キ:たくさん見たら作りたくなるのが本能のタイプ
さて、相棒の弓の魔武器の擬態確認も済んだ所で……今日の僕にはやりたい事があるのです。
「相棒、今日は建築がやりたいです」
「ほう?」
最近ねぇ、あっちこっちの開拓地を見てきたから、開拓ゲーム好きとしては創作意欲が湧くってもんですよ。
「じゃあ敷地広げて何か建てる?」
「ううん、建てない」
「うん???」
苦笑いしながら疑問符を飛ばす相棒に、僕は人差し指をピッと立てて告げる。
「白夢草のクラウンちゃん、だいぶ大きくなったじゃんすか」
「ああ、拠点の鉢植えも葉っぱが増えてきてたね」
毎回ログアウトの時に『元気な姿が見たい』って夢を叶えてもらって、育成を試みていた二体目の夢魔。
あれから少しずつ、成長度に合わせて『会話がしたい』とか『動く練習をしたい』とか願い事の難易度を上げていた。
その甲斐あって、小部屋くらいの空間なら自由に出来るくらいの強さにはなったらしいのだ。
「だから、クラウンちゃんのレベルアップも兼ねて、夢の中にお店みたいなモノを作りたいなーって」
「……レベルアップも兼ねるってのは、どんな風に?」
「『冒険者だけがひとやすみして買い物が出来る夢領域を作って、時々、眠っている元気な冒険者をランダムで招き入れて欲しい』ってお願いするの」
「……なるほど、そうすれば『夢の牢獄坑道』みたいに迷い込む場所になる、と」
「そうそう。夢魔が支配してる夢領域だから、僕らの拠点に繋がる事も無いし、迷惑行為するようなら追い出してもらえばいいし」
そういう感じの指示を出しておけば、プレイヤーを招き入れる度にクラウンちゃんは『そういう夢を見せて』っていう僕の願いを叶える事になる。
つまり、僕らがログアウトしている間にジャック達が自主的に狩りに出てレベル上げをしているのと同じように、クラウンちゃんもログアウト中に少しずつでも経験値が入るんじゃないかなっていう計画よぉ!
それを聞いた相棒は、「ふむ……」と顎のあたりに片手を添えて、少し考えてから口を開いた。
「……もし出来るなら『夢の牢獄坑道』に繋がる道とかもあった方がいいかもしれない。そっちに行きたいのにこっちに連れてこられたって苦情にならないように」
「なるほど、それは出来るかどうかクラウンに訊いてみよっか」
そしてそんな改善案が出てくるって事は……
「やってみてもいい?」
「まぁいいんじゃない」
やったね!
* * *
そうと決まれば、まずは関係各所との相談から!
夢のミミズク幻獣のミミーちゃんと、戦闘系夢魔のペタちゃんをアドバイザーとして連れて、白夢草のクラウンが作り出した夢の中へ。もちろん相棒も一緒に向かう。
そして夢の中で、僕の考えている夢の中の部屋を実行しても問題ないかどうか、説明して意見を聞いてみる事に。
眠って、夢の中へ入る。
何度か来ている寝室の明暗が反転している夢。
二人でベッドの上に起き上がると、周りには一緒に夢に入った三匹の姿。
今の覚醒状態でのクラウンは、鉢植えにモサッとクローバーの葉っぱがわさわさ生い茂っていて、花が3つ咲いている。
これが夢の中になると、葉っぱの大きさなんかはまだ同じくらいだけど、葉っぱと花の量は10倍くらいになって、地面を這う茎をニョロニョロ動かして蛇みたいに動く事が出来るようになっていた。
「デカくなったなー」
「でしょー?」
「……! ……!」
最初はあんなに小さかったのにね。
しかも、夢の中だと別に地面に根付いていなくても平気らしくて、そこら辺を自由にウニョウニョと動き回っている。
でもそこそこ大きくなった今も、声を出すのは苦手みたいで、よくよく耳を近付けないと何を言っているのかは聞き取りにくい。
今も嬉しそうにワキョワキョとスクワットみたいな動きをしているけど、声は聞こえなかった。
「今日はね、新しくお願いしたい事があって」
「!」
自分の栄養になる事だからか、クラウンは嬉しそうに葉っぱをピロピロしている。
とりあえず、連れてきたミミーちゃんとペタちゃんも交えて、僕のやりたい事を説明する。
「どうかな? 出来そう?」
「ペタちゃんは問題ないと判断する。クラウンの力も、領域を小さくすれば足りる」
「!」
「ホホーウ……夢の幻獣としても異論は無し。冒険者のみと絞るのならば、主の敵が攻めてくるのも防げよう」
よしよし、皆のお墨付きなら大丈夫そうだね。なんたってその道のプロだから。
「じゃあ後は店を作ればいいか。……どんな感じにする?」
「ううーん……まずは部屋がどのくらいの広さなのか確かめてから考えたいかな」
空間の広さによって、家具の大きさとかも決まってくるし。
と、いうわけで……クラウンへ、過不足のないように空間の条件を指定する。
なんといっても……エフォの悪魔だからね。融通の効かない子だから。プログラミングかなってくらい条件をきちんとしておくのが大事。
まぁ、もしも他のプレイヤーに迷惑かかりそうな感じならシステムから警告が来るとは思うけどね。
今の所は、特に問題はなかったみたいで……寝室の夢は徐々に消えて、僕らがいる夢はクローバーの葉っぱをビッシリと印刷したような模様の壁に四方を囲まれた小部屋に変化した。
「おおー……なるほど、小部屋だね」
「あれだ、狭い立ち食い蕎麦の店」
「あー、細いスペースに差し込んであるような立地のお店ね!」
「そう」
そうだね、動画で見た店とか、駅の構内で通りがかった時にガラス戸からチラッと中を見た店とかがこのくらいの広さっぽかった。
「……つまり、ちょっと座って飲み物のんで、無人販売の棚で買い物して、扉から牢獄坑道に向かうくらいならギリギリいける広さなんじゃない?」
「まぁ1人2人迷い込むくらいなら……なんとかなるんじゃないか?」
「だよね!」
よしよし、それなら希望の運用が出来そうだぞー!
僕はワクワクする気持ちそのままに、アイデアを書き留める紙とペンを取り出してスタンバイ。
どんなお店にしようかなー?
「……ちなみに、飲み物って何出すつもりでいる?」
「え? 相棒がたまに作って売ってる知恵のリンゴジュース」
「デスヨネー……怪しいNPCの隠し部屋かな?」
「何をいまさら」
謎のNPCごっこしてる僕らの店なんて、怪しいNPCの隠し部屋になるに決まってるじゃないですかー
目指すは猫の取り替えっこ屋さんみたいな不思議要素ポジションだよ!




