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お隣の女医さんの家に一生療養して、付きっ切りで看病されたいですか  作者: beru


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第二十四話 両親公認の仲になってしまう

「あの! マジで行くんですか?」

「当たり前じゃない。さあ、行くよ。いずれ結婚するんだから、今の内にお父さんとお母さんにも挨拶しないと」

「い、いや待ってくださいって! まだ、その……」

 心の準備も出来てないので、待ってくれと言おうとするのも聞かず、京子先生は家の前に車を停めて、車から出てしまう。


 ちょっと一方的過ぎやしないかと思ったが、まだご両親に合わせる顔が……。

「あの、先生!」

「あら? 京子じゃない」

「お母さん、ただいま」

「あ……」


 何とか京子先生を引き止めようと、先生の腕を掴むと、玄関から中年くらいの女性が――京子先生のお母さんが出てきてしまった。


「どうぞ」

「あっ、どうも……」

 結局、逃げる事も出来ず、京子先生に言われるがまま、家に上がって居間に案内される。


 和室の居間に、俺と京子先生、そして京子先生のお父さん、お母さんも何処か気まずそうな顔をして、俺達と向かいあう形で座っていた。

「紹介するね。こちらは紀藤英輔さん。今、私とお付き合いしている男性なの」

「ど、どうも。紀藤です。先生にはいつも……いて!」

(京子!)

「きょ、京子さんにはいつもお世話になっています!」

 つい、京子先生と口にしてしまうと、京子先生が思いっきり足の裏を抓り、京子と呼べと小声で呟く。 


 自分の両親に、平然と男を紹介してしまう、京子先生の神経にも脱帽してしまい、頭がクラクラしてしまうが、俺の事、本当に婚約者として紹介する気じゃないだろうな?

「まあ、紀藤さんと言うのね。京子の母の美津子です」

「父の忠典ただのりです。えっと、紀藤さんでしたっけ? 失礼だが、年齢はおいくつ?」

「二十四です」

「まあ、随分お若いのね」


 高浜さんにも同じ事を言われたが、俺も年齢以上に若く見られるみたいで、まだ学生に見られているっぽい。

 まあ、医者の娘が年下の男を連れてきたら、誰だって驚くわな。


「英輔さん、とても誠実で優しい方なの。部屋が隣同士で会社員をしていたんだけど、今はちょっと体調を崩して、求職中なの。私が彼が完治するまで、付きっ切りでサポートするつもりでいるから」

「まあ。それは大変ね」

「はは……京子せ……さんには、本当お世話になりっぱなしで。俺も早く治して、一刻も早く自立して、京子さんと少しでも並べられるよう頑張りますので!」

 もうヤケクソ気味に、ご両親に頭を下げてそう言うが、女医をやってる娘の彼氏がまさか、年下のヒモだったなんて、ドン引きも良い所だろうよ。


 先生も一応、今の所、ボロが出そうな嘘を言ってはないけど、この落ち着きは流石というか……それだけ、俺か両親を信頼しているのか?

「頭を上げてください。京子だって、もう良い年をした大人なんだから、男女の交際についてわしらがどうこう言うつもりはない。二人はいつからお付き合いしてるんだ?」

「まだ、数ヶ月くらいかな。でも、本当に素敵な方だから、いずれは結婚も考えているの。最悪、私が養っていく覚悟だってあるから。ね、良いよね?」

「ぶっ! ちょっ、そこまでは流石に……」


 自分の両親に対して、そこまで堂々と言ってのけるって、もう京子先生の神経がちょっと異次元レベルでおかしいだろ。

 案の定、ご両親も引き気味の顔をしているし……まあ、でも常識ありそうな両親なのは救いか。


「まあ……今の時代、そういうのもあるのかしらね……二人の事だから、二人できちんと話し合って、納得いくようになさい」

「うん。へへ、よかったね、英輔さん」

「はあ……」

 やや引きつった笑顔をしながらも、京子さんのお母さんはそう言ってくれ、それを聞いた京子先生も交際を認めてくれたと喜んで、腕を組む。


 トホホ……これで、両親公認の仲になってしまったって事?

「二人は結婚まで考えているの?」

「うん。でも、まだ具体的な日時までは決まっていなくて。彼が転職して、落ち着くまでは待ってくれって言うから」

「そ、そうなんです。やっぱり、京子さんを支えられるようになりたいですから」

「くす、もうそんなの気にしなくて良いのに」


 頼むからそこは気にしてくれよ。

 というか、どんどん話が進んじゃっているけど、このままだと本当に近い内に先生と結婚させられる羽目になってしまう。


「それじゃ、今日はこれで」

「お邪魔しました」

 その後、しばらくご両親と雑談し、ようやく京子先生の実家を後にする。

 き、緊張しすぎて死ぬかと思った……就活の面接よりも緊張したぞ。


「くす、そんなに固くならなくて良いのに。お父さんもお母さんも、英輔との交際に反対はしなかったでしょう」

「あの、本当にいいんですか? 結婚の約束までしているなんて言っちゃって……」

「ん? 本当じゃないの?」

「俺はした覚えはないですよ」

 車に乗り込み、エンジンをかけながら、キョトンとした顔をして聞いてきたが、こんな一方的に話を進めてしまって、良いのだろうかと思ってしまう。

 ご両親は俺の事を気に入ってくれたかはわからなかったが、一応、真面目そうな人なので安心したとは言ってくれたので、悪い印象は持たれなかったんだろう。


 しかし、少なくとも俺はまだ京子先生との結婚には同意していないし、交際をしているつもりもないのだ。

「いずれ、婚姻届けにサインしてもらいますので、そのつもりで。あ、式は何処で挙げたい? もしかして、海外でやりたかったりする? いいよ、遠慮なく言ってね」

「考えてないですよ。あの、返事はもう少し待ってもらえますか? 俺も色々と……」

「何を待つ必要があるのですか? お金の事なら、別に心配しなくて良いんですけど。英輔のパニック障害が完治して転職を終えるまで……と考えているんだろうけど、そこまで待つ理由はないよね。だって、英輔一人くらい養う収入あるんだし」

「そういう問題では……」


 京子先生は医者なので、当然かなりの収入がある。

 具体的な年収は聞いてないけど、多分、俺が会社員やってても、相当出世しない限り、先生の収入を超える事は無理なくらいはわかる。

「真面目なのね。良いのよ、私を養おうなんて考えなくて。ハッキリ言って、英輔の稼ぎをあてにはしてないし必要もないから」

「え? そ、そうですか……」

 先生は運転しながら、さり気なくそう言ってきたが、その言葉が胸にグサっと突き刺さる。


 俺の稼ぎは当てにしてないし、必要もない。

 つまり、俺なんかいなくても生きていけるって意味だよね?

 いや、そこまでの意味を込めて言ってはいないのかもしれないけど、事実とは言え、今の言葉はかなりキツイ。

 京子先生は俺にどうして欲しいんだろう……傍に居て欲しいってのは嬉しいけど、このままだと先生のペットみたいになってしまう。


「くす、どうしたの?」

「いえ……俺は先生の支えにはなりたいんです。お金の事だけじゃなくて、京子先生が産医として、多くの命を産んで、命を救ってもらって……素晴らしい仕事をしているんですから、その支えになりたいです」

「それはもうなってくれてるよ。英輔は今のままで良いから。ね?」

「はあ……」


 赤信号で停止した所で、京子先生がそう言い、俺も頷く。

 京子先生は良くても俺は今のままではちょっと納得は行かない。

 何とかわかってくれると良いんだけど……

 



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