつもそんなに帰宅が遅いのか。


 まあ、俺も日付が変わる頃に帰宅とかザラにあったので、人の事は言えんけどな。

「まずは体温と血圧を測りますね」

 と言って、宇田島先生は俺の額にピっと体温計を当てて、

「三十六度三分。平熱ですね。では、血圧を測りますね。腕をまくって出してください」

「は、はい」


 宇田島先生に指示されて、右腕をまくって差し出すと、血圧の測定器を取り出して、カバーを腕に巻く。

 流石、医師だけあって手際が良いなあ……というか、本当に健康診断を受けているみたいな気分になってしまった。


「えーと、血圧は最高が126で、最低が78と。いずれも正常ですね。では、問診をしますので、ちょっと胸元までまくってくれませんか?」

「はあ……」

 血圧と体温をメモしていくと、今度は聴診器を取り出して、胸の辺りを聴診器で当てていく。


 間近で見ると、本当にキレイな人だなあ……てか、こんな女医さんだったら、毎日でも診てもらいたい。

 きっと患者にもモテるんだろうなと思ったが、産婦人科の医者なんだっけか。

「深呼吸してください……はい、OKです。私が居ない間、気分が悪いとかなかったですか?」

「いえ、特には」

「わかりました。パニック障害は密室にいると、不安になって、気分が悪くなる事があるので、そういった症状があった場合はすぐに申し出てくださいね」


「はい。何だか、本当に診察されてるみたいですね」

「本当にも何も診察ですよ。まあ、医師としての正式な業務ではありませんけどね。くす、どうですか、ここの生活は?」

「あー、はは……快適ですけど、ちょっと暇というか……ずっと寝るしかないってのも辛いですね」

「ですよねー。なら、適度な運動をした方が宜しいかと。えーっと、確かここに……これをお使いください。この上に乗ってボタンを押すと、このクッションが振動がして、乗るだけで運動になるんですよ」

 宇田島先生は色々な、エクササイズマシーンを取り出して、熱心に解説をするが、そんなのより、外で運動した方が良いのでは……?


「大丈夫ですよ、心配しないでください。私も紀藤さんのご病気が完治するまで、全力でサポートいたしますので。それこそ何十年かけてでも、お付き合いします!」

「そ、それはどうも……頼もしい限りです」

 俺の手をがっしりと握りながら、目を輝かせて、そう力強く言ってくれた宇田島先生だったが、そんな何十年も経ってから、パニック障害が完治されても、あんまり意味ないというか……


 てか、それまで俺をずっとここに置いておく気か?

 まさかとは思いたいが、そこまでは考えてないよな?


「くす、そうと決まれば私も頑張りませんと。あっ、お部屋の掃除と洗濯をしませんと」

「あの、俺がやりますよ」

「そんないけません。患者様にそんな事、させられませんよ。紀藤さんは気にせず、ゆっくり静養なさってください」

「いや、ずっと寝たきりじゃ、却っておかしくなりそうなんで。てか、先生だって、仕事で大変なんでしょうから、俺にも何か手伝わせてください」


「き、紀藤さん……」

 手伝うと言っても、俺は医師でも看護師でもないから、家事くらいしか手伝えないのが歯痒い。

「わかりました。では、掃除と洗濯なんかはお願いしますね。気晴らしにもなりますし、私も助かります。掃除機や、掃除用具一式はこちら。洗濯機と乾燥機は洗面所にありますので」

 ジーンと感激したような目をして、宇田島先生も了承してくれ、一先ずホッとする。

 よかった……ずっと、寝たきりで、たまにリハビリみたいに室内運動するだけじゃ、本当に重病人みたいで生きた心地がしないからな。


「すみません、色々と」

「お礼を言うのはこちらですよ。ああ、紀藤さんが来てくれて良かったですう……流石、私の見込んだ方ですわ」

「はい?」

「はっ! いえ、何でも! あ、私、もう仕事に行かないといけませんので。鍵はしっかりかけておきますので、宇田島さんはしっかり静養なさってください」

「は、はい。いってらっしゃい」

「~~……はい、いってきます!」

 と言って、慌てて身支度をし、元気いっぱいに返事をして、宇田島さんはまた仕事場へと戻っていった。


 何だか、一生懸命な人なんだな……どうして、俺にここまで親身になってくれるのかわからないが、彼女の看病に応えるために、一日も早く治さないと。

「あれ? 鍵がかかってないような?」

 ふと、玄関のドアを見ると、鍵が施錠されてなかったようなので、ちょっとドアを見てみると、どうやら鍵を閉め忘れたようだ。


 おちょっこちょいだなーと思いながら、ドアノブに手をかけて、何となくドアを押すと、何かに引っかかったようにドアが動かなかった。

 あ、あれ? ドアが開かない?

 もしかして、鍵がかかっている……? 外側からっ!?


「い、いや嘘だろ……ちょっと、待てこれ……」

 俺、先生が帰ってくるまで、家から出られないって事?

 そう理解すると、放心状態になってしまい、その場でしばらく立ち尽くしてしまったのであった。


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