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夫婦でほのぼの開拓VRMMO  作者: 島 恵奈華
2年目

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幕間:悪夢の花

十角館の殺人を読んできました。面白かったです。

再開します。


 ゲームの攻略サイトを運営している『無限ゾンビマン』のアバター名は、攻略サイトの共同運営者がつけた運営者名をそのまま使用した物であった。


『隊長ー! 何回お死にになられるんですかー! 無限ゾンビであらせられますかー!?』


 その名の通り、彼はゲームの検証のために、ものすごい勢いで死ぬ。

 そしてゾンビのようにリスポーンして、また死ぬ。


 とはいえ、死に過ぎると他プレイヤーの興が冷めるような場面では死なないように心がけている。ゲーム内では1検証者であり1プレイヤーなのだ。地雷プレイヤー扱いにならないよう、そこは弁えていた。地雷になったら攻略サイト炎上しちゃうし。


 そんなに死んでばかりで嫌にならないのかと時折訊かれるが、それを厭わない気質であるからこその無限ゾンビマンなのである。


 だがまさか、それがここまで裏目に出るとは思わなかった。


「隊長ー! そろそろ自害用の毒薬の数がマズイでありますー!」

「そうなんだよねー」


 今、彼ら攻略サイト運営コンビパーティ、ヒューマンの『無限ゾンビマン』と、アルマジロの獣人『エンドレス鑑識マン』は、とある夢の中で逃げ惑っていた。


 森夫婦が怪しい錬金術士の存在を夢の中で確認したという話を掲示板で確認して。それならば、夢のミノカサゴ幻獣を得ている自分達ならば、同じように夢の中の情報源にアクセス出来るのではと思い付いたのだ。

 攻略サイト用にメインで進めている事柄の合間になのでそれほど時間は取れなかったが、少しずつ少しずつ幻獣を街に連れ出してヒトの子を学習させては夢の捜索を続けて、ようやく見つけたそれらしき夢。


 そこで二人は、行商人パピルスから出回った人相書きの人物とそっくりな服と一緒に、イベント開会式で出回っていた飴玉とその材料らしき素材を見つけた。

 大手柄だ。

 証拠としてスクリーンショットを撮り、現物を確保した。動画だって撮影中だ。


 ただ、その後で遭遇した相手が悪かった。


 夢魔。

 他の夢と違って夢の主がいないにも関わらずこうして作業場として夢が維持されているのは、この夢魔の力なのだろう。


 そしてその夢魔のレベルが高すぎた。

 普通に戦闘勢のトップでも勝てない高みだ。


 咄嗟に逃げ出して、そして逃げ込んだ先の部屋で、他の組織と同じくプレイヤーを生贄的なモノにする時に使われる魔法陣と同じ物が描かれていた。

 同じ物という事は、裏で繋がっている可能性が限りなく高い。

 この錬金術士達も敵対組織のひとつで決め打ちだ。


 慌てながらもスクリーンショットに収め、そこで夢魔に追いつかれた。


 このまま生贄にされるわけにはいかない!


 躊躇無く、二人は自害用の毒薬を口にした。

 契約している夢のミノカサゴ幻獣が時間稼ぎを買って出て、そのまま死に戻るのを確認。と、同時に二人のHPがゼロになる。


 二人はプレイヤーだ。

 夢だろうが通常フィールドだろうが、死んだら登録拠点でリスポーン。

 ……そのはずだった。


「……なっ」

「はぁっ!?」


 リスポーンしたのは、さっきまでいたのと同じ夢の中。


 そんな馬鹿な。

 ステータスウィンドウを確認。

『夢領域の虜囚』という、見たことの無いステータスがあった。


(十中八九、この夢魔の仕業なんだろうな……)


 死に戻りが常套手段になっている無限ゾンビマンだからこそ、ゲーマスAIが新しい試練として『自分の意思で死に戻れない』という状況を作った可能性は高い。

 戻れるとしたら、何かしら打開策を見つけるか、あるいは生贄にされて敵対NPCに力を提供してしまった後になるのだろう。


 二人は何度も何度もトライアンドエラーを繰り返した。


 追い詰められて道を誤ったと判断すれば即座に自害用の毒を(あお)ったが、この夢の中の錬金術研究所は悪夢と呼ぶに相応しく迷宮のように複雑だ。


「隊長ー! どうしますー!?」

「うーん、出来るだけマップ埋めるように逃げてるけど……毒が切れてなお追い詰められたら、諦めて生贄かな」

「この状況で脳内マッピング出来るのマジ頭おかしいわー! 隊長が死んだら自分は出来るだけ抵抗しますんでー!」

「よろしく」


 逃げ続けて、そろそろ動画の録画も容量が限界だ。データを整頓してから始めるんだった……痛恨のミスに歯噛みしながら、システムからの録画停止を操作する。


 逃げて死んで逃げて死んで逃げて死んで……またも行き止まりの部屋に行き着いた。


 ただ、この部屋は今までと違って物が無い。

 ガランとだだっ広い、空の棚とボロいクローゼットがいくつかあるだけの空間だ。


「……隊長、空き部屋ですかね?」

「ここで戦えって事かな?」


 お誂え向きの場所ではある。

 毒薬ももう無い。

 覚悟を決めて振り向けば、咄嗟に閉じたドアをぶち破って、夢魔が部屋へと入り込んで来た。


 ザワザワと壁を埋めるように生い茂り広がる緑の草。

 夢魔の本体は、まるでウツボかヘビのようにズルリと長く、そして廊下をちょうど埋める程に太い縄状になっている巨大な白詰草の束。



 夢魔・白夢草 Lv158



 とはいえ、このレベル差で出来る事はそう多くない。

 こいつに見つかってから、インベントリは使用不可になり、召喚も呼び出せなくなったりと、次々に出来る事が封じられた。

 手元にある炎系の魔道具をひとつぶちかますのが精々かな……と、それを握りしめた所で。


 突如、ボロいクローゼットから巨大なトカゲが1匹飛びかかった。



※獣人の種類が抜けていたので追記

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― 新着の感想 ―
プライベートをちゃんと優先して満喫する作者好き
ペタちゃーん!! あ、動画もう撮れないんだっけ?あらー残念ねー
この二人のおかげで森夫婦は安全だったのか…! 夢を維持してる夢魔の妨害がないのが不思議だと思ってたんですよ…いい仕事するなぁ、みんな。
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