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夫婦でほのぼの開拓VRMMO  作者: 島 恵奈華
2年目、春と夏の間

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ユ:ドラゴン卵と戦後処理

長くなりました。


 共闘したスケルトンドラゴンが、俺達に卵を託したいと言いだした。


 そんな事を言ったらどうなると思う?

 皆が目の色を変えて骨ドラゴンの記者会見みたいな状態になるに決まってるだろ。


 好奇心の塊となったプレイヤー達が囲む中で、骨ドラゴンは満更でもない様子でせがまれるままに詳しい話をし始めた。


「竜種の中でも、固有の名を持つ程の高みへと至った存在は、死す前に、己の生命力を使って生まれ直すための卵を準備する」

「雄と雌で子供を作ったりはしないんですか?」

「無論、(つがい)と新たな命を育みはする。だがそれとは別に、己の生まれ直しは己の手で行い、信の置ける相手に保護と育成を託すものなのだ」


 そう言って、骨ドラゴンはハリネズミ幻獣に預けていたというドラゴンの卵をこの場に()()()()()()()


「なんで複数あるんです??」

「卵を作り出す生命力に余裕があるならば、予備を用意しておくだろう」


「え、じゃあ使わなかった予備の卵は……?」

「ひとつは吾輩が生まれ直すのに使うが、他は番と育むのと同じように新たな竜が新たな魂として生まれる。実際どうするかは託した相手の判断に任せる」


 クラゲみたいな生態してるな?


 託された相手の育児ポテンシャルに余裕が有れば全部まとめて育てる事もあるし、余裕が無ければ他のドラゴンに譲渡したりもするらしい。

 その辺りは相手にお任せで気にしないのがドラゴンメンタルなのだそうだ。


 転がる卵は全部で7個。


「集めると願いが叶うやつかな?」

「もう7つ揃ってんだわ」


 骨ドラゴンは問われるままに、ドラゴンの卵の孵し方や、予備の卵は好きにしていい等の説明を続ける。

 俺達よりも、検証勢の方がせっせと真剣にメモを取っていた。


「生まれ直しても、同じブラックドラゴンになる感じ?」

「いいや、生まれ育つ環境に適応して体の作りは変わる。……次は何になるであろうな」


 それも楽しみだ、と骨ドラゴンは笑う。


「……名前の無いドラゴンは、こうやって卵をもらって孵さないと従魔には出来ない感じですか?」

「いいや。竜を従えるのならば、相応の力を示さねば応じぬだけだ。特に名も無き若い竜は生意気故、一撃で昏倒させるくらいの実力を見せねば下につく事を認めぬだろうな」


 ああー、今のところテイム成功者がいないのは、純粋にレベル不足なのか。なんだかんだドラゴン強いらしいからな。


 ひと通りの説明が済むと、骨ドラゴンは俺とキーナに真っ直ぐ向き直った。


「どうだ、受けてもらえるか?」


(……どうする?)

(ようは骨ドラゴンさんが生まれ直してうちの子になるって事でしょ? 歓迎こそすれ、断る理由は無くない?)


 だな。

 承諾の返事をすると、骨ドラゴンは嬉しそうにひと声吠えた。


「我が『メララックス』の名と魂を持つ次の生を、ヒトの子の友に託す。……では、死の海に向かうとしよ……」

「アーッ! ちょーっと待って下さいトゲー!」


 せっかく格好良く宣言したメララックスは、テテーッと駆け出してきたハリネズミ幻獣の声にガクッと脱力した。


「ちょっとそこだと安定よろしくないので、もう少しこっち側で亡骸になって下さいトゲ」

「……お前という奴は……」


 台無しだよ。

 見守っていた参加者達も笑っていいやら困ってるだろ。なお、一部マルドゥークは堂々と笑っている。


 憮然としながらハリネズミ幻獣への文句と礼をブチブチと口にしつつ移動したメララックスに、キーナは喉の奥で笑いながら……魔法で火の色の花を出した。


「早く戻ってきてね」

「うむ、心得た。……では、さらばだヒトの子達よ!」


 差し出した花を頭蓋骨の牙で咥えて……黒いドラゴンの骨は、力が抜けたようにカクリと少しだけ動き、そのまま沈黙した。

 そしてその亡骸から、ガラスのような虹色の蝶が飛び立ち始める。


「【サモンネクロマンス:霊蝶の群長】」


 キーナが召喚した霊蝶の群が、ドラゴンの蝶と合流する。

 キラキラ、ヒラヒラと透き通る蝶は黒い骨の周りを幻想的に飛び交って……そして洞窟の天井へ舞い上がり、景色に溶けるように消えていった。



 * * *



 そうして残されたのがドラゴンの卵7個だ。


「……じゃあ、卵、1個は俺達が引き取るんで……残りの分の引き取り先決めましょうか」

「うええ!? い、いいんですか!?」

「さすがに7個は持て余すし……」


 もともと今回はダンジョンも無いし、協力してもらった礼をどうしようかと思っていたからちょうどいいと言えばちょうどいい。……というか、多分ゲーマス側も『皆で仲良く分けてね』くらいの感覚で出してるだろこの数は。

