キ:騎士団長よりイベントのお誘い
ログインしました。
無詠唱クエストを完了してから数日。
魔導書の無詠唱以外の所も読み込んだり、書かれていた魔法を使って色々試したり、気分転換に狩りに行ったり、簡単なクエストでイベントポイントを稼いだりと、僕らはマイペースなゲーム日常を送っている。
そんなある日、拠点に珍しい差出人の書簡が届いた。
「ラッセル……騎士団長さんだ」
「おや珍しい」
いつもお城からの連絡は魔術師団長さんだもんね。
「えーっと、内容は……もうすぐ開催される『国王陛下の来訪腕試し』について」
「ああ……あれ」
春のアニバーサリースケジュール、後半のイベントのひとつ。
本国から、なんと国王陛下がやってきて、騎士団長をボコボコにするついでに闘技場でプレイヤーとも手合わせしてくれて、それを観戦も出来るっていうこの催し。
ただし、いくら王様が強くても流石にプレイヤー全員を相手にする事は出来ないから、レベル50以上じゃないと挑戦資格が得られない。あ、観戦するだけなら入場にレベル制限は無いよ。
初心者向けのイベントは、日ノ出桜の都で街道敷設をやってるから、こっちは上級者……それも戦闘に力を入れてるプレイヤー向けのイベントだね。
順位とか景品とかが無いからか、今回は匿名参加もオッケーらしい。
そして……なんと国宝でもある特殊な剣を持ってきてくれて、それを使う王様と手合わせするとめっちゃ経験値貰えるそうですよ。
「たぶん王様は騎士団長君を鍛えに来てるよね」
「だろうなぁー」
頑張れ三男坊。
……で、それはそれとして騎士団長君から僕らへの用件はー?
「……最近不穏分子が多い中でこういう催しをするのは、王様が自分を餌にそいつらを釣り上げるつもりなのが理由のひとつだって」
「王様がそれやるのかー……」
「騎士団長君が言うには、もしも目論見が当たって敵が来て乱戦とかになった場合……王様は多分なんともないと思うって」
「なんともないのかよ」
王様、レベルいくつなんだろうね?
まぁレベル50超えのプレイヤーをちぎっては投げちぎっては投げしようとしてるくらいだから、だいぶ強い設定なんだろうけど。
「でも観客を守って避難させたりとか襲ってきた敵の確保とかでそれなりに実力のある人員が欲しいから、当日は現地に来てもらえると助かりますって」
「あぁ、王様を守るんじゃなくて、そっちなんだ……」
「つまり守る必要のある観客がいるのかな?」
「NPCも見に来るって事か」
「もちろんその場で王様に挑戦していただいて構いません、とも書いてあるねぇ」
「いいのか……」
──クエスト『腕試し会場の警備』を受諾しますか?
ひと通り目を通して内容を二人で共有すると、クエストの受諾確認のシステムウィンドウが出てきた。
こういうのが出てくるって事は、メタ的に考えて何か起きるのは決定してるんじゃないかな。それも敵対組織関係の事がさ。
「どうするー? めっちゃヒトは多そうなイベントだけど……僕は王様の戦い直接見に1人で行ってこようかなーって思ってたから、行きたいな」
「ふーん? それは何か理由が?」
相棒の問いかけに、僕は「うん」と頷き返す。
「最近のメインストーリーって、戦う相手がヒト型のNPCじゃんすか」
「だな」
「で、このイベントの書き方だと、王様めっちゃ強そうじゃんすか」
「うん、強いんだろうね」
「めっちゃ強いNPCのヒトの戦闘を直接現場で見て、どれくらい怖いか確認しておきたいなーって……」
「……なるほど?」
何せ心がチキンなものでね……敵対組織とのシリアスシーンで腰抜かしたくないからさ。こう……とっても強いらしい王様で、威圧的なものを体験しておきたいのです。
ラリーストライクの時みたいに動画は公式から上がるらしいけどね、やっぱり画面越しと直視とじゃ臨場感が違うから。
前に巨大サメに突っ込んだ事あっただろって? あの時はブチギレモードで頭真っ白だったからノーカンだよ。悪い死霊使いは言動が小物過ぎて迫力とか皆無だったし。
「……じゃあ王様手合わせ希望するか?」
「いやそこまではいらないよ、しないよ、しなくていいよ。みんなが観戦するのに、ぶっつけ本番で怖くて腰抜かしたらどうするのさ」
「伝説になる」
「やだー! そんな腰抜け伝説いやだー!」
現地で空気を感じるだけでいいんですー!
「そう言う相棒はどうなのさ? 王様と手合わせ」
「……したいと思う?」
「思わない」
「だろ?」
だって闘技場で1対1で正面切って向かい合う状況がそもそも相棒の得意とする戦闘スタイルじゃないもんね。
「じゃあクエスト受けて観戦しに行く感じか」
「だね。かなりヒトが多そうだけど……相棒は大丈夫?」
「まぁ……出来るだけ端の方にいよう」
「オッケー」
じゃあクエスト承諾っと。
そして承諾した所で、同盟チャットの通知が出た。
「ん? ……カステラソムリエさんだ」
「なんて?」
「……『王様の腕試し、皆は参加するか?』だって」
「おや、タイムリー」
カステラさんの所にも警備クエスト来たのかな?
「……カステラさんは参加、ラウラさんも参加、アルネブさんは未定、セイレーンさんは観戦、夾竹桃さんは未定……あ、ド根性さんも参加」
「わぁお」
匿名OKのイベントだからか、同盟内でも参加が多いね。
ド根性さんはもしかしてゴーレムで王様殴りに行くのかなぁ……? え、ちょっと見たい、気になる。あ、僕ら観戦しに行くから普通に見られるわ。
「この感じだと、知ってる高レベルのヒトがそこそこいそうだね?」
「かもね」
知り合いが多めなら、NPCの観客が多くてもちょっと安心かな?




