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キ:鉈を持った怪人と行く


 僕と相棒は街に出たついでにNPCの鍛冶屋に寄ってみた。


 ジャックの家になった元コンテナハウスは調理場がそのままあるけど、調理器具は僕らが拠点に持っていっちゃったから。

 露天広場にも調理器具はあるけど、『仕切りのついたフライパン』とか『波々に切れる包丁』とか、そういう初心者にオススメしていいのかわからない物が多くてね……ジャックにはちょっと早いと思う。


 NPCの店にはホームセンターとかで春に見かける『新生活応援セット!』みたいな鍋とか包丁とかの一式セットがあったから、それを購入。


 ……開拓勢は、自分の開拓地にNPCが来たらこうやって必要な物を買い出しに来るのかな?

 そりゃNPCに愛着も湧くよね。

 うちのジャックはあと何が必要かなぁ……あ、そうだ。


「相棒、ジャックの武器も買ったほうがいいよね?」

「あー、そういえば今って作業用のナイフ持たせてるだけか」


 ジャックの武器は何がいいかなぁ?


「鎌のイメージはあるけど、二足歩行初心者に鎌は難易度高そう」

「確かに」


 色々悩んで、片刃で刃が長めの鉈を二本買うことにした。


「鉈二刀流?」

「うん。なんだかんだジャック・オ・ランタンって怪人だからキラー系かなって」

「まぁそう」

「だったら鉈は似合うよ」

「鉈に対する謎の信頼」


 そういう意味では斧も似合いそうだけどね。細身だから身軽な方が良いと思う。

 回復が出来ないならね、当たらなければどうという事はない戦法を取ればいいんだ!


「それワンパンで死ぬやつな」

「オワタ式だねぇ!」


 頑張れジャック!



 * * *



 帰ってジャックに調理器具と鉈を渡すと、ジャックは大喜びで受け取ってくれた。

 いやぁ可愛いねぇ〜


 ゲーム内時間は真っ昼間。

 せっかくだから、森に出かける事にした。


 僕と相棒とネビュラとジャック。

 フッシーとコダマ爺ちゃんがお留守番。

 ……あと、なぜだか霊蝶ちゃんが一羽、僕の帽子にとまって付いてきた。


 ピクニック気分でお弁当も持って、いざ出発。


 メインの目的はジャックの鉈の試し切り。

 あとは適当にお散歩と、気になった素材の採取。


 白と青緑の森は基本的に静かで、葉擦れの音と僕らの足音がよく響く。


 少し歩いて、さっそく見つけたうたた寝ウサギに、ジャックは嬉々として飛び掛かった。


「よいしょオッ!」


 叩き斬るって表現がふさわしい攻撃は、首を一撃で切断。

 お見事お見事。


「ジャック、体の動き良くなったね」

「いっぱい練習しタ」


 最初なんて階段から転げ落ちてたのにねぇ?

 えらいえらい。


「鉈はどう? 使いやすい?」

「ウン。動きやすくて気に入っタ」


 なら良かった。


 初心者の付き添いみたいな気分でジャックのウサギ狩りを見守りつつ、山の方面に歩いて行く。


「あ、キツネだ」



 宵闇キツネ Lv12



 なんだか前に見た時よりレベルが高めの黒いキツネは、こっちをチラ見するなり一目散に逃げてしまった。

 襲撃の時とは挙動が違うね。

 まぁうたた寝ウサギだってアクティブになってたんだから、それはそうか。


 時々イチコロキノコを採りながら山に近づくと、膝の高さを超える藪が多くなって、遠目に鹿の姿が増え始めた。



 夢喰い鹿 Lv17



 ……うん、レベルの数字的には今の僕と相棒でちょうどいいくらいの相手。

 初心者状態のジャックを連れてだと危ないかもしれないね。


「どうする?」

「俺はどっちでもいいよ」

「オレ戦ってみたイ!」


 おお、ジャックがノリ気MAX。


「じゃあ一体やってみようか」

「オッケー」


 まずは相棒が遠距離から矢を入れる。

 こっちに向かってくるところを僕と相棒で撃って、距離が近くなったらジャックが斬りかかる。

 そういう流れでやってみることにした。



「【追い風撃ち】」


 相棒の初撃。


 風に乗って放たれた矢は勢いよく飛んで……鹿の首を貫通し、鹿はポリゴンになって消えていった。



「「……あれっ?」」

「余裕じゃーン」


 ……僕も試しに鹿を撃ってみる。


「【ツリークリエイト】!」


 鋭く伸びた木の根はあっさり鹿を串刺しにして……鹿はポリゴンになって消えていった。


「あれー?」

「余裕じゃーン」


 まったく出番のないジャックが不満気に口を尖らせる。

 相棒が苦笑いしつつ頭をガシガシ掻きながら言った。


「……初回防衛で必死だった印象が強かっただけで、あの鹿あんまり強くないな?」

「マジかー」


 あれからレベルも上がったし、装備も強くなったもんね。

 割と拠点でダラダラしてる僕らだけど、一応成長してるんだなぁ。


「じゃあオレが鹿連れてクル! ここで待ってテ」


 相棒と同じく俊敏メインで育ちつつあるジャックが、そう言って森に駆けて行く。

 近接役がいると、こういう狩りの仕方もできるから助かるね。

 ただジャックはまだレベルが低めだから、そこは気を付けないと。


 ……なんて考えてたら、森の奥から「【リーフクリエィトォオオ】!」って声が聞こえてきた。


「……今のジャックだよね?」

「ジャックの声だったな」


 なんかあの……足音が複数聞こえるんですが?


 恐々としていたら、ジャックが奥から駆け戻ってきた。



「へいお待チィイイイ!!」



 ──ディァァアアアア!

 ──ディァァアアアアアアアア!



「多い多い!!」

「鹿さん御一行ー!!」


 鹿の鳴き声って「ディァア」だっけ?

 頭の片隅でそんな事を考えながら、僕と相棒は必死でジャックを追う鹿を撃ちまくる。

 まぁでもこの前のリーフボアよりマシかな! あそこまで多くないし!



 最終的に、一回り大きな 夢喰い鹿・リーダー Lv20 が怒り狂ってやってきたのを、ネビュラと同化した相棒が短剣で首を掻き切って倒した。

 めっちゃかっこよかった。好き。



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「鹿さん御一行ー!!」のスピード感すこ
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