 とはいえ、当然1人1個生き渡るような量じゃない。

 と、なると話し合いが必要だ。


 とりあえず今回の参加者を、ざっくり所属別に分類してみる。


 俺とキーナ。

 同盟仲間のカステラさん。

 麗嬢騎士団。

 モロキュウ冒険団。

 マルドゥーク。

 論丼ブリッジさんと検証勢。

 パピルスさん。

 魔法少女。

 ケチャップフェアリー。


 個人参加を別々の扱いにすると、こんな感じだ。

 『足りないなぁ……』という雰囲気になった時、スッと全身赤色のケチャップフェアリーが手を挙げた。


「あの……私、ドラゴンよりも欲しい物があって、そちらを要求してみてもいいですか?」

「……え、はい」

「どうぞー?」

「森夫婦さんがお待ちの『満ち夢ちトマト』ってありましたよね……あれでケチャップ作ってみたくて」


 ……マジかよ。


 ある意味凄まじい要求にその場のプレイヤーがそれぞれ凄い顔をした。マルドゥークは「マジで!?」と声に出した。

 このフェアリーさん……相当なケチャパーだな。


 卵よりもそっちがいいなら俺達に否は無い。

 むしろドラゴン卵に釣り合うか分からないからたっぷり持っていってくれ。

 山盛りのトマトを出して献上すると、ケチャップフェアリーは大喜びでいそいそとトマトをインベントリに収納した。


 それを見て、次にスッと手を挙げたのは魔法少女。


「あの〜、私もドラゴンは自分で飼いたいとは思わなくて……もし、もっとかわいい生き物をお願い出来るなら、それがいいなって」


 ああ、うん。生き物の好みはあるよな……誰しもがドラゴンを欲しいわけじゃない。

 ただ、かわいい生き物をご所望となると……俺達の拠点周りに生息しているのをテイムしてきて譲渡するのがいいか。

 その方向で、キーナが魔法少女に確認をする。


「ウサギは好き?」

「好きです!」

「キツネは好き?」

「好きです!」

「鹿は好き?」

「鹿はそうでもないかな……なんか床ペロがチラついて」


 ……それはどこぞの杖職人による風評被害だな。


「じゃあ……出来るか分かんないけど、熊は好き?」

「あー! 熊大好きです!」


 ……そうか、熊か……じゃあ頑張ってみるか……


「じゃあ確保出来たら……どうしよう、『☆フェアリータウン☆』に連れて行けばいいかな?」

「はい! あのカフェで受け取りできるようにしておきます」


 あのカフェが分からないが、キーナが分かるらしいから問題無い。


 じゃあこれで数も足りるし分配するか……と思ったが、パピルスさんがスッと手を挙げた。


「先に確認したいのですが……検証勢でひとまとめにしている方々、クランでも無いですし、誰が受け取って誰が育てるんです? ……そもそも育成する資金の余裕あるんですか?」


 指摘された途端、検証勢は全員頭をかかえて「うう〜ん……」と呻いた。


「……金は無い」

「そうなんだよなぁ……検証のためのアイテム買うので金が無いんだよなぁ……」

「戦闘検証してるこっちも、装備に金がかかって余裕が……テイマーでもないし……」

「だからってテイマーになったら従魔の検証がしたくなって広大な牧場が必要になるのが目に見えてるし……」

「ちくしょう! なんでエフォ(EFO)はこんなに深掘り出来る要素が多いんだ!!」


 贅沢な悩みだなー


 結局、メイン参加者が論丼ブリッジで他の検証勢はほぼ見学だった事と、論丼ブリッジさんとパピルスさんが身内クランでほぼニコイチ状態らしい事もあり、パピルスさんが引き取って皆で検証する事で話が纏まった。


