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キ:ジャックの家と拠点の鍛冶場、読書を添えて。


 相棒が仮眠に行った。

 夜中起きてたみたいだからねぇ、むしろ一安心。

 僕は朝こそ弱いけど、元々不眠とは無縁な上に、相棒に包まれると安眠度200%って感じでスヤァッと寝るからなぁ。半分分けてあげたいよ。


 さて、コンテナハウスを改造したジャックのお家が完成。


 真四角豆腐建築を半分飲み込む感じで木を生やして中を螺旋階段に。

 そこから二階と屋根とかを追加してみた。

 内装も綺麗に整えて家具も追加、ベッドも新しく森の木で作ったよ。

 僕らの拠点よりはかなり小さいけど、小さいなりにまとまったカワイイ家になったと思う。


「ジャック的にはどう?」

「イイ感ジ!」


 オッケーなようでなにより。


 そして今回は、もうひとつ作りたい物がある。

 それは、鍛冶場。


 僕も【鍛冶】スキル持ってるし、相棒もあればなんだかんだ使うと思うんだよね。

 ジャックも、元は鍛冶の炉の精の成りそこないだけど、諸手を上げて賛成した。未練というよりは『地元の物嬉しいです』って雰囲気だから大丈夫そう。

 拠点内の部屋に作ると共有で使いにくいし、あとクソ暑いだろうし、万が一火事になったら木製の拠点は全焼しちゃう。

 だから屋根は付けるけど、一方向が大きく開いた鍛冶場を作ろう。


 建築にテンプレがあるから専門知識が無くても大丈夫。

 素材はレンガと革。

 革なんて何に使うのかと思ったら、フイゴ用だった。


 はい、トンテンカン。完成。


 試しにフイゴを動かしてみる。

 ……んんん? 新品なのに動きが悪いぞ?

 あっ、これが例の『道具動かない問題』かぁ!

 って事は、この炉にも精が生まれれば絶好調になるってことだね。それまでは火魔法で頑張ればいいか。

 どうせまだ金属素材なんて持ってないし!


「……ねぇジャック、この炉にもそのうち精が生まれるかな?」

「生まれると思ウ」

「ってことは、ジャックの弟分になるのかな。仲良くできるといいね」

「オオ! オレの弟分!」


 お互い思う所があるかどうかなんて、生まれて出会ってみないとわからないからね。

 どうせなら、仲良くなれたら良いと思う。


 嬉しそうに炉を撫でるジャックを見て、そんなことを考えた。



 * * *



 さて、相棒も仮眠中だし、システム的に大丈夫だとはわかってるんだけど、あんまり大きな音は立てたくない。


 だから木工でロッキングチェアを作って、僕も読書する事にした。

 せっかく新しい本買ったんだしね。

 適当な布を膝掛けにして、たまに霊蝶が体に止まるのを視界の端に見つつランプの灯りでの読書。

 最高かな?

 ジャックは寝る時間なので、改築した家で就寝です。


 三冊もあるけど、どれもそんなに分厚い本じゃない。

 個人的には分厚くてもいいんだけどねー。ゲーム内書籍だから、塩梅が難しそう。


 最初に読んだのは、さっきまで相棒が読んでた『初めての魔道具』


 へぇ~、石に魔法を籠める、かぁ……ロマンだねぇ! ファンタジーって感じ!

 適当な石ころを拾って試してみよう。


 イメージは湧き水。

 発動キーは『軽く叩く事』


「【アクアクリエイト】」


 ……うん、ぱっと見は何の変哲もない石ころのままだね。

 これを指先でぺちっと叩く。


「お、おっ? ……おお~」


 水が出た!

 石ころからダバダバと水が溢れてくる!

 でも属性が合ってないんだろうね、すぐ石が弾けて消えちゃった。


 でもこれ面白い。【刻印】とはまた別ベクトルのファンタジー要素でテンションが上がるね!

 戦闘にも家具にも使いどころは多そう。

 それこそ開拓だったら水路とか池とかも作りやすくなるんじゃないかな。


 なお、この本は作り方の基本を説明しているだけで、具体的な魔道具の構造とかは載ってない。

 自分で考えて作ってって事だろうね。



 脳が勢いづいた僕は、そのまま次の本に突入。

 二冊目は『刻印と魔道具との組み合わせ』


 何々?

『刻印を魔道具に使用する場合は、主に石に籠めた魔法の効果にプラスアルファするような形で用いられることが多い』……なるほどなるほど。

 つまり刻印は石に籠めた魔法に干渉できるんだ。

『威力増幅』の紋を、攻撃魔法を籠めた石と上手い事組み合わせれば威力が上がるわけだね。

【魔道具製作】と【刻印】と、両方使えた方が効果の高い代物が作れる、と。

 これは生産ガチ勢は大変だぞぉ~


 僕も一応生産職なんだけど、それをメインで稼いでるわけじゃないから気楽なもんよ。他人事みたいに心の中でエールを送っておく。ガンバッテ。



 割と薄かった二冊目をさくっと読み終えて三冊目。

 一番厚い本、『刻印について』


 これは図書館にあった刻印図鑑とはまた違う。

『そも刻印とは何か』みたいなガチの読み物だった。

 フレーバーテキストかな? こういうのは大好物ですよ。


 ……へー

 …………ほー

 ………………ふ~ん


 …………ん?


 ちょっと待って? 今さらっと重要なこと書かれてた気がした。


 内容をざっくり要約すると『刻印とは、古い魔法の形態であり、自由度の高い今の魔法が確立した直後に一時廃れた技術』って事らしい。

 でも今の魔法は属性がメインだから、どの属性にも含まれない部分は刻印でしか扱えなくて。

 それに気付いた時にはもう、刻印のいくつかは失われてしまって取り戻せなかった。


 よく聞く過ちだねぇ。人間は愚かってやつ。


 で、肝心なのはここからよぉ!

『失われた刻印の中には、魔法を無詠唱で発動するのに必須となる紋が含まれていた』だって!!


 無詠唱!!

 みんな大好き無詠唱のお時間です!!


 なーのーにー、もう馬鹿っ!

 どうしてそんな大事な物までポイしちゃったの!?

 人間は愚か!!


 魔道具もある意味無詠唱ではあるんだけどさー、ちょっと違うよね。

 えー、無詠唱したーい。

 でも本を最後まで読んだところで『いつか失われし刻印を取り戻せる事を祈る』で締められて終わり。

 無詠唱できないのかなー、やりたいなー


 がっかりしながら本を閉じた時だった。



 ──ロングチェーンクエスト『失われし刻印』を受諾しますか?



 こんなん受けるに決まってるじゃんすか!


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― 新着の感想 ―
やっぱりルーン文字みたいな感じの代物だったんか
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