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第二十九話 遂に女医さんとの結婚に応じてしまうが……

「さあ、どうします? 早く結婚するかしないか、答えてください」 

「じょ、冗談は止めましょうよ。そんなことで脅かしても無駄ですよ」

「くす、そう。じゃあ、試してみる? お注射したら、何が起こるか?」

 なんて、小悪魔みたいな笑みで、更に注射針を首筋に刺そうとするが、こんなの脅しに決まっている。


 中身はきっと水とかだろう……と思いながらも、医者なら普通の人では入手出来ない危険な薬を持っていてもおかしくないとも思ってしまい、万が一を考えてしまう。

 俺になにかあれば京子先生だって、人生終わりな筈だが、そんな事は本人はお構いなしらしい。


 まいったな……医者ともあろう京子先生が、無敵の人みたいになっちゃうとは、何と恐ろしい。

 ここで大声を出したり、抵抗すれば容赦なく京子先生はブスリと注射をしてくるだろう。


 中にヤバい毒物が入ってる可能性は……1%以下だろう。

 医者とはいえ、そんな注射してすぐ死んだり、後遺症が残る危険薬物を手に入れられるはずは無いんだ。

 しかし、もし1%以下の確率で、危険な薬物が注射器に入っていたら、俺は……。


「あーん、英輔さん、もしかして脅しだと思っているんですか? こんな小娘の女医なんかに、危ない薬品を入手出来る訳はないって。なら、試してみましょう。この注射器の中身が何なのか」

「く……ああ、わかりました。結婚します。それで良いんですね?」

「まあ、やっと理解してくれましたか。じゃあ、キスをしてください」

「う……」


 ここで意地を張るのは危険だと思い、一先ず言う事を聞くことにする。

 くそ、キスくらいならまだいいが、もう一回だけとか言われたら……命には代えられないか。

「ん……んっ、んんっ!」

 対面座位の体勢のまま、京子先生と唇を重ねていき、先生は俺に強く抱き付きながら、キスをしていく。


 くそおお……何だか、先生に弄ばれっぱなしじゃないか。

 男としてこれはどうなんだろう? このまま、京子先生と結婚してしまっても、俺は幸せになれるのか?


「ん……さあ、これにサインしてください」

 顔を離した後、満面の笑みで、京子先生は婚姻届けを俺に差し出す。

 いきなりサインさせようとするのは、ちょっと強引すぎるっていうかさ……もうちょっと待てないの、結婚?


「あの、もしサインしたら、すぐに役所に持っていくんですか?」

「ええ。あ、保証人必要でしたね。同僚に頼みますから、大丈夫ですよ。じゃあ、明日にでも出しましょうか」

 助かった……婚姻届けを出すには保証人が二人必要なので、ここでサインしても、まだ猶予は少しある。

 いや、こんな物は今すぐ破ってしまえば良いじゃないか。


「ああ、変な真似はしないでくださいね。破った所で、代わりの婚姻届けはいくつもありますから」

「く……ていうか、その物騒な注射器をしまってくれません?」

「まあ。だったら、速くサインを終えてくださいな」

 婚姻届けに名前を書いている最中にも、俺の首に注射器を刺そうとしていたが、そこまで俺を信用していないのかよ。


「はい、どうぞ」

「ありがとうございます。ああ、これでもうすぐ晴れて夫婦ですわ♪」

 婚姻届けに名前と住所を書いて、京子先生に渡すと、先生は目を輝かせて、その用紙を眺める。

 まるで悪魔の契約書にサインをしてしまった気分だが、まだやり直しは聞くはずだ。


 大体、脅されて無理矢理サインさせれたのだから、無効だろう、こんな結婚は。

「ねえ、英輔。式は何処でやりたい?」

「別にしなくて良いんじゃないですか?」

「ふーん、まあそういう人も最近多いよね。でも、私は結婚式したいなあ。夫婦になれたって感じするじゃない」


 結婚式の事なんぞ、俺はどうでも良いんだが、どんどん話を進めており、実に不愉快だ。

「結婚とか、まだ早いんじゃないですかね。もうちょっと愛を育みましょうよ」

「へえ、そうやって美味い事を言って、引き延ばしするんだ。英輔って、なかなか小賢しい性格しているよね」

 完全にお見通しだが、そんな事はどうでも良い。


 俺は京子先生との結婚をするのは今は嫌だ。

 というか、そんな気分になれないし、仮に無理に結婚しても上手くやれる自信はない。

 京子先生はそれで満足なんかね……俺には理解出来ないよ。


「先生、今からなら間に合いますよ。俺を自由にしてください」

「なーに? もしかして、私を警察にでも訴える気? それとも、医師免許をはく奪とかそんな事を考えている? いいわよ、好きにして。でも、そんな事をして、英輔も無事でいられると思わない事ね。絶対に殺してやるから」


 殺すなんて、強烈なパワーワードが出てきてしまい、俺もちょっとゾッとしてしまう。

 おいおい、仮にも女医さんだろう? そんな人が殺すなんて、冗談でも言ってはいけないと思うんだが、もう暴走しすぎじゃないかね。

「俺は京子先生の事は好きなんですよ。でも、こういうやり方はちょっと感心しないですね。脅迫じゃないですか、こんなの」

「私ね。女医になるために、ずっと勉強してきたの。色々、欲しいものも我慢してきて、勉強を頑張ってきたのよ。まあ、男が欲しいとは思わなかったけど、その反動かしらね。英輔をどんな手段を使っても欲しいのよ。それくらいしても、バチが当たらないと思わない?」


 そんなのは俺の知った事ではないんだが、我慢してきた反動というのは、まあ理解出来なくもない。

 しかし、もうちょっとやり方はあるんじゃないのか?

「ねえ、私の事、好きって言ったじゃない。なら、結婚しても構わないわよね」

「あのですね。好きって言っても色々あるじゃないですか。好きだからって、即結婚って事にはならないと思いますよ」

「男が女に好きって言うなら、それは恋でしょう? それ以外、何があるっていうのよ?」


 また偏った考え方をしているなあ。

 別に男女の好きだって色々あると思うんだけど、ちょっと物の見方が狭い気がするな。

「あんまり、俺を怒らせないでくださいよ。こんな事をしてタダで済むと思う訳ないでしょう」

「英輔は私の味方じゃない。断言するけど、英輔は私が何をしようと、医師生命が終わるような事は絶対にしないわ。何があっても私の味方。そうよね?」

「それは……」


 俺を後ろからハグしながら、耳元でそう囁く。

 俺は女医としての京子先生は好きなので、彼女に医師はずっと続けて欲しいとは思っているし、俺の為にそれを断たせたくはない。

 甘い考えだとは思うが、俺は京子先生の未来までは奪いたくないんだ。


「私の幸せを考えるなら、結婚してくれるよね? くく、憧れの美人の女医さんとと結ばれて、幸せな家庭を築いて、いつまでもいつまでも幸せに暮らしました。めでたし、めでたし♪ 何処をどう見ても完璧なハッピーエンドだと思わない?」

 何て俺に告げるが、


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