「まぁ、検証勢は普段から森夫婦には情報含めて色々貰っているからな……誰の所有でもドラゴンが身近になるだけありがたい」

「で、出来れば、ドリームクリエイトって事は【夢魔法】? なのかな? あれの情報欲しいなーとは思いますけど……」

「あれは今のところ専用のアイテムが無いと覚えられないですねー」

「ああー、上位種族になるときに貰う翻訳アーティファクトみたいなものかー……」


 キーナはまだキノコの存在を教える気は無いらしい。

 ……スキルが習得できるキノコを持ってるなんて知れたら面倒そうだしな。


 そして次にスッと挙手したのはカステラさんだった。


「俺もドラゴンはいいや。戦うのは好きだけど、契約するのは虫がいい。テイムはする気無いし」


 おっと、カステラさんも辞退か。

 カステラさんはいつでも同盟関係で連絡がとれるから、お礼はまた今度ということになった。


 これで引き取り先は……


 俺とキーナ。

 麗嬢騎士団。

 モロキュウ冒険団。

 マルドゥーク。

 パピルスさんと論丼ブリッジさんと検証勢。


 この5組になった。

 ……まさか余るとは。だが残り2個を何処かに追加で渡すのも不公平だ。


 貰ったのが俺達だから、判断は俺達に委ねられている。

 ……託された物を売るのは気が引けるから、どうせなら日頃世話になっている相手に打診したい。


 なので俺達は、とりあえず同盟チャットに投げてみた。



キーナ:ドラゴンの卵欲しい人ー


ラウラ・アステロイド:えっ、ドラゴンの卵ドロップしたんですか!?

ラウラ・アステロイド:ど、どこのドラゴン倒しました!?


キーナ:倒してない、報酬で貰った感じー


ラウラ・アステロイド:あ、な、なんだそうでしたか

アルネブ:私はいらないわー。もっと変な生き物が好きなの。

ラウラ・アステロイド:あ、卵は私もいいです。

ド根性ブラザー:自分はいずれドラゴンゴーレムを作るので必要ない!!

夾竹桃:場所もお金もなーい

夾竹桃:あとドラゴンに噂全部もっていかれそうだから相性いまいちな気がするからいらなーい

セイレーン(♂):あ、オレっちは自前で縁が出来そうなんで大丈夫ッス!



 はい。

 実に我が道を行く同盟仲間達だ。


「……じゃあ、俺は戦隊さんの所に頼みたい。フリマとか、それ以外でも世話になってるし」

「僕はガルガンチュアさんのグリードジャンキーにお願いしたいな」


 俺達の希望にその場の全員、異議なしで最終決定。

 戦隊とグリードジャンキーには、お嬢様に卵を預けて打診してもらう事になった。


「わぁー、ドラゴンの卵ですにゃ! 楽しみですにゃー!」

「帰還したら、誰の所有にするか相談せんとな」


「うちはカトリーヌお嬢様で決定ですわ」

「……本当によろしいのですか?」

「いいえ! お嬢様しかおりませんわ!」

「ですわ!」

「ですわ!」


「ヒュー! ドラゴンエッグだぜ!」

「ロマンの塊!」

「帰ったらジャンケンな!」


「私は帰ったら何処で育成する場所を決めますので、検証勢の皆さんは育成方針を相談しておいてくださいね」

「あ、学会が終わらなくなるやつだ」

「早めに多数決にした方がいいな……」

「動画も撮ろう、ジョンもいるし」

「お、呼んだか?」

「駄犬はお呼びじゃないですー!」


 賑やかだなぁ……

 とりあえずこれで、今回の目的は達成だ。


 キーナが俺の背中からスルリと降りて、締めに入る。


「じゃあ、今日はご協力ありがとうございましたー」

「……ありがとうございました」


「こちらこそ!」

「楽しかったですわ」

「むしろドラゴンの卵にこっちが礼を言うわい!」

「また面白い事あったらよろしく!」


「ヒトの子、助かったトゲー」


 これにて解散。

 ハリネズミ幻獣に見送られながら、俺達は帰路についたのだった。


次は掲示板回のため、1日空きます。

※いらん数字が挟まっていたのを修整。

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― 新着の感想 ―
掲示板出たからこちらに書き込みしますが、名前覚えるのが苦手なキーナさんが『ガルガンチュアさんのグリードジャンキー』って言った瞬間に「お!?」って思いました。 ジャック君達が遊んでもらうたびに「こんなこ…
ラウラさんドラゴンワンパン狙いっぽいですよね ケチャップは美味しいから色々試したくなるのは仕方ないよね
戦隊の誰かが「フリマやっててよかったー!」みたいな事叫んでそうw
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