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第三十二話 地元で先生に内緒で浮気か

「えっと、駄目?」

「うーん……」

 葉山さんのお誘いをどうするか、なかなか返事が出来ず、しばらく考え込む。


 俺には京子先生が……いや、彼女とは付き合っているつもりはないから、別に葉山さんの誘いを受けても問題はないはず。

 だが、この事が京子先生に知られたら俺の命は……ないかも。


『あの、明日の夜とか空いてる?』

「明日? うん、別に予定はないけど……」

『じゃあ。食事にでもいかない?』

 これは……デートのお誘いではないのか?


「えっと、二人で?」

『う、うん』

 念の為に他に同行者がいないか聞いてみたら、二人きりと即答したので、これで確定してしまった。


 明日の朝には京子先生の家に帰る予定だったけど……終電でいけばワンチャン間に合うかな?

 なんて事を考えながら、葉山さんの食事の誘いをどうするか考えるが、正直、断る理由も見つからなかった。

「葉山さん、明日も仕事なんだよね?」

『うん。だから、その……ちょっと遅くなるかもしれないけど。夜の七時頃には何とか、行けるようにするから』

「その次の日も仕事?」

『うん』


 まあ、平日何で当たり前だが、だったらそんなに遅くなることはないだろう。

 ギリギリ終電で帰れば、日付が変わる頃には京子先生の家には帰れそうだな。

「わかった。じゃあ、何処に行こうか?」

『本当?  駅前のレストランに行こうと思うんだけど、場所は……」


 ああ、何か聞いた事のあるレストランだな。

 食べに行った事はないけど、確かイタリアンの店だったかな。

『じゃあ、約束ね』

「ああ。明日の夜、七時だな」

『うん。送れるようなら連絡するから』

 と、明日食事する約束を葉山さんとし、電話を切る。


「やっちまった……」

 これは京子先生に知られたら、激怒されるなんて物ではない。

 下手すると命を取られかねないが、俺に愛想を尽かして、別れるなんて言い出してくる可能性もあるかも。

 そうなればむしろ助かるんだが、ちょっとリスクがある賭けかも。


「まあ、何とかなるだろう」

 ちょっと甘く見過ぎかもしれないが、合コンで気になっていた子とこうして再会するのも何かの縁だ。

 こういう縁を無駄にしてはいけないと思いつつ、


 翌日――

「やっと退院か」

「ああ。ようやく、楽になったよ」

 朝になり、退院した親父をお袋と共に迎えに行き、一緒に車に乗り込む。

 家の車とはいえ、運転するのは久しぶりだな。


「本当、ビックリしたわよ。それで、英輔は今日、帰るんでしょう」

「まあね。ああ、夜に友達とちょっと食事する約束したからさ。それまでには出るわ」

「あら、そう」

「うん。昼は退院祝いに何処かで食うか」

 運転しながら、そう両親に告げ、退院祝いにこのまま両親とも近くの店で外食する事にした。

 昨夜は久しぶりに、お袋の手料理も食べたし、実家で過ごすのも悪くはないと思った。


 夜中になり――

「えーっと、ここかな」

 葉山さんと約束した待ち合わせ場所に行き、店の前で彼女を待つ。

 七時までには来ると言っていたが……病院の仕事だから、急患とか入ったら、やっぱり遅くなるんだろうけど、そうなれば流石に連絡はくれるだろう。


「お待たせ。ゴメンね、ちょっと遅くなって」

「ああ。うん、大丈夫。時間通りだよ」

 夜の七時ちょうどくらいの時間に、ようやく葉山さんがやってきた。


 白のコートと手袋をして、すっかり冬の格好でやってきたが、私服の姿も可愛いな。

(やっぱり、ちょっと京子先生に似ているかも)

 葉山さんの顔っていうか、雰囲気が何となく京子先生に似ていて、医療従事者ってこうなのかなって感じがしてしまう。


「仕事が思っていたより、遅くなっちゃって」

「いいって。じゃあ、入ろうか」

「うん」

 二人で店に入り、葉山さんとのディナータイムが始まる。


「へえ、お洒落な店じゃない」

「うん。ここのパスタ、凄く美味しいんだよね」

 地元にあるにも関わらず、行った事もないんだが、俺ももうちょっと色々な店に行くべきだったかもな。


 昼に両親と一緒に行った店も、ファミレスだったし、何とも味気ない食生活を送っていたものだ。

「お酒、大丈夫?」

「うん。夜には、今住んでいる家に帰るしさ」

「へえ。今、一人暮らし何だっけ」

「まあね」


 嘘を付くのはチクリと来てしまうが、正直には言いにくいんだよな。

 実質京子先生に監視されている状況は。

(はっ! まさか、先生、ここに居ないよな?)

 店内を見渡してみるが、京子先生の姿はいない。


 実家の住所は知っているので、俺の後を付けていてもおかしくはないのだが、流石にここまでは来てなかったか。

「初めて会った時の事、覚えている?」

「うん。カラオケボックスだよね」

「そう。友達から合コンに誘われて、あんまり乗り気じゃなかったんだけど……それで、紀藤君も何かつまんなそうな顔をしていて、私と同じなのかなって思って」


「あはは、そうだったんだ。いやー、まいったな。彼女にフラれたばかりで、ちょっと不貞腐れていたんだよ」

 そう。初めて付き合った彼女にフラれて、一ヶ月も経っていない頃だったので、ショックが抜け切れていない時期だったんだが、それを見た友達が気を回して、わざわざ俺を合コンに誘ったんだ。


「くす、何か話が弾んじゃったんだよね。あと、野球の話で」

「ああ、そうだったね。葉山さん、斉徳学院出身だったんでしょ」

「うん。吹奏楽部だったんだけど、野球部の応援にはよく行っていて……紀藤君も野球部だっていうから、親近感湧いちゃって」


 斉徳学院と言えば、ウチの県では甲子園常連の強豪校で有名で、俺が高校時代に最後の試合で対戦した高校でもあった。

 結果? 見事にコールド負けだよ。当たり前じゃないか。

 普通の公立野球部のウチが太刀打ちできる相手じゃないのだが、どうもその試合に葉山さんもブラスバンドの一員としていたらしいんだよな。


「何か懐かしくて思い出しちゃってさ。紀藤君は、その……今も野球やっていたりする?」

「いや、全然。もう見る方、専門だよ」

「そっか。えへへ、プレイしているところも見てみたい気もしてさ」

 気持ちは嬉しいが、俺のプレイなんぞ見ても、面白くも何とないだろうに。


「一度、会う約束までしたのに、どうして駄目になったんだっけ?」

「えっと……ゴメン、よく覚えていないな。私の方で急用が入っちゃったと思ったけど」

 何の用事かも覚えてないのか……まあ、こうして会えたのも何かの縁かもな。


「あ、あの……ねえ、紀藤君、今一人身なんだよね?」

「う、うん」

「そう。じゃあ、また会わない?」

「え? ああ、良いけど」

「本当? えへへ、嬉しいなあ。私もそうだから、

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