キ:夢の検索ワード
ミッション遂行のための砦を確保したものの、肝心の潜入先が見つからないと相棒のカッコいいスニーキングも見れやしない。
というわけで、僕は気合を入れてミミーちゃんに夢の探索の指示を出した。
「じゃあミミーちゃん、仕事の時間だ!」
「ホー……主は如何ような夢を望む?」
「えーっと……悪夢の入った物を食べた相手を無理やり拉致してきて? その相手を目隠しして縛りつけて? それをじっくり眺めて楽しんでそうな……夢?」
「……ホホーウ?」
「……楽しんでるかどうかは分からないから省こう」
そうだね、字面がだいぶ危なかったね。エフォは全年齢の健全なゲームです。
「もし見つけたら、ちょびっと、覗き見出来る程度の穴をまずは開けてくれる? その穴から向こうの様子を確認して、それで入るかどうか決めるから」
「ホーウ」
コクリと頷いたミミーちゃんが、首をグルグルと回して夢の検索を始めた。
何故かアヤカシ達も面白がって、一緒にグルグルと……首は回らないからバレリーナみたいにキャラキャラ笑いながらクルクルと回っていた。
(かわいい)
(幼稚園かな?)
最終的にアヤカシ達は、コマを戦わせる遊びみたいに衝突して倒れてケラケラ笑っていた。
「ホーウ……恐らくは、望みの夢に近しいと予想する」
「……拘束されて観察される夢を『望みの夢』って表現されるの、ちょっと微妙かもしれない」
「……だろうな」
「ホーウ?」
「何でもないよ、ありがとね」
道を繋いでもらう前に、キャッキャしているアヤカシ達にひと声かけておかないと。
「じゃあ、道の向こうに誘拐犯がいるかどうか確認するから、その間は静かにしててね」
「「「「「はーい」」」」」
立てた人差し指をシーッと口の前(仮面で見えないけど)に持ってきてそう言うと、アヤカシ達も真似をしながらクスクス笑って返事をしてくれた。うん、絵本に描かれた子が多いからか、和風のアヤカシよりも幼い感じがする。
「じゃあミミーちゃん、覗き穴だけ開けて、開けたら静かにね」
「ホー」
(……拘束されて観察される所を覗き見するのか……)
(字面だけ見るとド変態じゃんすか〜、やだぁ〜)
そんな事実から目をそらしつつ、ミミーちゃんが開けてくれた覗き窓に近づいた。
(どれどれ……)
穴の向こうに見えたのは……見覚えのある緑色の部屋で、見覚えのある蔦に巻き付かれている、見覚えのある黒い鎧のヒトだった。
「クッソがぁああ!! テメェは絶対に茹でて酢醤油で食ってやらぁあああ!! ──オラァッ!!」
黒鎧の……そう、ガルガンチュアさんが、目玉みたいな宝石のある槍斧を一閃。
迸る衝撃波に慌てて顔を引くと、スコーン!と額にデコピンみたいな突風をもらった。
「ミッ! ミミーちゃん、閉じてっ」
「ホーウッ」
小さな覗き穴はすぐに閉じた。……気付かれてないといいけど。
「……ハズレだった?」
「うん……いつぞやのウツボカズラに食われて蔦に拘束されてる悪夢を見てるっぽいガルガンチュアさんが暴れてた」
「わぁ……」
キーワードは近いんだけどね……惜しかったよ。
あれは『悪夢の入った物を食べた』ってよりは、『食べられて悪夢に入れられた』って感じ。
「ガルガンチュアさん……あの巨大ウツボカズラ食べようとしてたよ」
「……マジで?」
アレ美味しいのかな? ……っていうか食べられそうな物をドロップしたっけ??
でも、巻き付かれてた蔦を切り飛ばしてたから……そろそろレベル差で悪夢に勝てるところまで、ガルガンチュアさんは来てるのかもしれない。
* * *
そんな感じでニアピンを何回かやり過ごして……僕らはようやくそれっぽい所を見つけた。
覗き穴の先は、薄暗い部屋。
その中央に、ヒトが横になれそうなサイズの四角い台が置かれている。部屋の壁際は棚や机がいっぱい。
うろうろしている見張りとかは……いない!
僕は振り向いて、皆に頷いて見せた。
「それっぽい所みつけた」
ヒソヒソと無声音で伝えると、アヤカシちゃん達も静かに喜んでくれた。
「おお、ついに!」
「では、こちらの護りはお任せを」
「行ってらっしゃいませ」
そして相棒と目を合わせる。
(じゃあ行こっか)
(オッケー、光学迷彩のスイッチ入れて)
(はーい)
スイッチオン。
僕と相棒の姿が、ドゥルドゥルに波打つ迷彩に変わる。
ネビュラとミミーちゃんも不可視になってついてきてもらって、ペタちゃんは小さめの姿で僕にくっついて隠れた。
そして広げて貰った夢路から、中へと入る。
降り立った場所は、中央の台を見下ろすような場所。
1階と2階が吹き抜けになっているような部屋で、ここは2階の壁にグルリとつけられた通路みたいな所になるのかな? 真ん中の診察台みたいな物を、上から見下せる。
下へと下りる階段もあるし、他の場所に続いていそうな扉もいくつか見えた。
夢路は覗き穴のサイズに戻して貰った。
すぐに撤退出来るように開けてはおきたいけど、敵に見つかったら厄介だからね。
(……とりあえず近くに気配は無い。でも、相手も【隠密】してたらわからないかもしれない)
(オッケー)
さてさて、どこから調べてみようかな?
無限ゾンビマンが夢の中でアヤカシ達と出会えていないのは、ゾンビマンのせいではなく、逆に主人公夫婦がアヤカシに出会いやすい条件が揃いすぎているためです。ゾンビマンが正常です。神社から迷い込んだ時と同じですね。
裏ピリオ絵本のアヤカシは、なんか自分達と親和性が高そうな上にやたら知名度の高いヒトの子が、得意分野でキョロキョロしているのを察していそいそと近寄って来ました。
※追記:明日はお休みして光学迷彩使用のスニーキングに目を凝らしてきます。




