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第二十六話 女医さんにヒステリックに迫られてしまい……

「えっと、確かビールが……あった」

 キッチンに行き、買い置きしていた缶ビールを冷蔵庫から取り出して、一杯頂く。

 なんか酒を飲むのも久しぶりな気がする。


 そんなに飲む方じゃないんだけど、とにかく今は飲まないと気分が落ち着きそうにない。

「はあ……どうするかなマジで……」

 ビールを何口か飲み、椅子に座って、京子先生の事を色々考える。


 悪い人じゃないんだろうけど、ちょっと一方的過ぎるんだよなあ。

 京子先生とこのまま同居を続けてしまって良いものかどうか悩んでしまう。

 逃げるのは言いけど、まずは宛を探さないと。しかも京子先生に気付かれない様に……


「どうすれば良い? 簡単じゃない。私を抱けば良いのよ」

「へ? うわっ!」

 急に京子先生が後ろから抱きつき、ビックリして振り向くと、先生はシースルーのネグリジェを着て、また俺の前に現れた。


「抱いてよ。でないと寝かさない」

「先生、だいぶ酒が入ってません? 水でも飲んで落ち着きましょうよ」

「抱けって言ってるでしょ! 英輔はもう、私の男なんだから〜〜!」

 さっきよりも、顔が赤くなり、呂律もおかしいので、またテキーラを飲んだのかもしれないが、それにしても悪酔いし過ぎだろ。


 いや、わざと酒を飲んでこうなったのか?

 いつもの物腰が丁寧な京子先生からは想像も付かないくらいの、悪酔いした姿に困惑してしまうが、もういっそ本当に抱いた方が良いんだろうか?


 そうだよ、別に今の時代、一回か二回寝たくらいで結婚しないといけない決まりなどないのだ。

 京子先生を宥める為に少しくらいなら……てか、スタイルも良いなあ京子先生。


「ねえー、早くう……抱けば、もう私は英輔の物なんだからさあ」

「はは、まいりましたね。んじゃ、お言葉に甘えて。はい」

「あん!」

 あまりにも抱けとしつこいので、取り敢えずリクエストに応える事にした。


 こうして抱いてみると、本当に華奢な体つきしているな……こんなか弱い女性が普段は産婦人科の医者として、日々頑張っているんだな。


「はい、抱きしまたよ」

「ふーん。そういう意地悪するんだ」

 正面から、京子先生をしばらくハグした後、離れると、先生もあからさまに頬を膨らませる。

 もちろん、こんな意味で言っている訳じゃないのは、俺だってわかっているんだが、今はそんな気になれないのわかって欲しい。


「先生の気持ちは凄く嬉しいんですよ。ただですね。俺って、臆病なんです。京子先生とはかなり差がありますし……」

「年収の差なんて、気にしないってのがまだわからないの?」

「いや、それだけじゃなくてですね。そうだ、今度またデートしましょう。遊園地とかどうです? 一緒に楽しみたいなー、はは」


 もう自分で言っていて情けなくなるが、とにかく京子先生を宥めて、この場はやり過ごすしかない。

「先生は綺麗ですし、とても魅力的な女性ですよ。ただ、俺には眩しすぎるんです。先生に釣り合えるように……んっ!」

「んんっ! んっ、ちゅっ……!」

 先生の綺麗な髪を撫でながら、そう囁くと、京子先生は俺に思いっきり抱き付いて、強引にキスをしてきた。


 く……またちょっと酒の匂いが強くなっているから、やっぱり飲んでいるんだな。

「んっ、んんっ! はあ……英輔、抱いて。意味が分からない? セックスして、今すぐ」

「ストレートですね……俺達、付き合ってる訳じゃないですよね?」

「結婚の約束をした仲でしょ」

「してませんって。それは先生が勝手に言っているだけですよ」


 京子先生の中では既に俺と結婚することが既定路線みたいだが、あんまり一方的に話を進めてしまうのは良い気分はしない。

 どうしたら納得してくれるんだろうな……他に好きな女がいるとかなら、諦めは……ないな。

 何をされるか怖くて、とても他の女に言い寄るとか無理。


「ふーん……英輔も随分と大人な対応をするじゃない。流石、女性経験豊富なだけあるよね。私みたいな勉強ばかりの世間知らずの女医なんて、物足りないって事?」

「あの、全然豊富じゃないって言いましたよね? 一回だけですからね、彼女出来たのも」

「一回でも十回でも同じなのよ! てか、今彼女居ないなら、断る理由ないよね!? だったら、付き合いなさいよ! 同棲までしてるのよ、私達!」


 一応、今の状況って同棲になるのか?

 何か病気療養って名目だった気がするんだけど、もう京子先生も忘れているみたいだし。

「あ、はは……そうですかね。あ、俺、見たいテレビあるんですよ。ですから、また後で」

「あ、ちょっと!」

 取り敢えず、飲みかけのビールを持って、自分の部屋へと避難する。


 先生、あまり腕っぷしが強くないので、いざという時は力づくで引き離せることだけが、唯一の救いだが、これもいつまで続くか……。

「はあ……あ、ちょうど日本シリーズやってるんだな」


 自室にあるテレビを点けると、野球の試合がやっていたので、ビールを飲みながら見てみる。

 俺の応援しているチームは早々に最下位が決まっちまったので、ポストシーズンの事なんぞ頭にもなかったが、ただでさえ、仕事で忙しくてストレス溜まっていたのに、趣味の野球観戦でもひいきチームが負けまくりだったから、前世での行いがそこまで悪かったのかと、疑ってしまう程の苦行の年であった。


「おっ、これは……入ったか」

 何て思いながら観ていると、ホームランが出て、球場も凄い歓声で沸く。

 良いなあ糞。俺も生で観て、一緒に沸きたいよ。


 子供の頃はプロ野球選手になりたいとか夢見ていたけど、結局すぐ無理だったし、中学でも高校でも普通レベルの公立の野球部でレギュラーになれなかったんだから、俺には才能もなかったんだな。

 京子先生は現役で医学部行けるくらい頑張っていたのに、俺は何だろう?

 やっぱり、考えれば考えるほど、先生との差がかなりあり、コンプレックスが拗れてしまう。


「英輔……英輔っ!」

「うおおっ! な、何ですか!? てか、京子先生、いつの間に!?」

 野球の試合を見ながら、そんな事を考えていると、京子先生が思いっきり後ろから枕を頭にぶつけて、俺にしがみついてきた。


「逃げられると思ったの!? 私を抱くまで、今日は寝かさないって言ったわよね!? さあ、さっさとしなさい! テレビ観るのは後でも出来るでしょう!?」

「い、いや、勘弁してくださいって。今、野球の日本シリーズやってるんですよ。リアルタイムで試合見たいんですって」

「私とどっちが大事なのよ、それっ! 録画すれば良いじゃない!」


 おいおい、それはちょっと酷い選択じゃないのか?

 大体、まだそういう事をするには早い時間じゃないか……いや、別に昼だろうが夜だろうがやる奴は居るけどさ。

「うう……英輔、ここから出られると思っているの? 甘いわよ。あなたはここで一生住むの。私がそう決めたんだからね」

「は、はい? いやー、それは一方的すぎじゃ……う……」

 

 あ、あれ? 何か急に眩暈が……眠くなってきたぞ……。

 急に意識が朦朧としてしまい、その場で崩れ落ちて、意識を失ってしまった。



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